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44.とるにたらなくもいつもの日常 (午後の部)

Pt&ブクマありがとうございます (T△T)ゞ

 

 

 キッチンは3つのブロックで出来ており流し台と調理台とIHコンロ台となっている。その下にそれぞれ収納箱が設置してある。

 さて、何があるのか調べるためにシンク下の収納箱を開けてを見てみる。調理道具がいろいろ入っている。フライパン、雪平鍋、パエリア鍋、中華鍋………って何の為にこんなにあるんだか。他の収納箱には食器と調味料がいろいろ入っていた。

 

 とりあえず、必要と思われるものを取り出し調理台に置き、冷蔵庫に向かい中身を調べる。AI搭載の冷蔵庫なのでドアについてるパネルでメニューを開くとと何が入ってるかすぐに調べられるのだ。

 えっと豚バラ500gに長ネギ3本と卵10個とあとは………。


「先生、ゴハンが無いんですけど。これじゃチャーハン作れませんよ」

「っ!」


 フドウ先生は目を見開き、“しまった!忘れてたっっ!”という顔をしてから目を逸らす。器用なことだ。

 はぁー、ゴハンて購買に売ってるんだろうか。あるいは外に買い出しに行った方が良いかもしれない。などと思案していると女子学生の1人がはいっと手を上げてきた。


「あの、あたしが食材外で買ってきますっ」


 僕が先生の方を見ると、先生が安堵したように女子学生にお金を渡して食材を買ってくるように頼む。


「タダミ、悪いが頼む。これでな、あと領収書もお願い」

「はいっ、分かりましたっ。……あの先輩、何を買ってくればいいですか?」


 僕は端末を取り出して、ゼミの専用SNSにアクセスして共用掲示板に必要な食材を書き込んでいく。


「ゼミの掲示板に書き込んでるから、向こう行ったら確認して貰える?スレ名【肉チャーハン】で」

「了解しましたっ。では、行ってきますっ!」


 しゅびっと敬礼してドダダと足音を鳴らして作業室を出て行った。とりあえず出来るとこから作っていくことにする。

 チャック付きビニール袋に豚バラ、醤油、コショウ、砂糖を入れ適当に揉み込んでから冷蔵庫にしまう。それからボウルを取り出し玉子を10個取り出して、次々割り入れてかき混ぜていく。

 集まっていた学生達も再び作業に戻っていった。僕の周囲には誰もいなくなっている。……手伝ってくれてもいいと思うのだが。


 次に長ネギを取り出し、適当な長さに切って白髪ネギを作る要領で2、3回縦にすいていきそれから5mm程の幅に切っていく。これもラップに包んで冷蔵庫へ。

 とりあえず今出来る事はこんなとこかな。も一度シンク下の収納箱を見てみると、食器類が紙皿とか紙コップとかそんな類いのものばかりだ。あ、大皿がある。あと普通の皿も何枚か。

 それらを取り出し洗いながら、先生の分は普通の皿で、学生の分は大皿に載せてシェアして貰うことにしよう。


 10分程でバタンとドアを開けてタダミさんが帰ってきた。エコバッグにはほかほかゴハンと頼んだものが入っている。それらを出していると、中に頼んで無いカップラーメンが3つ入っていた。僕が旨い認定した豚骨ラーメンだ。

 タダミさんは慌ててそれらを取り出して手元にしまう。


「あの、これは個人で買ったものなのでっ、エヘッ」


 自分のお金で買ったのなら僕が何か言うこともない。


「じゃ悪いけど、そこにあるテーブルと椅子をを組み立てて綺麗にしてから皿を並べて貰えるかな」

「はいっ!了解ですっ!」


 何気に語尾が強い返事をしてしゅばっと敬礼して、片隅に置いてあるテーブルを組み立て始める。と言っても足を開いてロックするだけなんだけどね。

 まずは、ざる付ボウルにほかほかご飯を全部入れコップ1杯の水を入れてかき混ぜほぐし、次にサラダ油を回し入れかき混ぜてしばらくおいて置く。そしてベーコンを細かく切って、紙コップにトロミ用に水溶き片栗粉を作る。


 中華鍋をコンロに置いて、少し多めに油を入れて火を点ける。冷蔵庫から豚バラ肉を取り出し、中華鍋に入れる。豚バラ肉を並べるように箸で揃えながら動かさずに揚げ焼きにしていく。

