48.マルオー村で依頼を請ける
ワイルブヒブの焼肉:薄く切ったワイルブヒブに肉に
塩、コショウと麦粉をまぶして
焼き上げたもの Lv2
塩コショウのバランスもよく肉汁あふれるひと品
ゴハンのおかずにぴったり (HP+30 満腹度35%)
ワイルブモーの焼肉:小さな立方体状に切ったワイルブモーの肉に
塩、コショウと麦粉をまぶして
焼き上げたもの Lv2
塩コショウのバランスも絶妙で噛む度に
肉の食感とあふれる肉汁の
ハーモニーがなんともいわれぬひと品
煮込み料理にもよく合う (HP+40 満腹度42%)
ワイルラビットの焼肉:薄く切ったワイルラビットの肉に
塩、コショウとナフナ草と麦粉をまぶして
焼き上げたもの Lv2
ナフナ草で肉の臭みを抑え
塩コショウで味を整えた野趣あふれるひと品
噛み応えのある肉にじんわりと
染みわたる肉汁がいつまでも
咀嚼していたいという行動に駆られる
パンに挟んで食べるのもあり (HP+35
満腹度32%)
相変わらずコメントに困る説明文だ。Lvが低いのはスキルレベルが高くないせいらしいので、特に気にすることは無いみたいだ。
6人(ララ、ウリスケ他4人)がみな旨そうに肉をガツガツ食べてるのを見てればそれも納得なわけだが………。君等あきらかに肉食い過ぎだろうと思わず心の中で突っ込んでしまう。
『『『『ごちそうさまでしたーっ』』』』
同じ顔の4人が手を合わせてこちらへと言ってきた。波打つ長髪の2人はイーさんとウーさんと分かるのだが、あとの2人は誰なんだろう。
僕が不思議そうに首を傾げていると、ララが代わりに聞いてくれる。
『そちらのお2人はどちら様なのです?』
ララにそう問われ初めて気づいたようにこちらを向いて返事をしてくる。
『あ、ゴメンね。あたしがマルオー武器防具店の店主のリャンよ。よかったらお店に来てね。安く………するかもしれないから』
ポニーテールの女性がそう答える。蓮っ葉な姐さん気質って感じだ。顔はウーさんイーさんそっくりだが右目脇にホクロがついてる。最後の方は言い切って欲しかったけど。
『……私は冒険者ギルドでギルド受付をしているスーです。………よかったら依頼を請けて行って貰えるとありがたいです。………ここって誰も請けて行ってくれないんですよね……』
紫色の髪を三つ編みをひとつ編んで左肩から前に垂らした女性は、溜め息を吐きながらそう話してきた。確かに次の街へと一直線に向かうから、ここでクエストを受ける人はいないのかもしれない。でも1人くらい物好きがいても良さそうなのになぁ。
「えーと、皆さん4人姉妹なんですか?」
『ちがうわよぉ。私達5つ子の5人姉妹なのぉ』
ウーさんが代表して僕の質問に答えてくれる。ん?イー、リャン、サン、スー、ウー………。あーなる程、そういう意味か。
P◯エン◯ンにも麻雀ゲームはいろいろある。定番のものからいわゆる脱衣物とか。じーちゃんもご多分に洩れずしっかり所有している。(リアルとかファッションとか学園とか)
僕も姉がこない時を見計らって、あるものは全部やってみた。まぁ、下手の横好きってやつだけどね。
それで中国の数字は覚えたものだ。
「それじゃ、サンさんはどこにいるんですか?」
『!よくあの娘の名前分かったわねぇ?……まぁあの娘は宿屋の主人なんだけどぉ、たぶん引き篭もってるんじゃないかしらぁ』
宿屋の主人が引き篭もっちゃダメなんじゃなかろうか……。ゲームだから問題ないのかな。
『ほら、ここって通り過ぎるだけで泊まったりしないじゃない?ウチもそうだけどさ。だから拗ねちゃって宿屋から出てこなくなっちゃったのよ』
たのよじゃなく、姉妹なんだからもう少し構ってもいいんじゃなかろうか。
『あ!良かったらうちの店に寄ってってよ。安く………するかもしれないからさ』
ポニテのリャンさんがそう言って武器防具屋へと誘ってくる。どんなものがあるか見てみるのもいいだろう。だから最後の方は言い切って欲しいと思う。
