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無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第一章:無色の旅立ち(アルのスタート)
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第1章・第11話 積み上げ

森の中。


朝の空気は、少し冷たい。


「……」


アルトゥスは足を止める。


耳を澄ます。


風。


葉の音。


そして――


「……いる」


小さく呟く。


セリーナが横で頷く。


その瞬間。


草が揺れる。


飛び出してきたのは、雷狼ボルト・ウルフ


「――!」


アルトゥスは横へ避ける。


視線を外さない。


「っ!」


距離を取る。


相手を見る。


落ち着いている。


前よりも、確実に。


「……」


呼吸を整える。


動きを追う。


雷狼ボルト・ウルフが踏み込む。


「そこだ」


アルトゥスが先に動く。


振る。


一撃。


当たる。


体勢が崩れる。


そのまま踏み込む。


二撃目。


確実に当てる。


倒れる。


動かない。


「……」


息を吐く。


荒い。


だが、崩れてはいない。


「安定してきましたね」


セリーナが言う。


アルトゥスは苦笑する。


「……少しだけ、です」


だが。


最初とは違う。


確実に、動けている。


クウが、ぴょんと跳ねる。


「……次、行きましょう」


アルトゥスが言う。


セリーナが頷く。


森を進む。


依頼は一つじゃない。


積み上げるために。


「……」


視線が止まる。


前方。


茂みの奥。


「……二体」


気配を読む。


以前より、はっきりと。


次の瞬間。


氷狼フロスト・ウルフが飛び出す。


「――!」


同時。


だが。


今は違う。


一歩引く。


間合いを取る。


「……」


視線を動かす。


一体。


もう一体。


動き。


タイミング。


「来る」


同時に来る。


「――!」


踏み込む。


一体の懐へ。


振る。


当たる。


崩れる。


だが。


「っ!」


もう一体。


横から来る。


受ける。


重い。


体勢が揺れる。


「……!」


離れる。


呼吸を整える。


まだ、余裕はない。


だが。


崩れてもいない。


「……」


氷狼フロスト・ウルフが唸る。


その姿。


「……」


色が、抜けている。


前よりも、はっきりと。


灰色が、薄い。


部分的に、消えているように見える。


「……」


さらに。


輪郭が、揺れる。


「……おかしい」


思わず漏れる。


セリーナが視線を向ける。


「……はい」


短く答える。


否定はしない。


「――!」


来る。


「っ!」


今度は遅れない。


踏み込む。


振る。


一撃。


当たる。


動きが鈍る。


すぐに次。


二撃目。


倒れる。


静かになる。


「……はぁ」


息を吐く。


体が重い。


だが、動ける。


「……変ですね」


アルトゥスが言う。


セリーナは少しだけ間を置く。


「……そうですね」


短く答える。


「数だけではありません」


続ける。


「質も、変わっています」


アルトゥスは頷く。


「強くなってる」


はっきりと言う。


セリーナはわずかに視線を落とす。


「……可能性は高いです」


それ以上は言わない。


だが。


軽くはない。


「……」


アルトゥスは倒れたウルフを見る。


色が、抜けている。


昨日よりも。


確実に。


「……」


言葉にはしない。


だが、残る。


違和感が。


時間が過ぎる。


戦う。


倒す。


繰り返す。


「――!」


振る。


当たる。


倒れる。


「……はぁ……」


息を吐く。


体が重い。


足も、少し鈍い。


「今日はこの辺りで戻りましょう」


セリーナが言う。


アルトゥスは頷く。


「……はい」


森を抜ける。


王都へ戻る。


夕方の光。


少し柔らかい。


ギルドへ入る。


ざわめきが迎える。


「……戻ったぞ」


「今日はどうだ?」


声が飛ぶ。


アルトゥスはカウンターへ向かう。


リーナが顔を上げる。


「おかえりなさい」


証明品を差し出す。


「依頼の完了報告を」


リーナが確認する。


手際よく処理する。


「……問題ありません」


書類をまとめる。


「本日の加算ポイントは、5です」


アルトゥスの視線が動く。


「……合計で」


「12ポイントになります」


短く、はっきりと。


アルトゥスは小さく息を吐く。


「……あと、8ですね」


リーナは頷く。


「はい」


それだけだった。


だが。


距離は、確実に縮まっている。


セリーナが横に立つ。


「順調です」


静かな声。


アルトゥスは苦笑する。


「……そう思うことにします」


カードを握る。


数字が増えている。


それは、確かだ。


だが。


頭に残るのは別のもの。


「……」


色の抜けたウルフ。


揺れる輪郭。


「……」


アルトゥスは視線を落とす。


その横で。


セリーナが、わずかに視線を伏せる。


何かを考えるように。


「……」


だが、何も言わない。


「……行きましょう」


アルトゥスが言う。


セリーナが頷く。


クウが、ぴょんと跳ねる。


ざわめきの中へ戻る。


だが。


確実に。


何かが変わっている。


そして――


それは、止まらない。


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