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臆病な魔法使いは、小学部で目立たず生きたいのに巻き込まれていく ――言えなかった想いが、少しずつ世界を変えていく  作者: 南山


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第56話 新しい課題

新学期が始まった。

少しだけ、去年とは違う春。


魔法の授業も難しくなり、ひと騒動。


何気ないひと言が、心を揺らす。



成長途中の三人を、お楽しみください。



――新学期――

春の日差しが強くなってきている。

ポカポカといい天気だ。

新学期。

オリバーは新しい教室の窓際に座る。

まだ慣れない窓の外。

いつもと見る角度が少し違う。

空にトンビが飛んでいた。


「おはよ」

レオがいつもと同じ笑顔で隣に座る。

「俺たち三年生だな」

「うん。よろしくね」

「俺もな。」ガイルが前の席に座った。

また、騒がしい一年になる予感がした。



――魔法の授業――


今年度も担任はノア先生だ。

魔法の授業には校長先生もいる。

「去年は難しかったよね。」

「水球を風で移動させたんだ。」

「今年は何をするのかなあ」

と生徒がヒソヒソと話している。


「皆さん。だんだん難しくなる課題に真剣に取り組んで頂いております。今年も頑張っていきましょう。」

「さて、今年は水球をホースの中に通します」

ノア先生がホースを取り出した。

普通に蛇口につけられているような、水色のホースだ。

長さは三十センチ位か。


「どういう意味?」

ざわめきが起きる。

「実際をお見せしましょう」

ノア先生が水球を作る。

いつ見ても惚れ惚れする。

真球だ。

ホースを空中に浮かべる。

水球にホースが接すると、ホースの反対側から水が出てきた。

次第に水球は小さくなり、無くなってしまった。


「今回、ホースを浮かばせることは多分難しいでしょうから……」

地面に膝丈程の土壁を出してくれた。

「この上にホースを載せるとやりやすいでしょう。」

「要は、水球の水をホースで抜く事が課題です。」


生徒たちは、いつもなら出る不満さえも言葉に出来なかった。

呆然としていたからだ。

「……無理だ」

レオが呟いた。


「ああ。これは今日この授業でできなくて良いです。」

「数回後までで。次はまた違う魔法を学びますので。」

これにはすぐに反応が出た。

「えええ~!」

「そんなに早くなの?」




――魔力測定と属性確認――



リリカが挙手をする。

「はい。先生質問です。」

「はい。なんでしょう。」

ノア先生がリリカを見つめる。

「三年生って魔力測定と、属性確認があるって聞いたことがあるんですけど。それはいつやるんですか?」

それを聞いた生徒たちからも小声でささやきあう。

「本当だ。僕も父さんから聞いたよ。」

「私も三年生でって聞いたわ」


ノア先生はニッコリと見回す。

「そうですね。それに関しては学校の事ですので校長先生に伺いましょう。」

ノア先生は校長先生の方を向き、お辞儀をして自身は一歩下がった。

自然と生徒たちの視線は校長先生に集まった。

校長先生は、遠くの山を見ていたが、生徒たちの視線に気が付き、慌てて答えた。

「あ。ああ。魔力測定と属性確認については、お国の魔法省の方が来て、やってくれるんじゃ。専門の器具なども使うからの」

「と。言うことで、三年か四年でやるのじゃが、なんと言っても何月何日とははっきり分からんのじゃ。」


「へええ~」

生徒たちは一様にうなづいた。

「と、言うわけで、今のうちに魔法の時間を多めにして行い、魔力を強めていきたいのです。

魔力は使うことで増えますし、コントロールは集中することでついて行きますからね。」


みんなの目がやる気になったのがわかった。

「うおおおお~!俺、やってやる!」

ガイルが叫ぶ。

「俺、炎がいい」

「私、風。」

「土か水がいいな」

「光と闇は?」

次の言葉はノア先生が引き継いだ。

「光と闇は滅多にない属性ですので、この学校に今はいないと思われますね。それくらい珍しいのです。」

「そっかあ。僕は普通でいいや」

ユウトがのんびりと話す。

「まあ、悩んでもしょうがないってことだろ?

