表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/43

俺の新しい家族

 おう俺は山賊だ。

 今は城塞都市の近くを根城にしている。

 この都市の付近は道が全て石畳で、この大街道ってのが美味い。

 この道を利用するのは大商人や貴族だ。

 そんなやつらが運んでいるのは、金銀財宝、芸術品に、価値のある人間だ。

 それがうますぎる。


 でも俺はうまくない。

 なぜなら俺は今下っ端だからだ。

 あの凄惨な戦いから逃げた俺は宛もなくさまよい続けた。

 やる気もなく、復讐を誓えど力もなくクソみてえな無気力な日々だった。

 そんな俺を拾ってくれた人がいる、この地方一の大賊団の総領だ。

 この大賊団はすげえデカい、なんつっても団員が500人を超えるからな。

 俺はそんなでけえ団の総領に拾われた。

 マジでおっかねえ人だ、落ち込んでいた俺がビビって仲間の事を忘れるほどだった。

 そしてその人の一言で俺は立ち直れた。


『立ち上がれ』


 しゃがみ込んでる俺に対して言うから、ジョークかと思った。

 けど総領は本気だった眼も逝ってる。

 立たなきゃ殺さると思った。

 俺はビビった。

 そんで総領の言うとおり立ち上がったら、心まで立ち直っちまった。

 その日から俺は総領に忠誠を誓っている。


 それから俺はあいつ等の事は良い思い出にして毎日を忙しく過ごしてる。

 これだけでかい規模になると、皆同じことはせずにそれぞれの現場がある。

 俺は総領に気に入られたのもあり、一つに現場に縛られず色んな現場で使われた。

 ようは小僧みてえなもんだが、これがなかなか面白い。

 詐欺師の現場もあれば、相場師の現場もある、俺がまだ見た事のない世界。

 俺から見ればじゃりガキが、一丁前に集団仕切って商人を嵌めているのだ。

 泣きわめいている商人を奴隷商に渡し、気丈な妻と娘は経営している娼館に下ろす、息子は育てて未来の団員だ。

 このじゃりスゲエ、インテリって奴か。

 商人一家を余すことなく利用し、まさに骨までしゃぶっている状態だ。

 俺は目を引ん剝いて見続け心に刻んだ

 将来独立して立派な山賊頭に戻るんだ、俺は背中から気炎を上げ息まいた。

 

「真面目にやってるか」

「そっ、総領」


 俺はおでれえた、後ろに振り返ると目の前に総領がいたからだ。

 顔は相変わらず厳つい、俺は内心ビビりながら口を開く。


「へい、勉強になりやす」

「それならいいんだ、どうだ次は襲撃の現場でも行ってみないか?」

「しゅ、襲撃っすか?」


 俺は躊躇(ためら)った、今の現場が楽しいからだ。

 しかしこれは総領からの提案、事実上の命令みてえなもんだ。

 俺はこの後受け入れた。

  






 やっぱ肉体労働はいいぜ。

 楽に金を稼ごうとする、そんな淀んだ考えを吹き飛ばしてくれた。 

 額に汗して小銭を稼ぐ、これが人として大事なんだと俺は思い返した。

 まあ今稼いでるのは大金なんだが。

 数はスゲエな、俺だったら絶対に襲わねえ隊商や貴族を一飲みだ。

 そんかわりフォーメーションがしょべえ。

 なんだこのきたねえ戦い方は、ただ数で押しているだけだ。俺ならもっと考えるぜ。

 俺は内心、得意気になりながら仕事をしてた。


 俺達はいつものように石畳を馬車で進む貴族を襲った。

 奴は一台だった、馬車から顔を出してのんきに景色を見てやがる。

 俺達はゆっくり獲物を見定め所定の位置に着いた。

 俺は一人呟いた。

 シングルフォーメーション。


 思わず苦笑いがこぼれた。


 獲物の前後は塞がず、ただ数に任せての突撃だ。

 俺は馬鹿な突撃を見送ると大きく迂回し、獲物の反対方向から近付いた。

 これは一人でもできる安全な襲撃方法だ。

 そして割とおいしいポジションでもある。

 客は兎と一緒で、巣穴を襲われたら別の出口へ逃げるからだ。

 俺がこの陣形をするようになってから夕食のおかずが一品増えた、へへ

 俺は信奉する悪徳の神リーファイスに祈りを捧げた。

 仕事の成功と夕飯に肉をってなあ

 

「命が惜しけりゃ、金も命も置いてきな」


 いつもの向上、いつもの陣形、いつもの獲物。

 俺は笑みすら浮かべ小さく呟くと扉に迫った。

 これは俺の美学だ、もはやは貫き通すぜ。俺は一つの歯車になっちまった、ちっぽけで磨り減りヒビが入っているただの歯車だ。だがその歯車からグリスが湧き出す、湧き出したグリスは互いの歯を伝い次々に歯車に渡っていく、俺という歯車があれば絡繰りはいつでもベストを尽くせる。そんな歯車を俺は目指す。

 俺はいつものように鞘を払うと愛用のシミタ―構え、いつものように腰を屈め様子を窺う。

 すつものように馬車の扉が開き俺はシミタ―を突きつ――――――突きつけられた。


「あれ?こんなところにいたのか賊君、僕の剣の錆になってくれるかい」







 奴は圧倒的だった。

 皆蹂躙(じゅうりん)された。

 突撃しか能のない親分に、嫌味を言うスリーパー、年下の癖に俺を顎で使うスルット、意味もなく殴ってくるガンツ、他にもだ。そして偶然俺を助けた大嫌いだったホーリー。

 サンキュウホーリー、俺は忘れないぜ!

 ホーリーが囮になった時点で俺は逃げた。安全なアジトに。

 奴は喜色の笑みを浮かべ声を上げた。


「最高だよ賊君!いつまでも逃げ続けてみなよ!!」


 俺は後ろをチラッと横目で確認すると、奴は狂気の笑みを浮かべ仲間?共を次々に切り伏せていた。

 俺は理解した、奴は化け物だと。

 そして再度復讐を誓った。

 一泡吹かせてやると。


「ッ大賊団をなめんなよ!」


 俺も笑みを浮かべ駆け続けた。

ありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