表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第3章:碧色の深層(アルのダイブ)
PR
75/103

第3章・第15話  地下水路侵入

水神殿会議終了後。


王都アクアリオンは、

既に騒然としていた。


施設崩壊。


王都全域へ広がる不安。


そして。


水巫女への疑念。


神殿周辺では、

神官達が慌ただしく動き回っている。


その中。


アル達は、

神殿地下格納庫へ集まっていた。


巨大水路地図。


地下構造図。


複雑に入り組んだ古代水路。


ミレーナが静かに口を開く。


「作戦を確認します」


全員の視線が向く。


「地下水路班と、

地上陽動班に分かれます」


指が地図をなぞる。


「地下班は、

王城地下への侵入と濁流源の調査」


「地上班は、

王城正門側で陽動と戦力分散を担当します」


ギルド長が腕を組む。


「派手に暴れりゃいいんだな」


レイオスが苦笑した。


「やり過ぎるなよ」


ギルド長がニヤリと笑う。


「保証は出来ねぇな」


空気が少しだけ緩む。


だが。


すぐにミレーナが表情を戻した。


「地下水路は迷路構造です」


「古代水路が複数重なっている為、

現在でも全容は把握出来ていません」


老神官が低く続ける。


「加えて」


「濁流反応が確認されています」


「コラプト化個体との接触は、

避けられないでしょう」


アルが静かに拳を握る。


ミレーナがアルを見る。


「アルトゥス様」


「水の印は、

まだ完全には馴染んでいません」


「無理はしないでください」


アルは頷いた。


「分かってます」


だが。


リングへ視線を落とす。


碧紋章。


水の印。


まだ不安定だ。


けれど。


確かにそこにある。


クウが肩の上で跳ねた。


「きゅ!」


ギルド長が笑う。


「頼もしい案内役だな」


クウが胸を張る。


「きゅぅ!」



数十分後。


王都外周地下。


封鎖旧水路入口。


巨大鉄格子の先。


暗い地下水路が広がっていた。


湿った空気。


重い水音。


薄暗い水路の奥から、

不気味な気配が漂ってくる。


地下班。


アル。


ミレーナ。


レイオス。


神殿護衛隊。


そして数名の上級冒険者。


対して。


地上班は、

既に王城方面へ向かっていた。


ギルド長が巨大槍を肩へ担ぐ。


魚族特有の流槍術。


水流のように揺れる構え。


「んじゃ、

こっちは派手に行くぞ」


レイオスが目を細める。


「頼みます」


ギルド長はニヤリと笑った。


「任せとけ」


次の瞬間。


地上班が走り出す。


その気配が遠ざかっていく。


そして。


地下班は、

静かに水路内部へ足を踏み入れた。



地下水路内部。


そこは完全な迷宮だった。


複数に分岐する水路。


入り組んだ通路。


上下層へ続く古代階段。


さらに。


水流そのものが複雑に変化している。


レイオスが舌打ちした。


「……分かりづれぇ」


神殿護衛の一人が地図を見る。


「この辺りの構造、

古すぎて記録と一致しません」


その時だった。


クウが突然震える。


「きゅ……!」


小さな身体が、

右側水路を見る。


『……こっち』


アルが目を見開く。


また聞こえた。


アルは静かに右側を指差す。


「こっちです」


レイオスが眉を寄せる。


「分かるのか?」


アルは少し迷った後、

小さく頷いた。


「……なんとなく」


ミレーナが静かにクウを見る。


「流れを感じ取っているのかもしれません」


地下班は、

クウの導きに従い進み始めた。



同時刻。


王城正門前。


既に戦闘は始まっていた。


「敵襲!!」


王城兵達の怒号。


その中央。


ギルド長が巨大槍を構えた。


碧い水流が槍へ纏わりつく。


「地下組が動くまで、

派手に暴れるぞ!」


冒険者達が一斉に突撃する。


水術。


槍撃。


碧い術式光。


王城前広場が一気に戦場へ変わった。


王城兵達が迎撃へ動く。


だが。


次の瞬間。


ギルド長が一歩踏み込む。


「――魚穿

(シータスペネト)」


碧い残光。


一瞬で間合いが消える。


次の瞬間。


王城兵達の防衛線が、

まとめて吹き飛んだ。


轟音。


水飛沫。


冒険者達が歓声を上げる。


「道開いたぞ!!」


「押し込め!!」


ギルド長が槍を担ぎ直す。


「地下組――」


口元を歪める。


「そっちは任せたぞ」



地下水路。


その奥。


水路奥から、

複数の気配が現れる。


黒く濁った泥水。


そこから這い出る異形。


下級コラプト。


濁泥型。


さらに。


別方向水路から、

歪んだ風を纏う個体も現れる。


腐風型。


数が多い。


神殿護衛達が武器を構える。


「来ます!」


異形達が一斉に襲い掛かった。


アルも剣を抜く。


その瞬間。


碧紋章が淡く輝いた。


水流が反応する。


アルが目を見開く。


(……流れる)


自然と。


周囲の水が剣へ集まっていく。


まだ不安定。


だが。


確かに力が流れていた。


その時。


ミレーナが静かに祈る。


「――アクア・エンチャント」


碧い光が広がる。


優しい水流。


仲間達を包み込むような加護。


アルの身体から、

重さが消えた。


魔力の流れが滑らかになる。


ミレーナが静かに言う。


「流れに逆らわないでください」


「水を制御するのではなく、

水と合わせるんです」


アルが小さく息を呑む。


(合わせる……)


次の瞬間。


濁泥型が飛び掛かった。


アルが踏み込む。


「――竜閃

(ドラゴングリント)!」


高速踏み込み。


一閃。


今度は違った。


剣へ沿うように、

水流が流れる。


碧い斬撃。


濁泥型を真っ二つに切り裂いた。


レイオスが目を見開く。


「……制御した!?」


だが。


次の瞬間。


別方向から腐風型が迫る。


歪んだ風刃。


アルが咄嗟に剣を構える。


その時。


自然とリングが輝いた。


水流が集束する。


アルが反射的に振り抜いた。


「――アクアショット!」


碧い水弾が放たれる。


水刃が腐風型を撃ち抜いた。


アル自身が驚く。


「出た……!?」


レイオスが叫ぶ。


「今考えるな!

次来るぞ!」


さらに。


奥の水路が揺れ始める。


濁った水が、

壁のように盛り上がった。


空気が変わる。


ミレーナの表情が引き締まる。


「中級コラプト……!」


巨大な濁流塊。


地下水路そのものを飲み込みながら、

ゆっくりと現れる。


そして。


その背後。


さらに深部へ続く巨大水門が、

不気味な音を立てていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