49.マルオー村で狩りをする
とりあえず依頼の詳しい内容と情報を聞いてみることにする。
「ワイルブモーは村のどの辺りにいるんですか?あと麦の刈り入れは適当にやっちゃ拙いですよね。やり方があったら教えて貰えると助かるんですけど」
料理のことはそもそもワイルブモーの肉がないので(全部食われた)、どうしようもないのでここでは一旦保留にしておく。
『あ、?え?は、えっと、えっとですね、そ、あれ?どれ?』
僕の立て続けての質問にテンパったように何かを探すようにあちこちを見回し焦り出すスーさん。そういや初めての受付だったっけか。………ちょっと悪い事したかな。
「あー、えっとスーさん、ちょっと落ち着いて、深呼吸してはい、スーゥ、ハ――――ァ、ス―――ゥ、ハァ――――あ」
『はっはい!。ス――――ゥ、ハ――――ァ、ス――――ゥ、ハァア―――――ッ』
僕の言葉にララとウリスケもスーハー深呼吸をし出す。君等はせんでいいから。
彼女が落ち着いてきたのを見て、僕はいきなり話し出したことを謝る。
「スーさん、ごめんね。いきなり色んな事聞いたりして、初めての受付だったって忘れててさ」
『いっ、いえこちらこそ混乱しちゃってすみません………』
僕の謝罪にペコペコと頭を下げまくるスーさん。誰も来ないんじゃ慣れようもないか。そんなことを思いながらもさっきの話の続きをする。
「それじゃまず、ワイルブモーの討伐なんだけど、村のどの辺りにいるか教えて貰えますか?料理を作る分も考えると多めに狩りたいので」
『あっ、はい。少々お待ちください』
スーさんはそう言ってカウンターの脇にある棚から資料を探し始める。
『これなのです。スーさん』
資料をなかなか見つけられずにいるのを見かねてララが助け舟を出す。
『ありがとうございます。ララ様』
『ララなのです。ララって呼んでなのです』
『は、はいっ。らら…さん』
あれ?名前言っただろうか。もしくはウーさん辺りに聞いたのか。それでも様呼びってなんかおかしくないだろうか。うーん、後で聞いてみるかな。
『えっと、ワイルブモーは西の方の街道沿いと北の方の麦畑を越えた草原地帯に出現します』
資料をパラパラとめくりスーさんがそう教えてくれる。下手に西へ戻るよりかは北の方で狩ったほうがいいかな。
「ララ、北の方で狩ったほうがいいと思うんだけど、どうかな?」
『ララもその方がいいと思うのです』
んじゃこっちは北の方で討伐するとして、次は麦の刈り入れか。
「で、麦の刈り入れってどんな事をするんですか?」
次の質問に彼女は笑顔を見せて自信満々に答えてくれる。
『はい。こちらは朝になってから村の人が指示してくれるので、その人に従って貰えれば結構です』
へぇ~時間限定のクエストなんてのもあるんだ。まぁ今日はバイトも無いし夜までやっても構わないかな。
『あと刈り入れが始まると、刈った麦を狙ってモンスターが飛んでくるんでそれを倒して欲しいのです』
また厄介なモンスターがいたもんだな。モンスターの詳細を聞いて記憶に留めつつ、最後の依頼について聞いてみる。
「ワイルブモーのステーキを作って欲しいって依頼は、どこで作ればいいの?」
『はいっ!食材が集まった時でいいので宿屋で作って欲しいのです!!あと厚さはこれぐらいで、それで脂身がいっぱい付いてるお肉があればお願いしますっ!!!』
何やらスイッチが入ったかのように、顔を上気させこちらに迫る勢いで矢継ぎ早に説明を始めるスーさん。
「わ、わかりました。料理を作る時にまた説明して下さい」
『わかりましたっっ!!』
ビシッと敬礼をするスーさん、興味があるものに関しては性格が変わるみたいだ。はーっ。
カウンターにある受注板に手を乗せて3つの依頼の受付を完了して冒険者ギルドを出る。さて、まずはワイルブモーの討伐から始めよう。
『マスター、こっちなのです』
ララのナビで冒険者ギルド、武器防具屋、宿屋を過ぎてその先にある脇道を北へ向かって歩き始める。
平屋建ての家々を通り過ぎ進んでいくと、木の柵に囲われた村境の先に麦畑が向こうまで広がっているのが見える。木の柵を過ぎ、さらに麦畑を貫くように道が続いている。