そんな訳でリャンさんの後に付いて行こうとすると、イーさんがお肉のお代と言って食器をいくつも僕に渡してくれた。こんなにいらないと思ったがありがたく頂戴しておく。
その後街道を横切って3軒並んでる真ん中の店へと向かっていく。リャンさんが木製のドアを開けるとカランコロンと呼び鈴が鳴り響く。しかし誰も出て来る様子がない。
『あたししか店の人間っていないから誰も出てこないよ』
こっちの様子を見てそんな事を言ってくるリャンさん。あんたはエスパーか。
この人達みんなNPCの筈なんだが妙に人間臭い。確かにマーカーは黄色の筈なのに不思議だ。まぁ、ララやウリスケの例があるから気にならないっちゃ気にならないが、ゲームだとかプログラムだとか差別をつけてる人にとっては鬱陶しいかもしれないな、などと想像してみる。
あ、そういや昨日ログインした時、運営からそんなメッセージが入ってて気がする。メンテナンス時にAI等の強化とか何とか、あれの影響なのかもしれない。うん、たぶんそうだ。そう無理矢理に納得して店内を見回す。
ブロック毎に武器、防具に区分けされた品々が壁際に陳列されている。
武器の棚を見てみると剣や弓、短剣が綺麗に並べられている。下の棚を見てみると斧が1本置かれている。
斧を調べてみると。
鉄の斧+2:【斧】スキルで使える武器 Lv1
攻撃力 18 防御力 12
鉄の斧+1より少しだけ性能の良い武器
木を伐ることも出来る優れもの (耐久値:8 育成値:2)
ふむ、こんな風に見ることが出来るんだ。あれこれ見ていくとなかなか良さげな物が色々ある。
んーと、今の斧と冒険者のふく+1、革のかぶと、革のブーツかな。所持金と相談しながら買う物を決めていく。
リャンさんがいるカウンターに向かって話しかけるとウィンドウが表示される。
『はーい、何か買ってくれるの?』
その言葉が少し切ない。見当を付けたものを次々と選んで決めていく。しめて24000GIN。………頑張って稼がなきゃな。
『毎度ありがとうございます!安く………出来なかったからこれおまけしちゃうね』
と1本のナイフを差し出してくる。
ピロコリン
[冒険者ナイフ を て にいれました]
「あ、ありがとうございます」
『マスター、そのナイフは薬草を採取する時に使うと便利なのです』
ララがそんな事を言ってくる。ほう、そりゃありがたい。さっきまで変なこと言ってすみません。
「ありがとうございます。大事に使いますね」
『うん、また来てねー』
リャンさんの言葉を背に受け店を出ることにする。
「じゃ、プロロアに戻って稼がなきゃな!」
『稼ぐのです!』
『グッグゥ―――ッ!』
ドアを開け店を出ようとするとリャンさんが声を掛けてきた。
『あ、ちょっと待って。もし良かったらこの村で依頼を請けてもらえない?』
リャンさんの突然の言葉に僕達は振り返る。彼女の元に戻って話を聞いて見ることにする。
『あなた達って次の街へ行かずにプロロアへ戻るんだよね?なら戻る前にひとつでいいからさ、依頼を請けて貰いたいんだけど』
「依頼を請けてって何でです?」
確かにプロロアの街に戻って冒険者ギルドでクエストを受けて稼ぐつもりだけど、それがこの村とどう関係があるんだろうか。リャンさんが溜め息を吐きながら椅子に座り話し始める。
『この村ってプロロアと次の街の中継地点ってだけで何の特色も旨味も無いから、冒険者の人達ってただ通り過ぎてくだけなのよ。だからあたしの店とか、イーの店とかはたまに人がやってくるんだけど、スー姉とかウー姉とかサァン姉のとこなんかは全く人が来たためしが無いのよのね。だからサァン姉はいじけて引き篭もるし、ウー姉なんかあなた達が来て泣いてたしね』
泣いてたってそんな様子は見えなかったけどな、ウーさん。今の話を聞く限り姉妹の順序が数のとおりでなく、数の多い順番になるみたいだ。
