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俺の決着

 おう俺は山賊だ。

 今は断崖絶壁を根城にしてる。

 この崖には吊り橋があって、この壊れそうな橋ってのが美味い。

 この橋を利用するのは村人くれえだからだ。

 すげえ安全に稼げるうえに、食糧が貰える。

 それがうめえ。


 嘘だ、食料はうめえが、状況はまじい。

 まさにジリ貧ってやつだ。

 なんでこうなったか言うと、俺は広域手配されちまった。 

 俺がアジトに帰りついた時には既に騎士団によって皆捕まった後だった。

 それからだ、俺の手配書が回ったのは。

 これがきつかった、どの街に行っても追いかけまわされる。

 商人との取引もできねえし、門でバレルもんだから街の中に入れねえ、しょうがねえから壁の外にある街を利用しようとするが、皆が密告者になりやがる。

 壁外の街は民度が低いと言っても、これは酷過ぎる。

 少しもゆっくり休めねえ。

 そして広域手配ってのが曲者だ。

 こいつは街や地域を飛び越え、広範囲に渡って手配書をばら撒きやがる。

 金がすげえかかるから相当ヤバい罪人じゃねえとこんなことはしねえ。

 俺は毎日ひたむきに働いていただけなのに。

 なんでこんなことに。


 まあそれは置いといて、そんなヤバい俺だから仲間を作るのも慎重だ。

 俺に掛かっている懸賞金がとんでもない金額らしく、目の色を変えて襲ってきやがる。

 山賊が村人に山賊されかかるんだから相当だよな?

 だから俺は慎重に仲間を探した。

 傭兵は駄目だ信用ならん、その場ですぐに斬りかかってきた。

 盗賊も駄目だ油断ならねえ、背中を向けたら速攻で襲い掛かってきやがった。

 旅芸人、コイツが一番恐ろしい。飯の中に毒を入れてきやがった。

 嬉しそうな顔して媚びやがるからよ、少しほだされて一緒に飯食ったら案の定だ。

 隙を見て皿を入れ替えてなかったらヤバかった。

 それで実感した、水に落ちた犬はマジで棒で叩かれるんだってな

 早く立場を改めないとな。


 ま、そういうわけで困りに困った俺は最後の手段として、ガキを拾う事にした。

 拾うってのもなかなか難しい、貧乏な家はまっとうな手段でガキを間引くからな。

 そう奴隷商だ、あいつらが食い詰めてそうな村を周りガキを買い取っていやがる。

 そうなると俺が入り込めねえような気がするが、隙間はある。ガキだって自分が売られることくらい理解できるだろう。そこに浸けこむ。

 奴隷になると終わりだ。まずまっとうな一生は送れねえし、サディストに売られると速攻で命が消える。

 これは常識で皆が知っているお約束だ。

 だから売られることが分かっているガキは、俺の言葉で揺れる揺れる、もう大地震だ。

 山賊になれば罪人だが、ばれなきゃ街に入れるし市民権も得れる。

 うまくいきゃあ薔薇色の人生よ。


 俺はドドメ色人生だ。

 俺の状況を見透かしたガキは断ってきやがったが、一人だけ俺の子分になった奴がいた。

 女のガキだが目が良い、自分の立場を知ってなお気概に溢れた目をしてやがる。

 こいつは使い物になりそうだ。







 そういうわけで俺は吊り橋の近くで待機している。

 ガキ―――ビアナと一緒にな。

 仕込むのには時間は掛かったが、こいつはスゲーやる気に溢れていた。今までの連中とは一味も二味も違う、まさに山賊になるために生まれたガキだ。

 俺は可愛がった。

 山賊の社会は縦社会、それを教えなくとも理解できてるから俺は嬉しくなって教え込んだ。

 こいつは乾いた砂が水を飲み込むように俺の教えを全て吸収した。

 まだ体格が伴ってねえから戦闘じゃあ役には立たねえが他では十分だ、頭も切れる。


 吊り橋で商売を始めようってのはこいつアイディアだ。

 俺はすぐに受け入れた。

 確かにショボイ仕事だが、確実に飯は食えるし(まれ)に通る旅人から金も得れる。

 なにより俺が表に顔を出さなくても仕事ができるから騎士団もやってこねえ。

 ビアナが旅人との交渉もしてくれやがる。

 俺は安住の地を得たぜ。 


 