わかったよ。やる。今やれることやろうぜ。」

ガイルが真っ直ぐノア先生を見る。




――実習開始――



「ご理解頂きありがとうございます。では、授業に入りましょう。」

ノア先生は三歩ほど前に出て生徒の真正面に来た。

「魔法はイメージです。出来るイメージを育てていきますよ」

順番にホースの前に出て、練習する。

が、どうしても進まない。

一年生の時に作った水球は拳大程度だったが、今ではバスケットボールよりも大きい。

とても直径一センチ程度のホースになんて入らない。

現実的に考えればそうだ。


どうすれば、ノア先生のように、水球の水がホースで抜き取られるのだろうか。

見えないホースの中は、どうなっているのだろうか。

水が、ホースの中に変形して入っているのだろうか。

それとも単純に水の膜に刺さって出来た穴から漏れ出ているのか。


ノア先生は、イメージと言うけど、それには理由づけがあると便利だ。

「そもそもホースは真の水平であるはずがない。ほんの少しの角度さえあれば……。いや、ホースの入口を一番最初に極わずかの陰圧に……。」

思わず言葉が口から出ていた。

気がつくとレオがこちらを見ていた。

「な、何?」

「いや?オリバーらしいなって思って」

ニヤニヤして、急に肩を組んでくる。

「レオ。重いって!」

「俺も混ぜろ!」

二人の間に飛び込んできた奴がいた。

「ガイルはもっと重いよ!」




――放課後練習――



結局三人そろって放課後練習をすることができた。

「試したい作戦があるんだ」

オリバーは水球を作った。

水球はやや歪んでいて、表面はやや波打っているが、触ると膜がある。

ホースを水球の中にめり込ませる。

そして直径一センチのホースの入口で風を外に起こす。

「陰圧になれば、水が吸い出されるはずなんだけど……」

水は出ない。

「ホースの中で風を出すのが難しい。ダメかあ。」

ノア先生を見る。

「いいアイデアですね。その方向は悪くありません。」とニッコリ。

ホッと胸を撫で下ろす。

(けど、そのコントロールが難しいんだよ)

自分で、気が遠くなりそうだ。


レオの番だ。

レオの水球はほぼ真球に近い。表面も整っている。

それをホースに向かって形を伸ばしていく。

なんだかカタツムリみたいだ。

そこでパシャン、と割れた。

ノア先生は「これも練習ですね」とニッコリ。


ガイルは水球を作ると、ポコポコと小さい水球に分裂させた。

十個ほどの水球が出来た。

が、ホースの中にはまだ入れなかった。

まだ大きい。

「ぐぬぬ。これ以上は……。」

「練習ですね。でも、皆さん方向性は間違っていません。あとは練習していきましょう。」とノア先生は言った。


「あーあ。上手くいかないなあ。」

「でも、いいところまでいったよ」

「練習あるのみ、だな」

「レオはそういうの得意だけど、俺、ダメなんだよ。ニガテ」

「俺だって練習は好きじゃないぜ」

「姉ちゃん、見本見せてくれないかな~。」

「はあ?どうしてここで姉ちゃん?」

レオが呆れる。


ガイルの一言で自分の心臓が跳ねるのがわかった。

(もう、余計なこと言うなよ)

でも過敏に反応してしまう自分がダメなのだと、言い聞かせる。

(いっそ、課題がもっとあればいい。そうすれば何も考えなくていいのに。)


色々できるようになって。

もっと……強くなって。

……そして、

何になるのかは分からないけど。

その先に姉ちゃんはいなくてもいい、はずだから。


今、できることを。


焦っても仕方ないのに。

背伸びをしたくて。

でも、できることしかできない。


モヤモヤする気持ちが渦巻いた。


空は晴れ。

日差しは暖かい。

トンビは円を描いていた。

その向こうの山は雪で真っ白だった。

校長先生の見ていた山も、真っ白だった。


(……どうすればいいんだろう)

課題のことが、頭から離れない。

考えても、答えは出ない。

でも――考えないと、いけない気もする。


胸の奥で、何かが引っかかっていた。


そのまま、立ち尽くす。


――その時だった。


「なあ、明日さ」

ガイルの声。

「桑の実、そろそろじゃね?」


一瞬、思考が止まる。


桑の実。


去年、みんなで取りに行って、

転げ回って、笑って。


……何も考えずに、楽しかった。


「行こうぜ」

ガイルが笑う。


「……そうだね」

気づけば、頷いていた。


(少しくらい、いいか)

(考えるのを、やめる時間があっても)


胸の奥の引っかかりは、消えないまま。


それでも――


ほんの少しだけ、軽くなった気がした。




難しい課題に大苦戦!


果たしてクリアできるのか?


そして今年も桑の実取りへ。


もちろん、何も起きないはずもなく……?


次回もお楽しみに!


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