 ジワーチリリと音がしてきたら、にんにくと生姜のチューブからデロリンと3cm程鍋へと投入する。少し火力を上げて箸でかき回し表面がカリカリになるまで炒めていく。火を止めそれをいったん紙皿に取り分けておく。


 次に火を止めたまま冷蔵庫から卵液の入ったボウルを出して鍋へと流し込んでいく。ジュッワーと卵液が音を立てて泡立っていく。しばらく待ってから火を点けて卵をかき混ぜる。卵が固まる前にゴハンと長ネギ、ベーコンを投入し、弱火のままシャモジでかき混ぜていく。シャモジがあって良かった。箸でやるのはけっこー面倒いのだ。シャモジ最強!


 ゴハンと卵を均等になるように絡めながら塩とコショウをパラリ、醤油をタラリンと回し入れ更にかき混ぜ炒めていく。

 うちのフライパンなら宙に振ってゴハンを踊らせたりするのだけど、この量でこの大きさの鍋はさすがに出来ないのでちゃっちゃとシャモジでかき混ぜるだけだ。これでチャーハンが出来上がりだ。

 茶碗に多めにチャーハンをよそって皿に盛って、他を大皿へとまるごと移す。そこへ紅しょうがを散らして次にとりかかる。


 中華鍋に水を入れ沸騰させてから弱火にしてラーメンスープを……っていろいろ買ってきてるなー。醤油にミソに豚骨醤油ねぇー。ま、先生に聞いてみるか。


「先生、あんかけどれがいいですか?」


 僕の声にやって来た先生は、出来上がり前のチャーハンを見て食べたそうな顔をするが、こちらを見て視線を左右に泳がせてからひとつを指さす。


「これ、これがいい」

「分かりました。あと少し待ってて下さい」

「分かった。待ってよう」


 そう言って先生はテーブルにいそいそと座って待っている。

 さっそく先生の選んだスープをお湯の中へと注いでいくとお湯が白茶色に染まっていく。

 スープをかき混ぜながら水溶き片栗粉を少しづつ回し入れていく。量が量なのでさじ加減が分からないがヤマ勘で量を決める。

 

 かき回しながらトロリとして来たら火を止め、バラ肉を大皿と皿に適当にのっけて、出来上がったあんをそこへトロリーと流しかけていく。少しあんが余ったが個人でてきとーに好みで掛けて貰ってもいいだろう。あんかけ肉チャーハンの完成だ。


