45.完成! ラビタンズハウス
『ふふふふふ〜ん。マスターと冒険、久しぶりなのです!』
ララがヤマトの周りを飛び回りながら鼻歌交じりで嬉しそうに話して掛けてくる。1日しか経ってないけどね。
『グッグッグ―――ッ!』
ウリスケも同意するかのように声を上げる。ってか何で2本足で走ってるんだ?お前は。しかも僕達と同じ速さで歩ってるとか、ステテテテと何気にコミカルな動きだ。
僕達は西門から出て灰闇の中を灯り玉を灯して、南へと歩を進めている。
その目的地はラビンタンズネストだ。
僕が午前中にガッコーでいろいろ作業をしてから、昼過ぎに姉宅へ来てゲームをログインするとララが待ち構えたように僕に向かって言ってきた。
『マスター!ラビタンズネストへ行くのですっ!!』
何かあったかなと思えばそれだった。あれからゲーム内ではそれなりの日数が過ぎていたので、ラビタンズが建ててくれるという家が出来てるかもしれないということで向かっているのだ。
前迄は午後の時間帯はというとゲームの中では昼間帯だったのに今回は夜間帯である。何故かなと思っていると、ララが空を見て不思議そうな顔をしてる僕を見て答えてくれた。
『マスター、このゲームは週1回に火曜日の0時か6時の間、メンテナンスタイムになるのです。なのでゲーム内で半日分ずれるので今の時間は夜なのです』
なる程、これで昼と夜が偏らずにプレイできるわけだ。
マップを見ながら進んでいるんだが、モンスターがけっこーやって来るので骨が折れる。
目的が戦闘であればそっちに腰を据えて戦えるのだけど、目的地に向かうことになると途端に煩わしくなってくる。
しかも以前に戦った時よりも手強くなっているのだ。
前はララの土魔法で転ばせて袋叩きだったのが、今は転ばせて一撃すると転がるように後ろに下がり突進してくる。
歯ごたえがあってある意味楽しめるのだが、こういう時は少しばかりイラッとしてくる。
それを堪えながらワイルドラビットを何とか倒す。
ピロコリン
[Lv16 に なりました]
ピロコリン
[【斧】 が Lv11 に なりました]
[イミットアーツ“スクリッシュ” を おぼえました]
ピロコリン
[【土魔法】 が Lv5 に なりました]
ピロコリン
[【風魔法】 が Lv4 に なりました]
[呪文“インディウィンド” を おぼえました]
手強くなった分、実入りも多くなったみたいだ。全然使わない呪文が増えていく。次からは試しに使ってみても良いかもしれない。
メニューを開いて呪文関係を見てみる。うーんと今覚えてるのはビット系、バレット系、ウォール系、インディ系とヒールとかディグとかになる。
どうも僕は魔法とかは偏った使い方をしがちなので気を付けなきゃいけない。と言っても序盤なのでそれ程悩む必要もないんだけどね。
メニューを閉じて、マップを確認しながらラビタンズネストへ進んでいく。
『マスター、もうすぐなのです』
「はぁーやっとかー」
そのエリアに入ると周囲が靄に包まれ景色が変わっていく。
すると目の前には木の柵と木で出来た門が現れる。
安堵で身体の力がはぁーと抜ける。けっこー緊張していたみたいだ。
中に入っていくと、ちびラビタンズ達が声を上げてヤマトに集って来た。
『もにゅもににゅ!』『もにゅにゅう』『もにゅにゅっ!』
足や腕、頭に抱きついてくる。なんか懐かれてる?ウリスケも違うラビタンズの1人?とハイタッチしてる。「イェーイ」って声が聞こえてきそうだ。
『マスター、長老さんが来たのです』
ララが指差して長老さんがやってくるのを知らせてくれる。
『今晩はなのです。サギューさん』
「こんばんは」
『グッグッ!』
長老さんが挨拶をすると、なにやらもにゅもにゅ言ってぺこりと一礼してくる。
『もにゅーもにゅ、もにゅもぎゅ』
ララがその言葉を訳してくれる。
『“よく来た。家が出来てるので確認してほしい”なのです』
ほぁー、やっぱ出来てたんだ。どんな家が出来たのか楽しみだ。
長老さんの後について行くと、奥の空き地に以前はなかった家が建っていた。
「ほぉぉっ!」
『はわわっ、すごいです』
『グッウウ―――――――ッ!』
そこには三角屋根の大きなログハウスが建っていた。全てが木で組み立てられているようで、なかなかに趣があっていい感じだ。昔見たアニメのアルプスのお爺の家みたいだ。
