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私の気持ち

 私は山賊だ。

 今は国境にある深い森を住まいにしてる。

 この森には獣道があって、その道の利用者を襲い続けてる。

 この道を通るのは、諦めずに明日に希望を抱いている眩しい人たちだ。

 その人達はもてる限りの財産を身に着け、この道を進み続けている。

 私は、その人達を食い物にして生活してる。






 

 私は頭に救われた。

 まだ幼かった私を頭は大事に育ててくれた。

 あのまま村にいたとしてもすぐに売られていたことだろう、私はそれを知ってる。

 手下の一人を村まで使いにやり金銭と引き換えにして近況を手に入れたからだ。

 あの時、頭の誘いを断った子たちは皆奴隷商に引き取られてしまったらしい。それから先は知らない。

 

 私は拾われて幸運だった。

 頭は自分の持っている知識をなんの代償もなしに教えてくれた。

 分からない事があれば何でも答えてくれた。

 忘れてしまった事があっても、何度でも教えてくれた。

 間違えてしまった時は、顔を(しか)めながらも正しいやり方を教えてくれた。

 寂しくて泣いていた時は、どこか困った顔をして優しく抱きしめてくれた。

 私はもらってばかりだ。

 

 吊り橋を離れてから色々な事があった。

 苦労は多かったけど、楽しいことや嬉しいことは沢山あった。

 三日間何も食べられなかったり。門から追い出されたり。逆に山賊されかかったり。

 仕事がうまくいったときは御馳走がでたり。うまくした時は褒めてくれたり。

 髪飾りを買ってくれたり。

 話をしてくれたり。

 遊んでくれたり。

 喜んで、怒って、泣いて、笑ってくれた。

 みんな私の大事な思い出。

 …さすがに山狩りされた時と騎士団に追われた時には命の危機を覚えたけど。

 それでも私に後悔はないし、頭と一緒にやってこれて良かったと思っている。


 森に住み着いてから大変だった。

 それまで二人の山賊団だったけど、新しい人を入団させたからだ。

 頭の方針で私は盗賊団の副頭目だ、年齢は関係ないらしい。

 私は認めてもらえたのが凄く嬉しかったけど、ひどく戸惑ったのを覚えている。

 新しい人たちは皆年上の男の人で、それまで傭兵や騎士の仕事をしていたからだ。

 私は必死に頑張った。

 彼らに負けない様に、そして認められるように頑張った。それ以外のことには見向きもせずに前に走り続けた。

 結果は出たんだと思う、周りの態度が以前に比べて柔らかくなったからだ。

 ただ、それでも突っかかってくる人がいてうんざりした。それも頭がいない時を狙って突っかかってくるのだ。

 私は困ったけど、仕事に影響がなかったので表面上は気にしなかった。

 口で言っても聞いてもらえるとは思えないし、私の結果で黙らせるべきだと思ったからだ。

 そう思っていたんだけど、仕事に影響が出た。

 

 客―――頭はよく獲物を事をこう言う―――を待っている時にちょっかいを掛けてきたのだ。

 それも私が弓担当。

 インペリアルクロスαの中のアルファを担当している時にだ。

 頭が熱意を込めて作った襲撃体勢の中でも、特に想い入れがあるアルファの時にちょっかいをかけてきたのだ。

 私の頭は一瞬で茹で上がり気付いた時には行動が終わっていた。 

 

「邪魔をするなディーン」


 私は奴が素直に謝ったから許した、そしてすぐに射撃体勢に戻った。

 仕事はなんとか無事に終わった。


 それから団の中は大分風通しがよくなったと思う。

 また同じことはあったけど、その都度教育したらすっかり団の空気が良くなった。 

 ディーンなんかは随分素直になった。

 ジョイフルは時々よくわからない眼差しになって私を見ている。

 気になる事はあるけど、私はおおむね満足した。


 それから毎日忙しく働いて、気付いた時にはもう一つの団を任されるようになった。

 手下も大分増えた。

 私に丁寧に接してくる片腕のジョイフルに、何か言う前に察してくれるジョニーとサンダーとライスン、すっかり下僕になったディーンにベン。

 頭は私に古株を皆譲ってくれた、本当に頭にはもらってばかりだ。

 私もあの人のようになりたい。


 





 私はいつものように森の中を歩く密入国者を襲った。

 彼らは3人だった、踏みしめられた道を様子を窺いながら歩いている。

 私はゆっくり獲物を見定め所定の位置に着いた。


 テトラデカゴンフォーメーションαβだ。


 獲物の頭上を含む全ての進行方向を塞いだ上で、弓を射かけるのだ。

 これはあの人のようになりたいと思い、私が考えた陣形だ。

 この陣形を使うようになってからは、姿を見せるだけで獲物が慈悲を乞う。 

 私は信奉する悪徳の神リーファイスに祈りを捧げた。

 仕事の成功とあの人の無事をって。


「命が惜しければ、金も命も置いてきなさい!」


 いつもの口上、いつもの陣形、いつもの獲物。

 私は笑みすら浮かべ彼等に迫った。

 これは私のジンクスだ。

 まだまだ追いつくことのできないあの人の背中を見続けた私が、いつか恩返しをするという祈りを込めた儀式だ。

 私はいつものように鞘を払うと愛用のファルシオンを構え、いつものように手下に合図を送る。

 そうするといつものように獲物の眼前に矢が穿たれた。

 いつものように獲物が驚く。


「全部置いていきなさい」

ありがとうございました

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