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33.ララとウリスケに怒られる!?

主人公グダってますがご容赦を

ブクマありがとうございます



 灰闇の夜が終わり、朝の空色が辺りを染め上げる。そんな空気を画面の向こう側から感じながらゲームを見ている。

 ちょい特盛なだけあって6分と少しばかりと他のカップ麺と比べると長い気もするが仕方がないのだろう。

 ぼへ-と画面を見ていると、でかい鳩―――――ワイルピジョンと色違いのが(ワイルピジョンは灰色でこっちはやや全体が黒くなった感じ)たぶん、これがリパーピジョンなのだろう。

 低空飛行で鋭く光った翼で滑空しながら〝ヤマト”達へ襲い掛かっている。岩山を背に逃げ場を失ったかのような状態を見て危ないと思ったが、ぶつかる直前に左へササッとかわす。かわされたリパーピジョンはそのまま岩山へ衝突してしまい、その衝撃で地面へと落下しバタバタ暴れる。

 その隙を逃さずララが火魔法で、〝ヤマト”がイミットアーツ?の十字の刃を放ってリパーピジョンを攻撃する。そしてウリスケが待ち構えるように前足を突っ張り後ろ足でガリガリ地面を削り力を溜めている。


『ボヴァーッ』


 2人の攻撃が命中するとリパーピジョンは叫び飛び上がる。そこへウリスケが溜めていた勢いのまま体当たりをする。

 ドガンという音とともにリパーピジョンが上へ吹き飛ぶ。着地と同時にウリスケが岩山を蹴ってジャンプして再び落下するリパーピジョンに体当たり。横からのダメージを受けHPが0になってリパーピジョンは光の粒子になって消えていった。

 危なげなく余裕を持って戦ってる感じだ。

 ララの話によると同程度か、少し上位のレベル帯だと思ってたけど大丈夫みたいだな。


 ピンポ-ンピンポーン。端末から6分経った合図のチャイムが鳴る。よしよし、カップ麺が出来上がったみたいなのでフタをパリリと剥がすと、トンコツの独特の香りが湯気とともにフワリ舞い上がってくる。その臭いに食欲が刺激され口脇がキュルッと引き攣って来る。箸を麺へ突っ込んでグルグルとほぐしていき、麺を持ち上げてみると、いわゆる博多ラーメンのような細麺ではなく中太のうえにスープが絡みやすい縮れた種類のモノ。定番のモノとは違う要するに冒険商品みたいな感じがする。


 大手の製品と違い、定番物を作り出す期間と費用の無い中小の企業の製品はその傾向が強い気がする。特に食品はお菓子から始まりカップ麺等は多くの製品が出てくる分、消えていくものも数多ある。

 なるべく息の長い製品を生み出そうとしてる中で、あえてアイデアを前面に出した製品を僕ら新製品愛好家ニューカマーフェイバリアンはこのような製品を冒険商品と呼んでいる。(または無謀商品)


 麺を上げ下げしてスープを絡めてから麺を啜る。そして味を確認するするように目を閉じて咀嚼する。トンコツスープ自体はオーソドックスな感じかな、でもなんか隠し味のせいで好みが分かれていく気がする。僕は好きな方の部類になるかな。うん、旨い。


 ずず―――――。麺とスープの絡み具合も。ずずず――――――。悪くないな。ずっずず――――――。トンコツを炊き上げたような。ずずっ。臭さは特に無く。ずずっちゅる。ミルクのような滑らかな甘さ。ずっずっずっず。すら口の中で広がりを感じる。ぷは――――――――ッ。

 味わいながら食べていたせいか、もう麺も残り少なくなっていた。これは当たりだな、まぁ僕にとってはだけど。

 なくなる前に10コばかりストック買いしておこう。


 ずるずる麺を啜り、申し訳程度に付いてる小振りのチャーシューを口にする。表面のカリリとした肉を噛むとじゅわっと醤油のスゴイ味が口に広がる。そこにスープを飲むと醤油とトンコツスープが素晴らしいハーモニーを奏でる。おおっ、こいつやるなっ!カリカリ食感のジャガイモ?のクルトン等、味と触感を絶妙に楽しませてくれる一品だ。


 最後は姉のようにスープをんぐんぐ飲み干してしまった。ごちっ。

 カップと割り箸をテーブルに置き、満足に息をプハーッと吐く。惜しむらくはゴハンも一緒に食べればよかったといったところか。まぁ、それは次回のお楽しみに取っておこう。

 さすがにちょっと特盛なだけあってけっこー満腹気味なのだが、その味の余韻に浸っていると僕に気付いたララが声を掛けてきた。


『マスターお帰りなさいなのです。マスターは何を食べてたのです?』


 どうやら食べ終えたカップ容器を見て気になったらしい。いつからこんな食いしんぼキャラになったのやら。


「あぁ、これはスープとお湯を入れてしばらく待つと食べれるカップラーメンという食べ物だ。この前食べたラーメンの簡単に作れるヤツかな」


 なるべく分かり易い様に説明したけど………やっぱ分かり難いよな。


『ぐぐぐぐぅぅ……………!』


 ウリスケではなくララの呻き声だ。どうやら自分も食べたいのですとか言おうとしてるんだろう。まぁ言っても無駄だと学習しているみたいだが、それでもってとこか。

〝ヤマト”はモンスターを警戒してか周囲を見回している。ウリスケは何故か前足で地面を懸命に掘っている。おなかすいた?