村から離れると再び灰闇の世界が戻ってくる。
灯り玉を使って周囲を照らすと麦が光を反射してキラキラ輝く。
「きれいだなぁ」
『キラキラなのです』
『グゥーッ』
3人でとてとてと歩き進むと麦畑を抜けて草原へと辿り着く。
さて、まずは北に行ってみるとするかな。ここら辺のマップを埋めて行きながら進むとしよう。索敵スキルを使うが反応はない。
「ララ、まっすぐ北へ向かうから反応があったら教えてね」
『了解なのですマスター』
さらに草原を北へと進む。やっぱり夜はモンスターも寝てるんだろうか、と思ってたらララが声を上げて注意を促してくる。
『マスター。東からモンスター2体がやって来るのです』
こっちのマップにも反応が出て来た。まっすぐこっちに向かってくる。
メニューを開きスキルから【付与】を選び攻撃力付与と防御力付与を実行。そしてモンスターを待ち構える。
やって来たのはワイルブモーではなく別のモンスターだ。
『ステップべメェーなのです。“睡眠”を使ってくるので気を付けてなのです』
牛程の大きさの羊のモンスターだ。眼を碧色に光らせ薄紫色の毛皮を纏ってこちらへやって来る。
『べメェ――――ッ!』『べべメェ――――ッ』
5mくらい手前で立ち止まると、2体は鳴き声を上げる。
僕は右へダッシュ、ララは左ヘ飛んで鳴き声から逃れようと回避する。
『グッゥウ〜〜ン』
ウリスケは回避できずに攻撃を受けてパタリと倒れてしまう。
「ウリスケ!?」
ウリスケの頭上には状態異常を表わす『ZZZ……』のアイコンが現れる。
「ララ、正面にいると“睡眠”を受けるから回り込みながら戦うよ」
どうやら鳴き声で状態異常を与えて来るモンスターらしいと理解したので、側面からの攻撃をララに指示する。
『了解なのですマスター』
ステップべメェーをロックオンして右ダッシュで正面に向かないように回り込みながら縦斬りボタンを押してアーツ“クロスラッシュ”選んで溜め終わるのを待つ。星ひとつ。
距離をとりながら正面を回避する僕に焦れたステップベメェーが飛び込んできたところ、星ふたつ!“クロスラッシュ”を放つ。
『ベヒメェッ!』
縦斬り横斬りを繰り返し十字の衝撃波がステップベメェーへ狙い違わず命中し、声を上げ吹き飛ぶ倒れる。
ダメージは1割も満たない。攻撃と言うよりは回避技っぽい。距離が開いたので魔法を選び詠唱を始める。
『アクアバレット!』
『ベベェッ!』
ララが魔法を放ってもう1体を攻撃している。
眠ってるウリスケを攻撃させない為にもこちらに注意を向ける必要がある。詠唱が終わり魔法を放つ。
『“ストンバレット”』
『ベグァッ!』
立ち上がりかけのステップベメェーの身体に石弾が当たり再び倒れ込む。
そこに近づきジャンプして縦斬りを食らわせる。クリティカルの文字が現れる。
回り込みで後方へ移動して縦斬り横斬りを繰り返す。
『ベヒメェーッッ』
ステップベメェーが声を上げ光の粒子となって消えていく。よし、1体倒した。あと1体だ。
マップを確認して、赤丸があるその方向に画面を向けて見つけてもう1体をロックオンをする。
ララがステップベメェーの周囲を飛び回りながら魔法で翻弄している。
『ベメェー、ベベメェェ―――ッ!!』
そこへ横から赤の光線が流れるように尾を引きながら、ステップベメェーへと衝突する。
『ベベメェ――ッ!!』
『グゥウゥッ―――ッ!』
睡眠の状態異常から目覚めたウリスケの怒りの一撃が、ステップベメェーを襲いこれを撃破する。悲しげな声を上げながら光の粒子となってステップベメェーが消えていった。
「ウリスケ、大丈夫?」
『グッグゥゥ』
何か悔しそうに右前足でゲシゲシ地面を蹴ってる。
「そんな事もあるよ。次から気をつければいいさ」
ウリスケを慰める様に声を掛けると、ウリスケもこちらを見て分かったという様に声を上げる。
『グッ!』
『頑張るのです』
そうお互い声を掛け合い、さらに北へと進む。その間にワイルブモーが1体出ただけでなかなか現れずに北の境まで辿り着く。
『ここがこのエリアの端っこなのです』
「ここから先は行けないの?」
