表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第二章:紅色の誓い(アルのトリガー)
59/59

第2章・第19話 炎の終点

フレアは動けない。

呼吸が乱れ、拳に力が入らない。


「……っ」


立とうとして崩れる。

ヴァルディオンの圧が迫り、空間が歪む。逃げ場はない。


「フレア様!」


カイエンが踏み込む。前へ。迷いなく。

片手を前に出す。


「――ウォール」


透明な壁が展開され、圧がぶつかる。空気が軋む。

それでも砕けない。


さらに一歩、踏み込む。


「――シールド」


身体強化。圧を受け止め、地面が砕ける。

それでも止める。


フレアが歯を食いしばる。


「……うるせぇ」


立とうとする。踏ん張る。だが膝が落ちる。


(……立てねぇ……)


視界が歪む。


アルが一歩、前に出る。振り返らない。

それでも、はっきり届く声で言う。


「……まだだ。終わってない」


フレアの視線が揺れる。前に出ている背中。


(……なんで)


歯を食いしばる。


(……あいつ、あんなに前に出てんだよ)


足に力を入れる。——入らない。


その瞬間、横から影が入る。

カイエン。ウォールを維持したまま、さらに一歩前へ。


「……フレア様」


低い声。近い。


「あなたは、前に出る人だ」


一瞬、思考が止まる。


(……は?)


揺れない背中。逃げない。折れない。


「なら――下がる必要はない。俺が、全部止めます」


ドクン、と心臓が跳ねる。

一拍遅れる。


(……なんだ、今の)


視線が逸れる。呼吸が乱れる。

すぐに歯を食いしばり、顔を上げる。


「……分かってんだよ」


拳を握る。炎が灯る。

ゆっくりと、立ち上がる。


足は震えている。それでも前を見る。踏み出す。


「……前に出ろ。止まるな」


拳を打ち合わせ、火花が散る。


「……見とけ」


「炎の力は――」


フレアの周囲で、

紅蓮が膨れ上がる。


「発火」


炎が弾ける。


「爆発」


轟音。


熱風が空気を揺らす。


「そして熱」


空間そのものが歪む。


フレアは笑う。


「炎は、

全部を焼き尽くす力だ」


炎が膨れ上がる。


「――上がれ」


熱が弾ける。炎が一直線にアルへ流れ込む。


「っ……!」


背中を押される。心臓が跳ねる。視界が開ける。


(……見える……!)


(……押し上げられてる……!)


(……一人じゃない)


肩のクウが震える。


「ぷる……っ」


無色が薄れ、紅が生まれる。膨張、ヒビ、そして弾ける。


「ぷしゅ!」


紅のスライムが肩で揺れる。


その瞬間、火が流れ込む。腕を通り、剣へ。


柄が震える。刃に火が灯る。走る。絡む。


ゴウッ!!


炎が爆ぜ、剣が紅を纏う。


「――紅装魔剣イグナ


理解する。


(……これが、今の俺の剣)


踏み込む。


斬る。


歪みを――切り裂く。


「っ……!」


ヴァルディオンが初めて後退する。


炎が歪みを焼く。削る。押し込む。


(……通る!)


連撃。斬る。斬る。斬る。


歪みが削れていく。


ヴァルディオンの表情が変わる。


「……なるほど」


手を上げる。


圧が収束する。


ドンッ!!


「ぐっ……!」


アルの足が止まる。押し返される。


(……止められた!?)


炎と歪みが拮抗する。


進まない。削れない。


空間が軋む。


「……だが」


ヴァルディオンが呟く。


「足りん」


圧がさらに強まる。


押し潰す。


アルの体が沈む。


(……ここで、止まるのか……!)


カイエンが前へ。


「――ウォール」


壁を重ねる。圧を止める。


「今です……!」


フレアが踏み込む。


「――押し返す!」


炎が爆ぜる。


圧を押し戻す。


一瞬、空間が静まる。


アルが息を吸う。


肩のクウが震える。炎が流れ込む。


フレアの熱。クウの炎。


すべてが刃へ集まる。


一点へ。


空気が張り詰める。


「――やれ」


(……ここだ)


「――奥義・紅界ルークス


振り抜く。


爆発。


炎が一直線に解き放たれる。


空間を裂き、歪みを貫く。


ヴァルディオンの身体を貫いた瞬間――歪みが消える。


圧が霧のように消え、空気が軽くなる。


「……そうか」


小さく笑う。


「断たれたか……あの方との、繋がりを」


魔力が止まる。


「……終わり、か」


膝をつく。抵抗しない。



静寂。


アルが近づく。


「……動くな」


カイエンが拘束に入る。


「確保します」


「……逃がすなよ」


「問題ありません」


ヴァルディオンは動かない。


「……もう、届かん」


拘束完了。


「地下牢へ移送します」



戦いは終わった。


アルは剣を下ろす。紅の残光が揺れる。


フレアは視線を逸らす。


「……助かった」


カイエンが答える。


「ご無事で何よりです」


アルは剣を見る。


(……次は)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