「…………………」


 そんな中、僕はどうやらさっき迄の戦いを見て僕自身のモチベーションというかやる気がガタ減りしたみたいで、今日はというか、テストプレーは終わりでいいんじゃないかって気になっていた。


『マスター、これからどうするです?街に戻るか、このまま北西エリアを探索するです?』


 ララの問い掛けに僕は口ごもる。んーどうしよっかな。よし。


「サキちゃんには後で聞いてみるけど、もう僕がプレイしなくてもいいかなって思うんだよね」

『えええっ!?』

『グゥッッ!?』


 その言葉に驚きを表すララとウリスケ。いやそんなに驚かなくてもいいと思うけど。


『な、な、な、何でなのです!?マスター!!』


 慌てて僕に聞いてくるララに、思ったことを話すことにする。


「いやね、たぶんサキちゃんが僕がプレイするキャラクターにAIを組み込んだと思うんだ。学習型か何かだと思うんだけれど、僕のプレイデータを蓄積していって自分で動けるようになるか出来るようにね。で、何が原因でこうなったかは分からないけどオートアクションプレイを起動するとNPCの様に動けることが出来るようになったと」


 僕はコップを取り水を少し飲んで舌を湿らせる。


「ララもサキちゃんに協力するようになって、〝ヤマト”の育成を担ってたってとこだと思うけど―――――違うかな?」

『……………違わないけど、違うのです……』


 ララは上目遣いでこっちを見ている。いや、そんな顔をされても困るんだけど………。


「ララはきっとゲームアトラティース・ワンダラーの中で遊びたいと思ってるからログアウトを嫌がってたと思うんだ、だからヤマトがプレイしてればずっとそこにいられるんじゃないかな」


 ログアウトする度に消えていってたから、プレイヤーがいないとこの世界にいられないだろうから、そういう行動に出ているとそう僕は思っている。AIだってそういうものがあるんじゃないかと。


「だから僕がプレイしなくても、プレイヤーキャラとしてのヤマトが行動してくれればララも楽しめると思うんだよね」


 するとララは涙をポロポロ零しながら僕に向かって叫ぶ。


『違うのです!そうじゃないのです!!ララは!ララはっ!!』

『グ――――――――――――――――――――ッ!!!!!』


 ララの叫びを遮るようにウリスケが大きく吠える。


『ウリスケさんっ!?』

『グッグッグッグ!!』

『わかったのです。マスター、ウリスケさんがマスターに言いたいことがあるそうなので通訳するのです』


 ウリスケがララに何やら話し出すとララがウリスケの言葉を通訳すると言い出す。何を言ってくるんだろう。………ゲームのキャラクターがフリーダム過ぎるんだけど………、まぁ聞いてみるとしよう。

 僕に向かってウリスケの言葉をララが訳し始める。


『“ボクはましゅたー達に倒され時、コマンドを受け入れてましゅたーの従魔になったのだ。それまでのボクはただ目の前に出てきたモノを貫き倒せば良かったのだ。でもボクはましゅたーの従魔となり一緒に戦うことになったのだ”』


 ララの訳している言葉に目を思わず丸くする。NPCと同様にレアモンスターにはAIを積んでいるのかもしれない。ってかウリスケがこんな事を考えていることに少し驚く。いつもグーグー言ってるだけだったから何ともはやビックリだ。


『“ましゅたーやララたんとご飯を食べたり、モンスターと戦っているうちに、ボクが冒険を楽しんでることに気がついたのだ。ボク達はもっともっと冒険を楽しみたいのだ。ましゅたーが辞めてヤマトんが動いたとしてもボク等は楽しくないのだ。それにラビタンズのお家のこともあるのだ。今辞めたらダメなのだ。”なのです』


 ララが訳し終えるとウリスケは右前足とタシタシ地面に叩きつけてブフーと鼻息を吐き出す。

 確かに色々とやり残したこともあるし、ラビタンズの事も気になりはするが、ボクにも普段の生活があるし、PCが自由に動くのならボクの存在は特に関係ないと思ったんだけど、2人は違ったんだろうか。

