第五話
「…………さて、話をしよう。あれは今から三十六億…いや、一万h「君はいきなり何を言い出すんだい?」冗談だ。とりあえず、三人にはここ、現代での過ごし方をレクチャーしたいと思う。本当は資料とかも用意したかったが時間がなくt「既に必要な資料は人数分用意してありますので、まずはこれをご覧下さい」お、おう………」
机で両手を組み、その上に鼻をのせるような格好をしながら話を始めた神夜だが、出鼻をナズーリンにくじかれる。
さらに、今から説明しようとしたことが全てまとめられた資料を真理から手渡され、説明の役もとられる。
それから、食堂にしばらくページをめくる音が響いた。
暇なので近くにいつのまにか真理がいれた紅茶があったので、それをすすりながら待つ。
「………ふむ。ある程度は把握させてもらった。どうやら私の仲間はあまり目立つ場所に出さない方が良さそうだ」
「ここでは刀も常備できないのですか……」
「あんまり私には影響はない感じですね」
と、三者三様の返答が来る。
「真理さん真理さん」
「なんでしょうか?」
「いつの間にこんな資料用意したの?」
「メイドの嗜みです」
「ソウデスカ」
と、そんな会話を繰り広げているときにふと時計を見ると、十二時を回り、日付を更新していた。
「ありゃ、もうこんな時間か」
「神夜様、明日、というより本日も学校はありますので、もう就寝なされた方がいいかと」
「いや、でも」
「三人へは私が補足説明などもしておきますので。それに、本日は能力を使われt「真理さん」…………失礼しました。失言でした」
続けて何かを言おうとした真理に神夜は名前を呼ぶことで続きを遮る。
「まあいいよ。じゃあ、お言葉に甘えて、先に寝させてもらうわ」
「はい、おやすなさいませ」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
四人へ挨拶を終えたあと、食堂を出て自室に戻ろうとすると、紫が現れる。
「あら、いまから眠るところかしら?」
「まあな」
「なら、寝る前に一つ教えといてあげるわ」
「教える?何をだ」
神夜の問いに、紫は扇子で口元を隠しながら答える。
「いま知り合いの鬼に頼んで、外に出た妖怪をなるべくこの周辺に『萃めて』もらってるわ。だから、最初の遭遇は意外と早く来るかもね」
「………はぁ、できれば休みの日に来て欲しいぜ」
「妖怪に人の都合を求めるなんてナンセンスよ」
「それもそうか」
「まあ、確実に萃めているわけではないから、遠くにもいたりはするけどね」
そして、一度扇子を閉じたあと、紫はまっすぐ神夜を見つめ、こう言った。
「それと、これは『忠告』であり『警告』よ」
「今度はなんだ?」
「『狐』には、気をつけなさい。絶対に。それじゃあ、おやすみなさい」
そう最後にいうと、紫は背後にスキマを開き、その中にきえていった。
「………狐に気をつけろ?どう言う意味だ……?」
神夜がその言葉の真意を知るのは、まだ先である。