表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第一章:無色の旅立ち(アルのスタート)
22/75

第1章・第2話 王都への道

道は、続いていた。


村を出てから、しばらく。


振り返れば、もう家は見えない。


「……」


アルトゥスは前を向いたまま歩く。


足取りは止まらない。


だが。


どこか、落ち着かない。


隣には、セリーナ。


少しだけ前を歩いている。


一定の距離。


近すぎず、遠すぎず。


「……」


言葉はない。


だが、気まずさもない。


その静けさの中で。


クウが、ぴょんと跳ねた。


アルトゥスの足元から、少し前へ。


「……元気ですね」


小さく呟く。


セリーナがわずかに振り返る。


「その子は、疲れを感じませんから」


「……そうなんですか」


「ええ」


短い会話。


それだけで終わる。


はずだった。


「……不思議には思いませんか」


セリーナが続ける。


アルトゥスは少しだけ考える。


「……思ってます」


正直に答える。


「普通の生物じゃない、ですよね」


セリーナは頷く。


「ええ」


そして。


少しだけ間を置く。


「無色に関係しています」


アルトゥスの足が、わずかに止まる。


「……やっぱり」


完全には分からない。


だが。


無関係ではないと感じていた。


クウが、ぴょんと跳ねる。


まるで。


その言葉に反応するように。


「ただ」


セリーナは続ける。


「今はまだ、何もできません」


「……何も?」


「ええ」


視線がクウに向く。


「本来の力は、目覚めていません」


アルトゥスはクウを見る。


小さな体。


ただ跳ねているだけ。


「……そう、見えますね」


セリーナは小さく頷く。


「ですが」


声が少しだけ低くなる。


「いずれ、変わります」


それ以上は言わない。


だが。


それで十分だった。


アルトゥスは前を向く。


しばらく歩く。


景色が少しずつ開けていく。


やがて――


遠くに、壁が見えた。


見慣れたはずの景色。


だが。


少しだけ、違って見える。


「……王都ですね」


アルトゥスが静かに呟く。


「ええ」


セリーナが答える。


高い壁。


大きな門。


何度も見てきた場所。


それでも。


今は、ただの“戻る場所”ではない。


アルトゥスは目を細める。


学園に通っていた頃。


あの時は――


守られる側だった。


用意された場所で。


用意されたことをこなすだけ。


「……」


無意識に、腰の剣に触れる。


今は違う。


自分で選び。


自分で進む。


その違いが、はっきりとある。


「……どうかしましたか」


セリーナが問う。


アルトゥスは小さく首を振る。


「いえ」


短い返答。


それで十分だった。


セリーナはそれ以上聞かない。


ただ、続ける。


「王都に入れば」


少しだけ視線を向ける。


「あなたの立場は変わります」


アルトゥスは前を向く。


「……無色だからですか」


「ええ」


はっきりとした肯定。


「本来、無色は限られた存在です」


歩きながら続ける。


「ヒューマニアでは、巫女と王族のみ」


アルトゥスは黙る。


「……じゃあ俺は」


「例外です」


即答だった。


迷いはない。


ただの事実。


「魔法も使えない」


「ええ」


否定しない。


「そのため」


わずかに言葉を選ぶ。


「理解されない可能性があります」


アルトゥスは小さく息を吐く。


「……まあ、そうでしょうね」


驚きはない。


すでに分かっていたことだ。


「ですが」


セリーナは続ける。


「それが全てではありません」


アルトゥスは横を見る。


「……どういう意味ですか」


セリーナは少しだけ間を置く。


「いずれ分かります」


それだけだった。


説明はしない。


だが。


確信がある。


アルトゥスはそれ以上聞かない。


「……分かりました」


それでいい。


今はまだ。


知らなくていい。


クウが、ぴょんと跳ねる。


その先へ。


まるで。


道を示すように。


アルトゥスは前を見る。


王都が近づいている。


見慣れた場所。


だが。


これから踏み入れるのは、別の世界。


「……行きましょう」


小さく呟く。


セリーナは頷く。


「ええ」


短い返答。


だが。


その一言で十分だった。


二人は歩く。


同じ方向へ。


だが。


同じ場所には、もう戻らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