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線の記憶②

 その本の1ページ目にはこう書かれている。


 第1の厄災 時の竜

 第2の厄災 魔王

 第3の厄災 破滅の勇者

 第4の厄災 虐殺の魔女

 第5の厄災 空間の女神

 第6の厄災 均衡の番人

 第7の厄災 冥界の科学者


 2030年10月26日0時00分、日本の富士山より異常な磁場発生を主要国の軍が検知。


 衛生画像から体長300m程の生物を捕捉。


 それを最後に各国の通信は沈黙した。




「ちなみにこの時友理さんは何をしていたんですか?」

「第1以外の厄災たちと別空間に居たわ」

「えっ、厄災の皆さんは基本的に仲が悪いのではないでしたか?」

「そうね、一部を除いては相当仲が悪いわね……。せっかくだから、チョケ本ちゃんにだけ本当の事を見せるわね」

 友理はそう言うと、ローブの内ポケットから小さな杖を取り出した。

「もし気分が悪くなったらそう念じてね。今から私の追体験をしてもらうから」

「そんな事ができるんですか!? さすが友理さんです! それも私にだけ見せていただけるなんて、とっても嬉しいです! いつでも大丈夫なので、よろしくお願いします!」


「メモリーアウト」


 その瞬間チョケ本の意識は飛んだ。気がついて最初に認識したのは己を押し潰さんとする膨大な魔力だった。

 チョケ本の毛は瞬時に逆立ち、恐怖で足が震え立っていられず、尻餅をついてしまった。

「友理さん助けて……」

 そう念じると再度チョケ本の意識は飛んだ。気がつくと友理の膝の上で介抱されていた。

「気がついたのね! ごめん、本当にごめんなさい。まさかこんな事になるなんて……。怖かったよね……、私の考えが足りなかったばかりに、本当にごめんなさい」

 取り乱しながら友理はチョケ本に全力で謝罪をしたのだった。

「謝らないでください! 私が望んでお願いしたことなので! ちなみに私の魔力不足が原因でこうなってしまったんでしょうか……?」

「いいえ、違うの。本来『メモリーアウト』という魔法は精神干渉系統中級で、私とチョケ本ちゃんの間だけで発動するからこんな事起きるはずがなかったの……。ただ、第6の厄災の完全天秤(パーフェクトスケール)が強制干渉してきたの」

「それって第6の厄災さんの持つ封印指定武具? の名前ですよね?」

「そう、私たち厄災にはそれぞれ封印指定武具が一つずつ与えられていて、完全天秤(パーフェクトスケール)は第6のものね」

「ということは、今第6の厄災さんが近くに来ていて、私たちを攻撃してきたってことですか!?」

 チョケ本は友理の膝から飛び起き、食い気味で質問をした。

「いいえ、第6の場合は概念干渉系統魔法の使い手で、完全天秤(パーフェクトスケール)は常時発動型。第6が存在する限り使用者の意思とは関係無しに効果を発動し続ける。それゆえに概念干渉系統魔法において最上位の地位を誇り、魔法名が封印指定武具そのものとして付けられているわ」


 友理はチョケ本が元気になったことで平静を取り戻し、家の外へ向かった。

「チョケ本ちゃん、少し危ないから離れていて」

 家からある程度の距離を置いたところで歩みを止めた。その途端、周囲の魔力が禍々しく揺らぎ始め、友理の右手には大きな杖が握られていた。

「半分八つ当たり、もう半分は憂さ晴らし」

 周囲の魔力が杖の上部にあるエメラルド色のオーブへ急速に収束していた。


「あかん、手加減する気なさそうやな。永遠の杖(エターナルケイン)……、久々に見たわ」

「あっ、チョケ田! どこに行ってたのよ!」

「まぁまぁ、これから滅多に見られない第4の厄災こと時翠 友理の本気が見れるんだから、細かいことは気にしないのぉ」

「うん……」

「なんや、テンション低いやない?」

「それはそうだよ!」

「私はこのモードの友理さん好きやけどな?」

「私だって……。全然嫌いとかじゃなくて、全然好きなんだから!」

「まぁ、無理すんなって」

「チョケ田うるさい!!」


 周りの雲が渦を撒き始め、雷鳴が轟いていた。チョケ田たちは家の中に避難していた。

「最後に永遠の杖(エターナルケイン)を使ってる友理さんっていつだったか覚えてる……? ……、ねぇ、チョケ田聞いてる?」

 チョケ田はチョケ本を凝視しながら頷いた。

「ねぇ!」

 再度チョケ田はチョケ本を凝視しながら頷いた。

「……、うるさいって言ってごめんなさい……」

「よろしい! 素直なのは実に素晴らしいことだよぉ〜 チョケ本ちゃ〜ん」


 渦を巻いていた雲の真ん中から光が差し込み始めた。その光は友理をまるっと呑み込み、さながら光の柱が天を貫いた状態となった。

「第2の厄災の四天王と戦った時以来じゃないか? あの時は確かチョケ本ちゃんが誘拐されて、友理さんがブチギレてたなぁ。 てか、なんであの時誘拐されたん?」

「うるさい! それは言いたくない!」

「ふぅ〜ん、魔導書の無料配布会への招待状なんていう、普通に考えたらあり得ないものに目が眩んだ一匹のペンギンが、そのまま誘拐されたなんて話、あるわけないよねぇ〜」

「うるさい!!」


 光の柱を下るように稲妻が無数に走り始めた。稲妻が杖のオーブに触れた瞬間、周囲の光全てがオーブに収束し、暗闇が広がった。

「光雷混合系統最上位魔法 消滅の雷光(エレクトロリシスレイ)!!」

 

 友理が放った雷光は一直線に天を穿ち、放射状に延々と広がった。雷光が消えた空からは火の粉が無数に降り注いだ。


 その後チョケ本による観測魔法結果にはこう記されていた。効果範囲は直径およそ1200km、降り注いだ火の粉はモンスター約1万体が分解される際に発生した燃え残りと断定。また、火の粉の中にまとまって青く燃える箇所が1箇所存在。断定は難しいが、魔力同士の強い衝突によるものであり、消滅の雷光(エレクトロリシスレイ)完全天秤(パーフェクトスケール)の衝突であると考えられる。


 友理曰く、第6は悪いやつではなくむしろ本当はいいやつとのこと。封印指定武具を開放して魔法を行使したことに関してはこう語った。

「もちろんチョケ本ちゃんを傷つけた第6に一発かましてやろうと思ったの! でもそれ以上に、第6の封印指定武具にこちらから干渉する形になってしまったから、均衡を保つために私も永遠の杖(エターナルケイン)を使うしかなかったの……。まぁでも、本当は第6に向けて適当な中級魔法当てるだけでよかったのだけどね」





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