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第11話:一次試験②

「えー、次は剣技の方の試験を行う。見ての通り、ここに丸太を用意した。君たちにはこの丸太を剣で切ってもらう。えー、この丸太は少々特殊でな。普通は絶対に真っ二つに斬れないようにできている。だから、より深く傷をつけた方が評価が高い……そういう試験だ。質問はあるか?」


「はい」


 俺は手を上げた。


「質問を許す」


「丸太をもし真っ二つに斬れたら点数はいくつになりますか?」


「えー、……万が一そんなことがあれば、満点とするしかないだろうな」


「わかりました! ありがとうございます」


 さすがに絶対真っ二つに斬れない丸太を斬れるとは思えないけど、やれるだけのことはやってみよう。


「えー、並びはさっきと同じだ。そこに置いてある真剣を使い、合図をしたら斬るように」


 一人目の受験生が剣を構えた。さっきの的当てで、俺の他に唯一中心を射抜いたやつだ。

 剣を横なぎに一閃――普通の丸太なら真っ二つだが、目の前の丸太には小さな傷が一本入っただけだった。


「おお……剣もできるんだな」


「あれって凄いのかな……?」


「ちょっと地味かも」


 俺が見ていた限りでは、剣の型はしっかり覚えているようだし、悪くはない。……だけど、パワーとスピードがまったく足りていない。俺ならもっと深く踏み込んで、剣に力を乗せられる。


「えー、二人目」


 二人目の受験生が呼ばれて、丸太の前に出てくる。

 すると、驚いた。


 さっき丸太についていた傷が綺麗に消えていたのだ。

 ……なるほど、あれは魔道具なのか。


 攻撃力の大部分を吸収し、威力を軽減させる。さらに、自動修復の機能もついている。勝手に傷が治るから、ダメージが蓄積して割れることもない。……通りで斬れないってわけだ。


 だけど、魔道具であるからには、威力を軽減させるのにも限界があるはずだ。

 その限界を超えた一撃を与えれば、理屈上は真っ二つにできる。それができれば、満点ゲットだ。


「えー、三人目」


「試験官、俺は最後に回してもらえませんか?」


「決まった順番は守ってもらわなくては困る。……やりなさい」


「しかし、丸太を真っ二つにしてしまうと他の受験生に影響があるのでは?」


 試験官は俺の主張を聞いて、しばしの間口をつぐんだ。そして、


「わかった。特例を認めよう。えー、では四番目の者」


 周りにざわめきが起こる。


「本当にやれるのか……?」


「もしそんなことができたら前代未聞よ!」


「ちょっと楽しみかも」


 試験はスムーズに進み、俺の番がやってきた。

 この間に丸太を真っ二つにできたものはおろか、一センチ以上の深さの傷をつけられた者も皆無だった。


 俺はこの場の全員の注目を浴びながら、剣を構える。

 奥義は使わない。純粋な剣技のみの試験だから、身体強化も使わない。


 アレス――父さんから学んだ基礎を思い出し、身体に染み込ませた動きで剣を振る。

 横なぎに一閃。スッと音もなく剣が入り、ヌルヌルと進んでいく。剣が出口を見つけると、一直線に突き進んだ。


 ――成功だ。


 丸太には一見傷が入っていないように見えた。でも、もちろん真っ二つに斬れている。

 俺が指でちょんと押してやると、丸太はスライドしていき、その断面が現れる。


「本当に斬りやがった!」


「こ、こんなの前代未聞ですっ!」


「う、嘘だろ!?」


 生徒が声に出して驚くのとは対照的に、試験官は信じられないものでも見たかのように、固まっていた。


「ま、満点だ……というより、規格外すぎる……こんなの!」


 一次試験の合格者はこの場で伝えられ、Aブロックから合格した十名が二次試験に進むことになった。

 俺は見事に基礎試験に続き一次試験も合格することができた。


 二次試験は総合力が見られるって話だけど、どんな試験なんだろう? 

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