『そうなのです。森の中に入ろうとしてもすぐ出てくるのです』
目の前には鬱蒼とし繁った森が画面の端から端まで広がっている。
「んじゃ、西に向かってからまた南へ戻ろうか」
『はいなのです』
『グッグッゥ!』
2人に確認して西へと歩き始める。しばらくするとワイルブモーが2体、次にステップベメェーが3体と立て続けに現れて何とかこれを倒していった。
ウリスケもさっきの失態を挽回するように、すすんで前に出て攻撃をしている。
特にステップベメェーには思うところがある様で結構力がこもっている感じがする。(いや、恨みか)
南に戻りつつ、西と東を行ったり来たりしながら時折り現れるモンスターを倒していく。
村の境まで戻ってきた頃には、何とかワイルブモーを目標数と料理用の肉を手に入れることが出来た。
おかげでレベルが19になり、【斧】と【土魔法】のレベルがひとつ、【付与】のレベルが2つ上がっていいレベリングになった。
「じゃ、一旦冒険者ギルドに戻ろうか」
『はいなのです』
『グッ!』
村の中を家々を通り抜けて冒険者ギルドへと向かう。
もうすぐリアルの時間は午後5時になろうとしている。姉が帰ってくる気がするので、晩ゴハンを作る用意をした方がいいかもしれない。
まずは精算してからだな。冒険者ギルドの中に入ると店内で掃除をしているスーさんがいた。
『あ、いらっしゃいませ。冒険者ギルドへようこそ!』
笑顔で僕達にそう言うと、感慨深げに目を閉じ何かを噛み締めるようにしている。
「?」
『マスター、今のをきっと言ってみたかったのだと思うのです』
「ああ、なーる程。誰も来なかったんじゃしょーが無いか」
『なのです』
受付に戻ったスーさんの前に行き、討伐の精算をお願いする。
「依頼のひとつの精算をお願いします」
『はい、討伐証明部位の提出をお願いします』
そう言うとまたじ~んとした様子を見せ目を閉じ感動している。
メニューを開き討伐証明部位(ワイルブモーの角)をカウンターに5つ出すと、スーさんがそれを確認して処理を終わらせる。
『はい、こちらが報酬とギルドポイントになります。ありがとうございました!!』
そしてまたじ~んと目を閉じ感動している。
すると、どこからかファンファーレのような派手な音楽が周りに響き渡る。
ジャジャジャジャ―――――ンジャジャジャジャ―――――ンジャンジャジャジャ――――ン!!
[当冒険者ギルドの1stクエストのクリアおめでとうございます]
[クリアボーナス ギルドポイント 500pt を て にいれました]
[ギルドランク D と なりました]
というウィンドウが現れてメッセージが表示される。
『あっ、ヤマトさんのギルドランクが上がったみたいです。おめでとうございます!』
表示されたウィンドウを見て嬉しそうに笑顔を見せ、また目を閉じじ~んと感動している。
どうやら初めてのお使いならぬ、初めてのギルドのクエスト達成のイベントがあったみたいだ。
普通この手のイベントって最初の方で起こっていいはずだと思うんだけど、誰かがもっと早くクエストを請けてくれれば良かったのにと思わずにはおれない。
少しだけ悲しくなってくる。
すると今度はチャイムが鳴り響き、女性の声でアナウンスが入ってきた。
《プレイヤーの皆様へお知らせいたします。ただいま、開放中の村、街での冒険者ギルドの最初のクエストが全てクリアされました。それを記念して近日中にグランドクエストが行われます。詳細は次回の運営インフォーメーションをお待ちください》
《繰り返しお知らせいたします――――――――》
繰り返し同じ言葉がギルド内に放送される。いったい何がどうしたのやら、さっぱり分からない。
『あのー、どうかしましたか?突然何も言わなくなったみたいですけど………』
スーさんが不思議そうにこちらを見ている。 ん?スーさんには今の放送は聞こえなかったのだろうか。プレイヤーのみへの連絡って事なのか?
それにグランドクエストって何だろう?んー、ララに聞いてみれば分かるかな。
(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます




