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32.北西エリアをうろついてみる

ど〇ベーカップも袋も好きです

ブクマありがとうございます

 

 

 変な奴らの為に時間を喰ってしまった。しかもど◯べーも容器が少しへこむ始末。3つあるから問題ないけどね。姉のマンションに戻り、キッチンにエコバッグを置いてリビングに向かう。

 テレビ画面を見ると、おなじみの時計台広場のベンチで座っている“ヤマト”の姿があった。


「ごめん。ちょっと時間喰っちゃった。大丈夫だった?ララ」

『はい!大丈夫なのです』

『グッグ――――ッ』

「おう、ウリスケもごくろうさん」

『グッ』


 ヘッドセットを持って話しかけるとララの明るい声とウリスケの元気な声が返ってくる。どうやら癖なのかウリスケが右前足を上げてシュタッとする。(あいさつ?)


「それじゃ、ログアウトするな」


 コントローラーを手に取りログアウト作業をしようとするとララがそれを止めてくる。


『マスター、今度は北西エリアの方で試してみたいのです』

「危なくないのか?あそこは空飛ぶモンスターなんだろう?」

『行ってみるだけなのです。お願いなのです』


 握り拳を胸元でギュウとしてるのを見ると断れなくなってしまう。はぁーと溜め息を吐き、ララのお願いを聞く事にする。


「わかった。すぐ戻ると思うけど危なくなったら逃げるんだよ」

『はいなのですマスター』


 シュタッと敬礼するララ。流行ってんのかなそれ。

 時計を見るともう昼前だ。あいつ等めほんとに無駄な時間を取らせてくれる。

 おろ?そういえばオートアクションプレイを解除してないのに何でベンチに座ってるんだ……。これも何かあるんだろうな、きっと。変に裏読みしても面倒いことになるだけだし、ここはスルーしておくのが1番問題なさそうだ。ま、カマだけはかけとくか。


「じゃ、このまま(・・・・)でいいんだよね。僕サキちゃんの食事作ってくるね」

『はい、問題ないのです。大丈夫なのです』


 なるほど………って事は“ヤマト”にAIを仕込んでNPCのように動かしてるんだろうか、何の意味があるのかは分からないが、これが僕にテストプレーをさせている理由のひとつなんだろう。

 僕はキッチンに向かい、雪平鍋を出して水を注いでコンロに火をつける。この時ドンブリに水を少し多めに入れて注ぐと分量を間違わずに水が多かったり少なかったりしなくて便利だ。

 

 被害に合わなかったど◯べーと朝に買ってきた生うどんを取り出し、冷蔵庫から生卵を出して準備OK。あ、いや長ネギを取り出してストトと輪切りにしていく。小皿一杯くらいまで切ったら皿にのせて下拵えは完了だ。

 お湯が沸いてきたらカップ容器から乾うどんを鍋に入れ、それと一緒に生うどんも入れる。


「アルデ。タイムカウント5分で。4分経ったら1度教えて」

『かしこまりました』


 アルデをキッチンタイマー代わりにして申し訳ないと思いつつ頼む。ドンブリを取り出しテーブルに置くと、うどんの茹で具合を見ながら箸で解していく。そこに付属の油揚げとカマボコもどきを入れる。後は買ってきたカマボコを薄目に何枚か切る。


『4分経ちました』


 アルデの声の後にスープを入れてかき混ぜて、玉子を割り入れ弱火にしてフタをする。くつくつ音がしてくる。


『タイムカウント5分です』

「ありがと」


 コンロの火を止めて、鍋からドンブリへうどんを移し入れる。埋まっていたお揚げを上に引き上げ、そこへ薄切りカマボコとネギを入れて出来上がり。ど◯ベーきつねうどん+ってとこか。

 お盆に出来上がったうどんと箸、七味、レンゲを載せて姉のいる部屋へと運ぶ。


「サキちゃん、お昼だよ」

「んあ゛〜〜〜」


 茹だったような顔の姉を起こして畳に置いたお盆を姉の腿の上辺りに置き直す。ドンブリが倒れないようにバランスを取りながら、姉が汁の香りをぴすぴす鼻で嗅いでいる。

 そこへ七味を軽くパラリと振り掛ける。


「のひょーっ」


 奇声を上げて、レンゲを持って汁を掬いひと啜り。


「ん〜ろんめーだっ」


 ドンブリを片手で持ち上げズルズルうどんを啜り始める。


「ぬふーっ、ちょ〜ろんめ〜だぉっ」


 口にものを入れながら食べるのはやめて欲しい……。姉のそんな姿を見てから部屋を出てキッチンへ向かう。

 風邪を引いた時は、これに限るというのが我が家の定番だ。

 ミカンの缶詰のプルトップを引いて、パカリと開けてミカンを全部とシロップ少しだけガラスの小鉢へ入れて、リンゴを取り出し1/4カットして、おろし器で摩り下ろしミカンの上へと載せていく。

