第2章・第11話 残された歪み
施設の地下は静かだった。
炎は落ち着き、崩れた区画も瓦礫に変わっている。だが空気だけが重い。
アルは足を止める。
(……まだ、馴染まない)
フレアが横目で言う。
「引きずってるか」
「……少し」
「無理に消すな」
足音が近づく。
「フレア様!」
カイエンが合流する。
「外周は制御下にあります。ただ——異常が出ています」
「何だ」
「施設構造および被害状況について報告します」
「2階以上の区画、および竜の宿舎は壊滅しています。上層は崩落が進行中です」
フレアが目を細める。
「1階はどうだ」
「中枢区画に損傷が集中しています。導管の一部が破断し、熱の流れが不安定です」
「局所的な爆発、または崩落の可能性があります」
(……危ない)
「通行可能なルートは限定されています。安全経路は確保していますが——長時間の滞在は推奨できません」
フレアが短く言う。
「……敵はそこにはいない、か」
「現時点では確認されていません」
「地下層は影響が限定的です。基盤構造のため、損傷が分散されています」
「……落ちねぇか」
「現時点では」
沈黙。
「人的被害は軽傷が中心です。避難は完了しています」
一拍。
「ただ——ワイバーンの数が合いません」
フレアが目を細める。
「……消えたか」
「フレイムワイバーンが3体、確認できていません」
「その3体で、収容数と一致します」
沈黙。
(……3体)
(逃げたのか)
(……それとも)
(誰かが、動かした?)
フレアが吐く。
「……気に入らねぇな」
「破壊痕にも違和感があります」
「続けろ」
三人は歩き出す。
1階へ繋がる階段へ向かう通路。
床に焼け跡が残っている。
「本来は熱が流れて広がるはずですが——」
フレアが足を止める。
「……一点だな」
「叩きつけた痕だ」
別の区画。壁が裂けている。
「……こっちは内側からか」
「区画ごとに痕跡が一致していません」
「……チグハグだな」
(……同じ場所を探してるみたいだ)
(でも——見えてない)
(だから、壊してる)
フレアが言う。
「目的は何だ」
カイエンが一瞬迷う。
「言え」
「……この地下層は、通常では認識できません」
「巫女の加護がなければ、到達も不可能です」
フレアが頷く。
「つまり——」
一拍。
「1階にいた可能性が高い」
カイエンが続ける。
「地下へ侵入できていない以上、その可能性が妥当です」
(……でも)
(もう、いないかもしれない)
(それでも——)
(確かめるしかない)
「接続は固定されていません」
「条件が揃わなければ開きません」
フレアが吐く。
「……確認する必要があるな」
一歩踏み出す。
「行くぞ」




