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進展

 彼は少し歩いたことで冷静になり、起きてからの出来事を整理していた。

「一番古い記憶は本当に見ていたのかわからない曖昧な夢のようなもの。本当に古いかも定かではない。一瞬今意識を飛ばした時に見ていただけかもしれないし」

「今の気温は36℃ですよ!」

 後ろから少女が元気よく答えた。

「なぜわかる?」

「カンタンですよ! まず地面に寝転んでみてください!」

「君は地表温度から気温算出できるような天才さん? と思って従えばいいのか?」

「別に私そんな難しいこと言ってないじゃないですか…… 本当に簡単なので、騙されたと思ってやってみてください! あっ、仰向けで目を瞑って少し待ってみてくださいね!」

 少し経つと閉じた瞼で感じていたはずの日光は無くなった。その直後、硬い何かがおでこに当たるのを感じた。


「いつもこの手に引っかかりますよね。実はわざとだったりするんですか? 本当はもっとお話ししてたいですけど、そうも言ってられませんので……」

 その囁き声は耳ではなく、彼の心に直接伝わった。

「何を言って……」

 言い切る前に彼の意識は飛んでしまっていた。



「変われ、瓦解虚曲(がかいきょきょく)

 少女が冷たい声色で言い放った途端、今までいた世界は闇に覆われた。正確には太陽が一瞬で消え、その刹那、目の前の山が二人の足元に移動し球体を形成したのである。


 辺りが明るくなり、少女の右手には1本の竹刀が握られていた。明るくなったとほぼ同時に、周囲の気温が一気に下がるのを少女は感じた。

「私寒いの嫌いなんですけどね。それもせっかく36℃の熱々展開の余韻に浸りたいところだったのに、なんてことしてくれるんですか!」

 その言葉でマイナス20℃まで下がっていた気温を、36℃ではなく元々の気温である24℃程度までは戻せそうな温度感で言い放った。


 少女は言い放った後、左前方へ吸い込まれるように姿勢が傾き、地面スレスレの所で踏み込んだ。地面に踏み込んだ後は残っていないのに、少女は尋常ではないスピードで左前方を滑空していた。

 500m程滑空した先で急ブレーキをかけた。

「200mぐらい右に隠れてますねぇ」

 獲物を捕捉し、得意げな声色で言い放つと、鞘はないが居合の構えを始めた。

「今回こそ覚醒してくださいよぉ…… もう100体もAランクモンスター討伐してるんですからぁ!」

 少女が不満と苛立ちを込めて言い放った刹那、地表に漂っていた冷気が摩擦熱により上下の層へ分断された。その摩擦熱は確実に居合から放たれたものであるが、右手に竹刀はなかった。

「今回もダメでしたか…… 申し訳ないとは思っているんですよ! でも今は、少しでもいい夢を見てくださいね…… 必ずまたすぐに迎えに行きますから!」

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