 ミカンとリンゴ、そしてシロップの香りが僕の鼻腔を甘くくすぐる。

 水の入ったコップとフルーツを持って部屋へと向かう。部屋に入るとドンブリを両手で抱えてゴッゴッて音が聞こえてくる程スープを飲んでいる姉の姿があった。


「ぷっは―――――――っ!旨かった―――――っ!」


 ん?なんか回復してるっぽい?ほっこりしている姉の顔を見ているとどうやら病魔は姉の力に負け抵抗を無くし退散して行ったみたいだ。まぁ、まだ油断は出来ないので今日は寝てて貰った方がいいだろう。

 部屋に入ってきた僕を見て笑顔をニコリと向ける姉。


「ごちそうさまキラくん。おいしかった!」


 空になったドンブリを受け取り、デザートをお盆の上に置く。


「あはっ、すりリンゴミカンだっ!」


 フォークを手にミカンを突き刺し口に入れ咀嚼する。


「ん~、おいひ~~~~」


 頬に手を当て身体をゆらゆら揺らす姉。そんなに喜ぶ程ではないと思うけど、病気になった時は、そういうものかもしれない。

 食べ終えた食器とお盆を受け取り姉に念を押すように言っておく。


「この後、薬飲んだらちゃんと寝ててよねサキちゃん」

「はーい。あ、ちゃんとゲームやってよね」


 ポフンと横になって姉がそう言ってくる。


「うん、大丈夫だよ。今もやってるみたいだし」

「?」


 不思議そうな顔をする姉に、カマかけが外れたかと心の中で呟き肩を竦める。テストプレーヤーが全部を知る必要もないし、僕も知りたいとも思わない。

 では、食器を片付けた後、お腹すいたし僕もお昼にしよう。

 エコバッグからカップ麺をひとつ取り出し包装フィルムをはがしフタを開ける。

 〝ちょっと特盛、いや大盛とんこつラー麺”新製品らしく山積みになっていたので試しに買ってみたのだ。

 

 あの時、無造作に放り投げたのに無傷でよかった。

 中から粉スープとかやくを取り出して、袋を開けてスープとかやくをバサッと投入、お湯を基準値より多目に注いでフタをする。

 割りバシを添えてカップ麺を持ってリビングへ向かう。

 テーブルにカップ麺を置いて画面を見ると〝ヤマト”達がデカイ鳩相手に戦っていた。




   *



 ベンチに座って休んでいると相棒から北西エリアに行きましょうと告げられる。


「ん?オレがやってていいのか?」

「はいなのです。マスターには許可を貰ったのです」

「グッ」

「じゃ、行くとするか」

「はいなのです」


 ベンチから立ち上がり、西門へ向かって歩こうとすると、ウリスケが何やら話があるらしくグーグーッ言い出す。


「ウリスケさんどうしたのですか?」

「グッグ―――――ッ」

「確かになのです。お腹が空いては戦えないのです」


 何やらお腹が空いたので何か食べたいと言ってる様だ。確かに満腹度が減っている。なら、西門に行く前に何か食べたほうがいいのだろう。


「屋台で何か食べてから行くことにしよう」

「グ――――――ッ」

「はいなのです」


 俺の言葉を聞くやいなや、ウリスケがストトトトと目的の屋台まで一直線に向かって行った。


「はやいのです」

「…………………」


 俺と相棒も慌ててウリスケの後を追う。屋台の前でピョンピョン飛び跳ねているウリスケの側まで行くと肉の焼けるジュワーという音と何とも言えない旨そうな匂いが鼻をくすぐる。