 ん―よく考えて見ると多人数プレイと銘打ったゲームといえばダ◯ジョン◯クスプローラーや桃◯とか◯ブル◯ンジョンなど協力しあるとかそういう類のものは全くやってなかった。


 僕にとってゲームとは気が向かなくなったりやる気が失くなった時なんかは、いったん辞めてしばらくしてからやり始めるものだ。

 たけど、MMOはそういうものとは違うみたいだ。特にRPGになると大人数でのプレイとなり、それはひとつの社会になるんだろう。それぞれの役割ロールで人が関係を紡いでいく。そうやって紡がれたものは、解け難く抜け難い。

 人が人に感情を抱くのは嫌にしろ好にしろ現実リアルも同じになる。ってか人でなくAI何だけど………。


『マスター、ララは………』


 ウリスケに続いてララが何か言おうとした時、横から声を掛けられビックリする。姉?


「そうよ。いま辞められちゃったら困るわ」


 僕が振り向くと姉が「ちょっとまてね」と言ってトイレに入って行く。ん―だいぶ回復して来たみたいだな、よかったと安堵の息を吐く。その間にもララはポロポロ泣いてるし、ウリスケは怒ったように地面をタシタシ叩いてる。なに?このカオス………。

 トイレから出てきた姉が僕の隣に腰を下ろす。僕が寝てなきゃダメだよと言おうとすると姉が僕の方を向いて話しだす。


「まず、キラくんは勘違いしてるよ。ララちゃん達はただゲームの中にいたい訳じゃないってこと理解ってる?」


 え?違うの?ゲームの中のキャラだから、その中で生活してるのが前提だと思ってたけど………ちがうの?


「ララちゃん達は“キラくん”と一緒に冒険したいって言ってるんだよ。“キラくん”とお話したり“キラくん”と一緒に戦ったり、“ヤマト”じゃなくて“キラくん”と」


 と言われてもな―。僕が操作していないものが動いてるのを見てると何となくこれは僕が操作しちゃダメなんじゃなかろうかと思ってしまうのだ。しかも僕が操作するよりもはるかに洗練された姿を見ればなおさらだ。


「でもサキちゃん、ここ数日は時間があったからいいけど、明日からガッコーもあるし、バイトもあるからそう時間も取れないと思うんで、僕がプレイしなくてもいいなら問題ないと思ったんだけどな………」

「ちっちっちっち。キラくん忘れてるよ。あたしはキラくんにテストプレーを頼んだんだから時間が取れる時はやってくれなきゃ困るのよね―」

「…………あー……」


 そうだった。姉に頼まれたからゲームを始めたんだったっけ。決定権は姉にある。僕に拒否権はないんだろうな……たぶん。ここ数日ゲーム内のイベントが色々あったからすっかり勘違いしていた。僕自身少しはハマっていたみたいだ。


「でも、“ヤマト”にAI積んで何かやってたんなら成果はもう出てるんじゃないの?」


 僕の疑問に姉はニヤリと笑って返答する。


「それは別口かな。それにまだ成果って言う程じゃないかもだし」


 え、そうなの?けっこー凄いなぁと思ったんだけど、あれでもまだまだなんだ。はー奥が深いなー。


「まぁーわかったけど、明日からはあんま時間取れないかもだし、それだけは理解してもらえればいいかな」

「だってララちゃん」

『はいなのです。ララにとってもヤマトさまはマスターが他の事をやってる間だけの“代理”さんなのです。ララはマスターと冒険したいのです!』


 僕の明日からの事を話すと、ララは何気にヒドイ事を言って了承してくれる。泣いたカラスが何とやらってくらいにニパーッと笑顔を見せる。


『グッグッ――――!!』


 地面をタシタシ叩いていたウリスケも右前足をシュタっと上げて返事する。


「じゃ、後はよろしくね。おやすみ〜」

「ちゃんと休んでね。仕事はなしだよ」

「はいはい〜〜」


 部屋に戻る姉に今日は休んでおくように釘を刺しておく。治りかけの時が一番気をつけないといけないからだ。手をヒラヒラさせて姉がリビングを出る。後で見に行こう。

 食べ終わったカップ容器を片付けて、改めてテレビ画面に向かう。


「まぁ―変な話しちゃって悪かったけど、これからもよろしくなララ、ウリスケ」

『はいなのです。マスターの時間が取れる間頑張るのです!』

『グッグッグ――――ッ』


 オートアクションプレイを解除して、どうするか考えながら“ヤマト”を動かした時、BGMが切り替わり周りが靄に包まれる。

 この時、エリアマップ踏破率が39%から40%になったことを僕もララも気づいてなかった。


『あわわわわっ!マスター、エ、エリアボスが出てくるのです!!』

『グ―――――――ッ』

「ええっ!?」


 こんな時にエリアボスぅ!?



  

 

(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

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