「はいどうぞ、先生」


 あんかけが豚バラ肉に絡み、ゴハンにも染みていく。醤油の香りが食欲を促していく。


「いただきますっ」


 先生の声に気付いた学生達が慌ててやって来て大皿からめいめい肉とチャーハンを分け始める。ケンカしないでね。


「んふ―――――っ!」


 先生が姉みたいな声を上げる。あぐあぐ咀嚼しながら顔を綻ばせる。様子を見てみても味に問題は無いようだ。良かった。


「「「「「うまっっっ!!」」」」」


 声を揃えて唸る5人。掻きこむようにチャーハンを頬張っている。ある意味料理を作る人間とってはさいこーのご褒美だな。ちょっと大げさな気はするけど。

 その様子を尻目に僕はキッチンに戻り道具類を洗い始める。


「この豚骨ショーユのあんかけがカリカリ肉とパラパラチャーハンをしっとり包んで得も言えぬ味わいに………」

「ホンゴウ!何タレ勝手にかけてんだよ。俺にもよこせって!」

「早い物勝ちですよ。サカエ先輩。いたっ!タダミちゃんホッペつねらないでっ」

「先生だけ量多くないっスか。ズルくないっスか?それ!」

「んぐんぐ。私が金出してんだ文句あるのか?タカダ」

「………無いっス」


 和気あいあいと言った風な食事風景をを背に聞きながら、洗えるだけのものを洗い終えてゼミ室へと戻ることにする。


「後片付けは頼んでいい?」

「「「「「了解ですっっっ!!」」」」」


 何気に仲いいな君等。


「先輩はお昼どうするんですか?」


 この手の作業はものが大きくなると共同で行う事が多くなるので、ギスギスした環境よりは精神的にもよっぽどいい。

 そんな事を考えてると買い出しに行ってくれたタダミさんが聞いてきた。


「ああ、学食で適当に食べようと思ってるよ」

「あー、す………」

「気にしないでよ。先生のついでだからさ」


 ゼミ室へのドアを開けて入ってくと後ろから声が聞こえてきた。


「ササザキ先輩、女子力高い」

「男前でも服は残念」

「お前等も見習えよ」

「「それは無理っ!!」」



 学食でコーヒーとベーグルサンドを食べて、作業に戻るためゼミ室に向かう。

 普通にパンとかはオーブントースターで僕も作るのだがベーグルはけっこー手間がかかるので作る気にはなれない。けどあのモチモチ感は堪らないなぁ〜、厚切りハムとクリームチーズ、葉野菜の食感はなかなかの物だ。

 ゼミ室に戻ると先生が僕の席でデジペンを持って何やらやっていた。


「これ、例の論文のヤツだろ?」


 僕に気づいた先生が聞いてくる。


「そうですけど、何か問題あります?」

「このままのフレームだと歪みが起きると思うんだがいいのか?こうした方がバランスモジュールの設置負担が減ると思うぞ」


 モニターにデジペンでフレームをどんどん変えていく。

 先生の作り替えていくものを眺めて納得する。……はぁ―なるほど。感覚で作るだけじゃやっぱダメだなぁ〜。僕自身は思考錯誤も楽しいんでいいんだけど、なおしてくれるのならありがたく修正して貰うことにする。


「ありがとうございます。これでもう1度やってみます」

「おーう。頑張れよぉ〜」


 先生が作業室に向かうのを見てから席に座って作業を始める。うん、やる気が出て来た。

 あらかた設計が一段落したので作業をやめると、3時を過ぎていた。ほんとに時間が過ぎるのが今日は速い。

 夕方からアルバイトのシフトが入っているので今日はこれで帰ることにする。作業室に行って先生に帰る旨を伝える。


「先生、今日は帰ります」

「おー、プロモムービーも作っておけよ」

「……はい、失礼します」


 どうやら搭乗型の人型ロボットみたいだ。全高5m程だろうか。何の為に作るのかは分からんが何かスゴそうだ。


「「「「「ロボは漢(女)のロマンですっっ!!」」」」」


 僕の視線に気づいた5人が声を揃えて語り出す。エスパーか君等は………。手をヒラヒラさせて作業室を後にする。



 大学を出て電車を乗り継いでバイト先へ顔を出すと、2人の黒服に腕をガッチリ掴まれ確保される。な、何?どうしたっ!?


「サッちゃん!ちょうど良かったぁ。これから入ってくれるぅ?」


 黒服に連れて行かれた先には、オーナーであり店長のアガガワさんがいて拝むように手を合わせて言ってきた。シフトの時間にはなっていないけど、僕自身は一向に構わないのだがどうしたんだろう?

 僕の疑問が顔に出てたのかアガガワさんが簡単に説明してくれる。


「今日シフトに入る予定だったヴァイエスくんが急に来れなくなった見たいなの………3股がバレて彼女に階段から突き飛ばされて足を折っちゃった見たいでねぇ〜。何も原作とおんなじ事しなくてもいいのにねぇ〜」


 ヴァイエス………って、ああカワトウくんか。確かに良くお客さんをナンパしてたよな。原作といえば『紅蓮=ウィザード』に出て来る軟派な魔法使いの中佐だったよね。


「はぁー分かりました。着替えてすぐに入ります」

「お願いねぇ〜」


 黒服に開放されて更衣室に向かい、制服に着替え仮面とウィッグを着けて小さな鏡を見て暗示をかける。

 僕はウルフレンド大佐だーウルフレンド大佐だーウルフレンド大佐だー………。


「わたしはウルフレンド大佐だ。皆の心にハーレスの光を!!」


 僕がやっているバイトは、都市の繁華街にある喫茶店のウェイター兼調理補助だ。いわゆるコスプレ喫茶と言えばいいのか、ウェイターは必ずキャラクターの扮装と仮面とウィッグを着けて、しかもキャラクターになりきって接客するのだ。


 店の名前は《喫茶 仮面大佐》。その手のいわゆるオタクと呼ばれる特に女子に人気があるらしく、けっこー繁盛しているらしい。

 僕は街でアガガワさんにいきなりスカウトされて流されるままバイトをしている。ま、顔バレしないので僕としてはいいちゃいいのだけども。

 