 俺はいつものようにボロイ吊り橋を歩く旅人を襲った。

 奴は一人だった、断崖絶壁にビビりながら歩いてる。

 俺はゆっくり獲物を見定め所定の位置に着いた。


 ダブルフォーメーションβ(ベータ)だ。


 獲物が橋の中央にたどり着いた段階で俺が物陰から矢を射かけて威嚇する。

 ビアナは止まった獲物の下に行き、通行料をせしめたら無事に通してやる、と。

 俺達の頭脳が光る陣形だ。

 この陣形を使うようになってからは、確実に仕事が成功した。 

 俺は信奉する悪徳の神リーファイスに祈りを捧げた。

 仕事の成功とビアナの成長をってなあ。


「命が惜しけりゃ、金も命も置いてきな!」


 いつもの向上、いつもの陣形、いつもの獲物。

 俺は物陰から叫ぶと笑みすら浮かべ弓を構えた。

 これは俺の美学だ。落ちるとこまで落ちた俺だが、俺は立ち上がりそして最高の片腕ともいえる子分に出会った。これからが出発だ。今までは長い序章にすぎねえ俺の本編の幕開けだ。

 俺はいつものように振り絞った渾身の一射で客を脅すと、いつものように子分に合図を送る。

 そうするといつものように獲物の向けて子分が歩き出し―――


「ビアナ!フォーメーションメーデーだ!!」


 脅された客は嫌らしい笑みを浮かべていた。


「賊君、君とはよく会うね。僕の剣の錆になってくれるかい」







 奴は強い。

 戦うと皆殺しにされちまう。

 俺はビアナに話した、俺の宿敵について。 

 ビアナは答えた、谷底に落としましょうと。

 作戦は単純だ、奴に気付いた段階で吊り橋の縄を切断する。

 それだけだ。

 ビアナは俺の言葉を受けると瞬時に駆けだした。

 俺は矢を射続け奴を牽制する。

 俺達の作戦に気付いた奴も駆けだした、が勢いのある踏込はボロイ底板を踏み抜いた。


「くそっなんだいこの橋は」


 馬鹿め、ボロイ吊り橋を走るからだ。

 ここで保険を使った。

 俺の手元には縄がある。

 この縄は俺のいる場所から吊り橋の側面を這わせるようにして橋の中央に結んである。

 縄は一見わからない様に、そしてたるまないように雑草を使って橋の中央まで縛ってある。

 俺は縄を強く引っ張った。

 埋もれていた縄が地上に顔を出し、橋に結んでいた強度のない雑草は千切れ、俺の手の中の縄と橋の中央は直線で結ばれた。

 俺はたぐり寄せては離し、たぐり寄せは離しと吊り橋を揺らす。

 奴は踏み抜いた状態のまま身体を起こすことができず呻く。

 

 勝った。

 

 完璧な勝利だ、自分の才能に酔いしれてしまう。

 奴はべそをかき始め、絶望に浸っている。

 本当に高い所が駄目なのかもな。

 これは交渉できるか?奴の剣は業物に見えるからぜひとも今後の活動資金にしたい。

 金も持っていそうだし、得るもん得たら奴は売っぱらえばいい。

 こりゃ今日のおまんまが楽しみだぜ。


「よしっ、おい!助けてやろうか?」

「……え…」


 橋を揺らすのを止めてやった。


「だから助けてやろうかって言ってんだよ」

「…え、あの、本当に?」

「ああ、マジだ」

「…クゥ…頼みま――――――」


 橋が落ちた。

 奴は一瞬で凄い形相なると俺を睨みつけ、対岸の絶壁に叩きつけられると衝撃で橋から落ちた。

 あ、水に落ちた。

 浮かんでこねえ、僅かな木片は浮かび急激な水に流されている。


「親分、仕事終わりました」


 冷静なビアナの一言で俺は我に返った。

 そういえばお前縄を切ってたっけ。

ありがとうございました

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