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俺の、あれ?

 おう俺は山賊だ。

 今は城塞都市の近くを根城にしてる。

 この都市にはでかい街道があって、この大街道ってのが美味い。

 この道を通るのは隊商を組んでる商人ぐれえだからだ。

 ドカンと稼げるうえに人質や奴隷としての価値がたけえ。

 それがうめえ。


 嘘だ、めっちゃ強がった。

 すげえ大変、もう人生最大のピンチ。

 団を追われた。

 何言っているのかわからねえと思うが、俺もわからねえ。

 ともかく団を追い出された俺は行くあてもなく彷徨っていると、村人に襲われた。

 っ村人にだ!

 あいつら金やったりして仲良くしてたのに、マジで山狩りしてくんのな。

 山狩りに慣れた俺じゃなきゃくたばってたぜ。

 くそっあいつら全員復讐してる。


 ぅつうわけで俺は朽ちた古城を根城にしてる。

 この片田舎にはしょぼい街道があって、くそ不味い。

 破産した商人に、依頼に失敗した冒険者。

 何も持ってなくて、くそ恵んだぜ。

 もう三日食ってねえ。

 そんな俺にも愉快な仲間がいる。

 乞食のザイルに、破産商人のダルラ、密入国者のライトだ。

 ザイルは俺に城をくれた。

 ダルラは追われているところを助けてやった。

 ライトは言葉が通じねえ。

 良い仲間だろ?


 言葉が通じねえってのは不思議なモンだな、オッサンなのに可愛いガキに見える。

 それに言葉を教えてやると、その言葉ばっかり使いやがる。これにはまいったよ。

 スープの皿を渡した時に俺に向かって礼のつもりなのか、「金も命も置いていケ」だってよ。マジでビビった。

 さすがにこれはまずいってんで必死こいて言葉を教えてやったよ。

 今じゃあ、


「親分」「黙れ」「人質」「金」「置いていけ」「ダブル」「トライアングル」「スクウェア」「グレートダブルフォーメーション(流暢)」 


 完璧だ。







 俺はいつものように寂れた道を歩く商人を襲った。

 奴は一人だった、暗い道を落ち込みながら痩せた馬を引いている。

 俺はゆっくり獲物を見定め所定の位置に着いた。


 グレートダブルフォーメーションだ。


 獲物の前後を塞ぎ、時間差で左右から強襲をかける。

 この面子でできる俺自慢の陣形だ。

 この陣形を使うようになってからは、獲物に恵む回数が増えた。 

 俺は信奉する悪徳の神リーファイスに祈りを捧げた。

 仕事の成功よりお金を持ってますようにってなあ。


「命が惜しけりゃ、金も命も置いてきな!」


 いつもの口上、いつもの陣形、いつもの獲物。

 俺は笑みすら浮かべ奴に迫った。

 これは俺の美学だ、人生に回り道はつきもの、むしろ俺の今後の人生を加速するためのレーンかもしれねえ。

 俺はいつものように鞘を払うと愛用のシミタ―構え、いつものように子分に合図を送る。

 そうするといつものように獲物の両脇から子分が飛び出し獲物に殴りかかる。

 いつものように獲物が倒れ――――――ダルラが倒れた。


「…やっと、やっと会えたよ賊君、僕の剣の錆になってくれるかい」







 奴は強かった。

 子分たちは皆やられちまった。

 意地きたねえザイルに、異常に怯えていたダルラ、最後に俺を指さして「親分、置いていけ、わたい、のかわり」と妙な事を言っていたライト。

 俺は怒りに我を忘れながら、妙に動きの悪い奴をしりめにさっさとずらかった。

 奴は嬉しそうに震えると叫んだ。


「いつまでも君を追う!いつまでも逃げ続けられると思うなよ!!」


 俺は後ろをチラッと横目で確認しながら逃走し、気付いた。

 奴がマジでみすぼらしいってことに。

 そして共感した。

 同じどん底だね。


「ハハっ、やれるもんならやってみやがれ!」


 俺は走った。


ありがとうございました

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