 僕が担当しているウルフレンド大佐とは、アニメ《天空騎士 エリーンヴァイガー》に出て来る主人公のライバルキャラで、オオカミの仮面をつけた青い銀髪のキノコヘアーの神官軍人という人物だ。上司に恵まれず様々な危機に対面しては主人公達と対峙している神を崇え仲間を救う不幸体質な人だ。


 この為にアニメ1期2期26話を見せられセリフを暗記させられたのは記憶に新しい。バイトをやり始めて4ヶ月、週2日位しかやってないからなー。

 更衣室を出て事務室に入り、タイムカードをガチャンと差し込み店内に向かう。いま時タイムカードなんて変なとこだけ古臭い。

 店内に入るとまずは挨拶をする。


「諸君!待たせたな!!」


 左の手の指を人差し指と中指を揃えて立て前髪をクルンと巻いてビシッと掲げる。

 ふああぁと店内が嬉声に包まれる。いつもながら少し恥ずかしい。次々と注文を希望する声がテーブルのあちこちからし始める。


 普通の店だとホロウィンドウを出して飲み物や料理を注文するのだが、ここは接客と会話がメインなのでこういうシステムのだ。


「よく来てくれたな君達。さて、なにを頼んでくれるのかな?」


 キザにしかし下品にならない様にテーブルに手をつきながら3人の女の人がいるテーブルでメニューを渡しPOSを手に注文を受ける。客は部下という設定らしい。

 注文を受けると頼まれたものを置いて名セリフを口に接客する。これを3人位の仮面コスの店員が回して行くのである。


「何笑ってんだよっ!お前等っっ!」


 しばらくの間接客をしていると、男性客が声を荒げて怒鳴っている。1人で来ている彼を見て、隣りのテーブルの女性客が笑ったかなんかしたみたいだ。店員同士で目配せして僕が行く事になる。やれやれ。僕は立ち上がって女性客を睨んでいる彼へと場を収めるため歩み寄る。


「落ちつきたまえ伍長。君らしくないぞ」


 この店は演じる事が店のマナーなのだ。客も店員も。僕の声に慌てて敬礼をする男性客、というか少年だな。ここでアニメのセリフをひとつ。


「みな進む道をそれぞれ持っている。だが我々が同じ道を支えながら進むこともある。そうだろう伍長(笑われたのは不快と思うけど店内ではお静かに)」

「は!すみませんでした大佐!!」


 再びビシッと敬礼をする少年を座らせて、隣りの女性客に向けて笑顔で話す。


「いけないな君達。せっかく来てくれたのだから、私達だけを見てくれなくてはね(ニコリ)」


 僕の言葉に起立した女性客3人が顔を赤らめながら敬礼をして謝罪する。


「失礼しました。伍長すみませんでした!」

「こちらこそ声を荒らげて申し訳ありません」


 謝罪してきた女性客達に、声をかけられた男性客もその声に謝罪してくる。よかったよかった。僕はウルフレンド大佐の決めゼリフをビシッと披露する。


「皆の心にハーレスの光を」

「「「「ィエス!マイマインド ハーレスレイ!!」」」」


 前髪くるりビシッと敬礼をして手を掲げる。つられて4人も合いの手を入れる。アニメ見てるんだね。互いにくすりと笑い合う。

 そんな風にバイトをこなして10時過ぎにタイムカードをガチャリとして帰ることにする。


「今日はありがとねぇ〜サッちゃん」


 拝むように手を合わせて言ってくるアガガワさんに気にしないように言葉を返し店を出る。


「いえいえ、気にしないで下さい。それじゃ失礼します」

「おやすみぃ〜」


 店で賄いで晩ゴハンはいただいたのでアパートへと真っ直ぐ帰る。

 部屋着に着替えてお風呂に入り軽くゲームをやって寝ようとした時、ガモウさんの件を思い出して姉にメールを入れておく。大丈夫だと思うけど、と思ったらすぐにメールが返って来た。

 ガモウさんの件はOKで、明日の午後からゲームをやってねと書いてある。何かあったかなと思いながら布団へと潜り込む。

 おやすみなさい。ぐー。




(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

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