 その屋台は程よく焼けている極太の腸詰めと肉厚のバゲットを使ったホットドッグ屋だった。うまそうだ。

 ふくよかな年配の女性が丁寧に腸詰めを焼いている。彼女が店主なのだろうか。


「グッグ―――――ッ」


 ウリスケが催促してくるので、さっそく店主に注文をする。


「おねぇさん。ホットドッグを3つください」


 女性にはある程度の年齢まではこう呼称するのがお約束というのでそうして見る。


「はいよ!ちょっと待っててね」


 おねぇさんは肉厚のバゲットを取り出し、軽く鉄板で焼き始める。程よく焼きあがったバゲットにバター、マスタードを塗り葉野菜を差し込み、そこに腸詰めをさらに挟み込む。最後にマスタードとケチャップを腸詰めの上へチュルルとかけていく。あっという間に3つのホットドッグが出来上がる。


「はいよぉ!お待ちどうっ」


 GINを渡してホットドッグを受け取る。軽く焼けたバゲットの香ばしい匂いと腸詰めのピチピチ焼けた音と焦げた匂いがたまらない。

 ひとつをウリスケの前の地面に置いて俺も食べることにする。相棒はすでに取り掛かっている。オレもさっそく噛り付く。バゲットのカリカリの食感と腸詰めをかじった瞬間の肉汁が葉野菜パリパリとともに口いっぱいに広がる。うんまい。


 オレ自身がAIというプログラムのはずなのに、それぞれのエンジン群によってもたらされるプログラムがプレイヤーと同様に活動や感覚を促す。まるで何者かの仕業のように。

 そんな思考を続けながらもホットドッグをパクパク食べ進めていく。周りを見てみると、屋台のテーブルで相棒は食べ終え、ケフッと息を吐き足を広げ座っている。小さい身体でよく食べる。

 ウリスケは後ろ足で座りながら両前足でホットドッグをつかみグーグー言いながら最後のひと欠片を口に入れていた。

 俺のパラメーターを見てみると、満腹度は8割まで回復している。


「よし、出発するか」

「はいなのです」

「グッググ――――――ッ」


 西門を出て、西街道を道なりに進んでから北へと向かう。昼間帯を迎えるまであと少しといったところだが、ここから灯り玉を使うことにする。灰闇の中で飛行モンスターはこちらの分が悪い。


「ヤマトさま、右斜め前方よりモンスター3体がやってくるのです」


 相棒の言う方向に向いて斧を構えるが、空飛ぶモンスターであるワイルピジョン相手に近接武器と言うのはタイミングが命なので扱いづらい。ならばここはイミットアーツか魔法のどちらかということか。

 

「ワイルピジョン3体があそこから来るのです」


 相棒が指し示す方を見ると斜め上空から赤い目を妖しく光らせた3体の鳥が突っ込んでくる。

 星ひとつ。狙いを先頭1体へスラッシュ。

 しかし、3体のワイルピジョンは方向転換して上昇していく。スラッシュは掠ることもなく消えていく。

 成る程。これは一筋縄では行かないってことか。

 口角が笑みへとつり上がってくる。


「アクアバレット!」


 そこへ相棒が水魔法をワイルピジョンへ浴びせる。2体に命中し、パランスを崩して落下してくる。そこに落下する1体に向かってウリスケが突進して体当たり。吹っ飛ぶワイルピジョン。更に追い詰めるべく突進する。同じ大きさのワイルピジョンに恐れずに体当たり。そして光の粒子となり消えていく。オレも負けてられない。


 斧を手に取り落下地点へ走る走る。バタバタと翼を動かして飛び上がろうとしているワイルピジョンをロックオン、縦斬りを一閃。横斬りを一閃。斬って斬る。

 光の粒子を確認せず次の獲物へ向かおうとすると、相棒とウリスケの攻撃で残りの1体も消えて行った。

 そしてリザルト画面が目の前に現れる。手に入れたアイテムはワイルピジョンの尾羽根とワイルピジョンの肉。全部で7個か。


 灰闇の空がだんだん明るくなってくる。そう長く戦っていた訳ではないと思うが、もうすぐ昼間帯のようだ。

 明るくなって来た周囲を見回してみると、北東エリアと同じかと思っていたが荒野の中にところどころに大きな岩が突き出るように露出している。飛行モンスターから隠れながら戦えるようになってるのかもしれない。

 オレ達は今度は東の方へ向かって岩山を避けながら足を進める。




   *



 ………これ、僕がプレイしなくてもいいんじゃね?



(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

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