何となく家の周りを歩いて回ってみる。10m×5mで高さは4mといったところか。小さなラビタンズにとっては大変な作業だったんじゃないだろうか。ありがたいことだ。
玄関前に戻ると長老が手を差し出してくる。なんか持ってる?木の鍵みたいだ。
『もにゅうもににゅー』
『“この家の鍵だ。受け取ってくれ”なのです』
僕はシーンアクトを使って鍵を受け取る。
ピロコリン
[拠点 “ラビタンズハウス” を てにいれました]
[HP MP かいふく と この拠点での ログイン が かのう に なりました]
おお、拠点を手に入れた。プロロアの街だけでなくここからでもログイン出来るみたいだ。やったね。
『やったのです!マスター』
『グッッ!』
さっそく鍵を使って家の中へと入ってみる。鍵穴に鍵を差し込み回すと、カチャリと音がして錠が開く。ほんと凝ってるなぁ。
扉を開けて中に入ると、広々とした空間にかまど兼暖炉と中央に足の低いテーブルと丸太の椅子が4脚。暖炉の脇には薪と調理をする為の調理台と水が入った大きな樽が置いてある。
玄関側の左側には梯子が立てられていて上へと上がれるようだ。
まさしくOnGの家だ。
『凄いのですマスター。2階にもテーブルとベッドがあるのです』
飛んでいって2階を確認してきたララが興奮して話してくる。
『グッグッグーッ!』
ウリスケは丸太の椅子に座ってじたばたしているが、低いテーブルだがそれでも高くて姿が見えてない。
『マスター、さっそく登録なのです』
「うん、ってどうやればいいの?」
『メニューを開いてログアウトを選ぶのです』
ララに言われたとおりにメニューを開きログアウトを選択。すると別のウィンドウが現れて[この場所を登録しますか?]と表示されたので[Yes]を選ぶとピロコリンとSEが鳴り[登録が完了しました]と出て来る。
[ログアウトしますか?]と出て来たのでこれには[No]を選んでメニューを閉じる。
『これでログインする時、ここか時計台広場を選べるのです』
「ララ達も一緒にログイン出来るの?」
『はいなのです。ララ達はマスターと一緒なのです』
その言葉に安心して、テーブルに座ってひと息つくことにする。長老さんが帰ろうとしたので、呼び止めてお礼とこの家の事について話しておく。
「とてもステキな家をありがとうございます。皆さんにもぜひお礼を言ってもらえますか。あと僕達がいない時は鍵を開けておきますので自由に使ってくださいと皆さんに言って下さい」
ララに通訳して貰うと長老さんは驚きながらも嬉しそうに答えてくれる。
『も〜にゅぅ、にゅにゅもにゅう〜っ』
『“皆に伝えよう。それとありがたく使わせてもらうよ”なのです』
僕達だけで使うのはあまりにもったいないし、家は住んだり使われてこそ生きるというものだ。(ゲームの中だけど)
ここに来る前に屋台で買っておいた串焼肉やモツ煮込みをメニューを開きアイテム欄から次々と出していく。
ララとウリスケが我先へと獲物へ向かっていく。
椅子に座っていたウリスケもテーブルによじ登り串焼肉をガフガフ喰ってる。ララはモツ煮込みの前に陣取り、いつの間にか出した小さなフォークを手にはむはむ煮込みを頬張ってる。
あとは果汁水を出してシーンアクトを使ってコップに3つ注ぎオートアクションプレイを起動させると、ヤマトがコップを手にコクリと飲む。ある意味慣れたものだ。
食事を終えて、満腹度を上げたのでオートアクションプレイを解除してこれからのことを2人に話す。
『え?次の街へ向かわないのです?マスター』
『グゥ?』
「うん、何てゆーか中途半端な感じがするんで、もうちょっとここら辺りをうろついてみよ―かなって思うんだ」
そう、プロロアの森では散々な目にあったし、マップの踏破率も40%を少し上まってる程度なのだ。森の中を普通に戦えるぐらいにレベル上げ、出来れば踏破率も100%を目指してみたいのだ。
僕の言葉にララは反対はしないがひとつの提案をしてきた。
『マスター、でしたらマルオー村までは行ってなのです』
マルオー村とは、東街道の先にある円門と呼ばれる大きな門の先にある村だそうだ。そこから、それぞれの種族の街へと分かれていくらしい。
「ふーん。その村に何かあるのか?ララ」
『それは行ってからのお楽しみなのです』
ララがニコリとこちらを見て笑う。何かサプライズでもあるんだろうか。
ま、ララの言う通りにそのマルオー村に行ってみることにしよう。そんな風に方針を決めた僕達だった。
*
「これで3人めゲットだな。ひひひ」
出会い系SNSで小学生と思しき女子とやりとりして誘い出すことに成功する。
数日前まである女のことを調べさせられて、それに掛かりきりで昨日やっと伝え終えたのでこうやって趣味に費やすことが出来るのだ。
「しっかしこいつも災難だよな、アイツに睨まれるなんてよ」
3面あるモニターの左側に映っている女に少しだけ同情する。
どこぞのソーシャルカメラの映像を見ながら独りごちる。20代半ばの藍色のスーツ姿の女だ。まあ俺の趣味じゃない、胸がありすぎるし、しかも育ちすぎて食指が動かない。コイツもアイツに色々言葉では表せないことをされちまうんだろうが、オレの知ったことではない。
俺も脅されている人間なのだ。悪く思うなよ。
「何てな、ひひひ」
そんな思ってもいない事を考えながら、結構大変だった事を思い返す。
本人―――名前しか分からなかったが―――を調べても痕跡がなかなか見つからなかったのだ。
あちこちをサーチしまくり、やっと弟のほうから手がかりを掴んだわけだ。と言ってもそいつの友達のミトスから辿って行って大学のサーバーを漁った結果だが。
何とか住所とそいつの名前をメールで伝えてオレの御役目は放免と相成った訳だ。
さて、次の獲物を物色しようとSNS巡りをしようとした時、突然画面が全部ブラックアウトし、あっ、えっ?何だ?一体どうした?マシンは動いているはずなのにキーボードを操作しても反応が何もない。
まさかハックされたのか?いや、あり得ない。ファイヤウォールも+バッチスも、セキュリティーは万全の状態で組んでる。
あいつらに脅されるハメになった画像はたまたま端末に入っていたのを見られてしまったせいだ。なのにこんな状態になるはずがないのに、オレは焦りながら何とかしようと端末を出してアクセスを試みようとした時、チャイムがピンポーンと鳴り響く。
何だよっ!こんな時にっ!!オレは怒鳴りたい気持ちを抑え玄関ドアのドアスコープから向こう側を覗く。
そこにはヨレヨレのベージュのコートを着た中年男が立っていた。仕方なくドアを少し開ける。
「恐れいります。わたくし○×△警察署のオウギと言います。……実は署の方に情報提供がありまして、あなたが法律に違反する画像を持っているという話なんで、少しお話をお聞かせ願えればと思いまして………。いや、形式的なものなのでよろしいでしょうか?」
いきなりDKがやって来やがった!誰だ!タレこみやがったのはっっ!!まさかアイツ等に渡したネタでこっちに類が及んだってことだろうか。
それは後で連絡してみれば(嫌だけど)判るだろう。今はこいつ等をどうやり過ごすかだ。考えろ。PCはフリーズしてるからいくら奴等でも調べようがないだろうし、バックアップはコロニーに2重に保管してるから黙って分からない振りをしてればいいだろう。
「はい、散らかってますけど中へどうぞ」
DK連中を通すと中年男が感心したようにPCを見て声を上げる。
「いやぁ、なかなか大した設備ですな。失礼ですがお仕事は何を?」
アフィであんたに言えない画像を売って生活してるとは言えず。適当にお茶を濁す。
「在宅でSEをやってます。あとはバイトで色々と………」
「ほぉ、そうですか……」
そう言いながらキーボードを何気なくいじる。
フリーズしているPCは何の反応もしない――――はずだったのに、いきなり動き出し3つのモニターに今出てはいけない画像が次々と表示されていった。5重に施されたプロテクトは意味をなさず、全て晒されていく。
中年男がその画像を確認しながらオレを睨むようにひと言。
「あんた変態ですな。………さて、署で色々聞かにゃならん事があるようですので、ご同行願いましょう」
オレは顔を青褪めさせ身体中を冷や汗に包まれながら、指錠をかけられ警察署へ向かうための警察車両に乗せられる。
何でこんな事になった―――――
PCモニターの中で羊角と蝙蝠羽を持つメイド服の小さな少女がクスクスと笑みを浮かべ溶けるように消えて行った。
(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます
よいお年を




