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臆病な魔法使いは、小学部で目立たず生きたいのに巻き込まれていく ――言えなかった想いが、少しずつ世界を変えていく  作者: 南山


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第58話 色々な正解

ユウト+三人で桑の実取り中の事故に、レオとオリバーのコンビネーションが光った、その夜。

そこで閃いたアイデアは?

今度こそうまくいくのか?


成長途中の四人を、お楽しみください。

――糸口――

四人で初めて桑の実取りをした日。

一番星がキレイだった。

穏やかな風の夜。


魔法の課題をひとまず置いて、遊んだ。

楽しかった余韻もあった。

(でも、課題も考えないと)

そう思いつつ、オリバーは夕食の片付けを手伝っていた。

桑の実を食べて指も口も黒い。


「オリバー、テーブルのものをこっちに持ってきてくれる?」

「はーい。」

黒い指がコップの曲面に触れた。

黒く染まった指先が、コップの縁に触れる。

その丸い輪郭が――ホースの断面に見えた。

細くて、向こうが見える、小さな円。

「通る......?」


「ん?」

何かが閃いた。


何が閃いたんだろう。

引っかかる。

思い出せ。

頭の中で、光るものがあった。


水球に穴があけれたら、どうなるんだろう。

自分で作る水球。

その水球に穴があくようにイメージする。

……そしたらどうなる?

ひょっとしたら、ホースの中に風、ではなくて水球に変化をさせたら?


――水球の実験――

「父さん!試したいんだ。一緒に外に出て!」

「大人の人とじゃないと魔法は使っちゃだめだって。先生が言っていたんだ」

「我が息子ながら真面目だなあ」

呟きつつも父さんは一緒に庭に来てくれた。


オリバーの手には家にあった古いホース。

「水球に穴をあけたいんだ」

ホースの穴を正面から見る。

向こう側が小さく見える。

水球を通してそれを見る。

「針の穴を通すように……。」


水球の表面はわずかに波打っている。

その向こうにホースの穴が見える。

グッと 見つめる。


穴。あけ!


......一瞬、何も起きない。

(ダメか――)


その次の瞬間。

ツーーーーー


細い流れが、ホースの奥へと吸い込まれた。


ポポポタタタタ……。


空気が通り、ついで水がこぼれる音がする。


父さんがびっくりした顔になる。

「......できたのか?やったなあ!おい!オリバー!」

「本当にすごいな。いつの間に、こんなことが出来るようになったんだ」

父さんの声が揺れている。

不意に肩を抱いてくれる。

水球は水が吸い取られてなくなってしまった。

父さんと二人、それを見ていた。


「すごい悩んだんだよ。」

できて良かった。簡単じゃなかった。

急に体から力が抜けた。

今日は疲れた。

眠すぎる。

そういえば山でも魔法が出たんだ……。

「おい。オリバー。大丈夫か?」

父さんの声が遠くなっていった。

星がきれいだった。


――魔法の授業――

「オリバー、どうぞ。」

ノア先生の声。

オリバーは深く息を吐く。

(針の穴を通すように……。)

(焦らなくていい。あの時と同じだ。)


集中する。

ツーーーーポポタタタ……。


「やったなあ!すげえ!」

ガイルが歓声をあげる。

「負けたあー」

悔しがりつつもレオの顔は喜んでいる。

「で、どうやったの?」

レオとガイルが聞いてくる。


「え?えっと……。水球に針の穴を通すって。ね……?」

「ごめん。やっぱ、ナンもわかんねえ。」

ガイルが肩をすぼめる。

「ふんふん。それで?」レオは聞いてくれる。

「そっか。去年もオリバーは"針の穴"って言っていたなあ。風も水もオリバーにとって同じなのかもな」

「そうなのかなあ?」


「フム。同じ感覚なのですか。興味深い。属性確認が楽しみですね」

ノア先生が少し離れたところでつぶやいていた。


――次の魔法の授業――

「今回は合格してやる!」

レオとガイルの気合いは十分だ。


レオの番だ。

レオは 水球をかたつむりの形にした。

割れる!その直前にホースの方向に向けた。

ホースの外側もぬれたが、先端から水が滴り落ちた。

「合格です」

ノア先生がニッコリとする。

「やりい!」

レオがガッツポーズを決める。


ガイルは十個程の水球にした後に、そのひとつをさらに十個にした。

小さな小さな水球を一列に並べてホースの中に進めるとまるでビー玉が吸い込まれるように入っていく。

ホースに入っていくと反対側から水となってタタターーーと流れ落ちた。

そして次のひとつがまた十個の小さな水球となる。

「合格です」

「やったぜ!」

ガイルがジャンプする。

三人集まりハイタッチ。


――桑の実のイメージ――

「頑張れ」

レオが応援する。

ユイトの番だ。

ユイトは緊張しているのか顔が強ばっている。

何度も深呼吸をして、キッとホースを見る。

「大丈夫だ。練習の通りに!」

ガイルも声をかける。

ユイトはホースの斜め上まで水球を移動させる。

そして、水球の下を鳥のクチバシのように少し伸ばした。

よく見るとクチバシというより、棒のようだ。

その棒の上を水滴が、

タタタ

と流れている。

ホースの反対側から 水が流れ出た。

「合格です」

唯人は一瞬きょとんとして、それから顔をほころばせた。


「やったな!」

ガイルが大きい声で叫んだ。

そして、盛大にユイトの肩を叩いた。

ユイトは半分吹っ飛んだ。


(あれは、痛い)

でも、嬉しそうな顔。


「桑の実とかぶどうの房のイメージなんだ。筋の上に玉がついてて流れる感じ」

ユイトらしかった。


――予定を立てる――

それを聞いたレオとガイルが思い出したように言い出した。

「桑の実をもっと取ろう!そんで、売ろう!」

「今年は、肉食おうぜ。串肉!」

「串肉?何それ?美味しいの?」

「なんだよオリバー。知らないの?ウンマイんだぜ」

「課題ができたんだ。少しくらい羽伸ばそうぜ!」


「羽でもう、空飛べそうだよ」

ユイトが幸せそうだ。

「空?飛んだら、枝の上の桑の実がよく取れるぞ」

「ガイルが空飛んだら、重くて落ちるぜ」

「なんだよ。夢くらいみてもいいだろ?」

四人で笑った。

あの課題は、もう怖くなかった。

本当に羽が生えた気分だ。

正解は、一つじゃなかった。

それぞれのやり方で、できた。



ノア先生が他の生徒の課題を見ながらもニッコリとこちらを見ている。

「いい仲間ですね」

「昔を思い出しますな」

後ろに校長先生が立っていた。

校長先生は、遠くの山ではなく、――

子供たちの方を見ていた。

ほんの少しだけ、目を細めて。

「ええ。」

ノア先生の遠くを見る目が一瞬悲しそうになった。



いく羽ものツバメが校庭を泳ぐように飛んでいた。

穏やかな風だった。


四人とも違う方法で合格。

いろんな正解があります。

ノア先生や校長先生にも、少しずつ見えてくるものがありそうです。


今年も桑の実を売りに出かけて、希望の物を買えるのでしょうか?

ひと騒動が起きそうな予感がします。

お楽しみに。

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