イー、リャン、サァン、スー、ウーじゃなくて、ウー、スー、サァン、リャン、イーってことか何と紛らわしい。等とどうでもいいことを考えてるとリャンさんがさらに話を進める。
『冒険者ギルドの受付をやってるスー姉も、依頼はあるけど誰も請けてくれる冒険者がいないから自分が受付やってるせいで誰もこないんじゃないかと悩んでるしね』
1人くらい物好きがいてもいいと思うんだけど………。
「本当に1人もいなかったんですか?」
『あたしが知る限りでは1人もいないかなー。確かにここで依頼を請けるより先に進むほうが色んな依頼があることは分かってるから』
まぁ確かに種族クエストとかいろいろあるみたいだもんな。
『でも、あなた、………ヤマトさんはプロロアに戻るっていうから、それならこの村で依頼を請けて貰えないかなって、そうすればスー姉も喜ぶと思うんだけど、どうかな?』
美少女に上目遣いでお願いされては断ることも出来ない。ま、そんなつもりもないけども。
「分かりました。いくつか依頼を請けてみますね」
『ほんと?ありがと、お願いね!』
リャンさんに頼まれて店を出る。ララはにニマニマ意地の悪そうな笑顔も見せて話しかけてくる。
『ふふふ―っマスター、リャンさんにメロメロなのです』
「んー、美人だけど僕の趣味じゃないかなぁ」
この手の話は肯定しながら否定するといいというのが僕の経験則だ。そんな他愛も無い話をしながら隣の店へと向かう。行き先は冒険者ギルドだ。すぐにスィングドアの前に辿り着く。
ドアを押し開けて中に入ると正面に三つ編みのスーさんが受付で座っていて僕たちを見てビクッてなっていた。
『冒険者ギルドへようこしょっ!』
あ、噛んだ。涙目になって口元を押さえている。さっき肉を凄い勢いで食べてたのとは大違いだ。
「ちょっと依頼を見せて貰っていいですか?」
そんなスーさんに断りを入れて依頼が貼ってある掲示板へと向かう。
『ひゃい、どうじょ!』
また噛んだ。そうとう緊張してるみたいだな。冒険者ギルドの中はプロロアの街と作りは似たようなものだけど、あちらと比べてかなり狭い。10畳程の室内に受付脇の壁に掲示板として依頼書がいくつも張られている。
そちらに向かい依頼書を見てみることにする。
「えーとワイルブモー5匹討伐にワイルブヒブ10匹。これなら何とか出来そうかな」
壁一面に貼ってある依頼書はギルドランクDからFのものでプロロアに比べれば、やはり数はそれほど多くも無い。
とりあえず討伐系のクエストを2つほど選ぶ。
『マスター、これも面白そうなのです』
ララが指差しているものを見てみると、確かに僕的に面白そうではある。
「えーと、麦の刈り入れと、その間に出てくるモンスターの討伐か」
『刈り取った麦の半分が報酬になるのです。麦粉欲しいのです』
ララが依頼書を確認しながら僕ににそう言ってくる。へぇー現物支給かそれじゃこれも請けて見るとするか。
僕が依頼書を取ろうとすると、スーさんがやって来て新たな依頼書を貼り付けてこちらをじーっとみてくる。そして受付へと戻っていった。何だ?
『完全にマスターヘ向けた依頼なのです』
ララの言葉に僕も依頼書も見てみる。
「えーなになに、料理作製の依頼。ワイルブモーの肉(脂身つき)のステーキ5人前の作製をお願いします。報酬は1人前500GINと」
屋台の料理と比べても高めの値段だ。スーさんがカウンターから覗き込むようにこちらをそわそわと見ている。
仕方が無い。これも請けておくか。全部で3つ(ワイルブモーと麦刈りと料理)の依頼書を取って受付へと向かう。
「これお願いします」
スーさんに依頼書を差し出すと、嬉しそうな泣きそうな顔をして受付をしてくれる。
『あっありがとうごっひゃいます!』
また噛んだ。
(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます




