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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

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第092話 異臭度レベルMAX


 急いで町中へと移動した俺(おれ)は、リストの中からまず集めるのが簡単(かんたん)そうなアイテムをピックアップし、町でごく普通(ふつう)に素材として売られているものを入手し、リストに示された分量とを組み合わせ、調合を実施(じっし)してみた。すると俺(おれ)ですら見たことがない反応を示したアイテムたちは、みるみる間に変貌(へんぼう)を遂(と)げ、まるで得体のしれない『物質B』へと進化していくではないか!?


「う、嘘(うそ)だろ。俺(おれ)だってこの20年かけて調合のイロハは色々試(ため)してきたんだぜ? こんなありふれた素材で、まだこんな見たことない反応やアイテムが存在(そんざい)してんのかよ。ってか、あのおっさん何者だ。どうしてあんなおっさんが、あんなとこで肉焼いてたんだよ!?」


 初めて生み出された物体を上下左右から覗(のぞ)きつつも、初めてリッケさんから指定された赤文字アイテムに丸が付いた。まだ始まったばかりではあるものの、これがもし本当に上手(うま)くいくのだとしたら、もしかしたらもしかするかも!?


「考えてる暇(ひま)はねぇな。とにかく今はここに書かれたアイテムを片(かた)っ端(ぱし)から集めるしかない。にしてもこの天候の中、これだけのアイテムをたった数日で集められるのか!? どんだけの苦行だよ」


 もともとあったリッケさんのリストが細分化され、そこから親方が入手可能としていたアイテムを除(のぞ)いた全てをピックアップしてみる。どうやら当初予定していた四倍もの品数が必要となりそうだ。しかも半分は町では集まりそうもなく、物によっては討伐(とうばつ)や採取の必要が出てきてしまう。


「う~ん、こうなると俺(おれ)本来の冒険者(ぼうけんしゃ)ランクじゃ集められないものが多数あるが、……今はそんなこと言ってる時間はない。あとでどう言(い)い訳(わけ)するかを考えながら、やるだけのことをやるしかない」


 残された時間は約12日。親方の予測によれば、現在手元にあるアイテムの加工にかかる日数が三日だとして、それを使い切るまでに追加のアイテムを手に入れて納品(のうひん)しなければ、ヒゲ男の作業を止めてしまうことになる。となると、俺(おれ)は次の工程にかかる日程を確認(かくにん)しつつ、ひたすらアイテムを手に入れては納品(のうひん)し、日程を確認(かくにん)しては納品(のうひん)し続けるしかない。作業を止めないギリギリのタイミングを読みつつ、12日以内に全(すべ)ての作業を完了(かんりょう)させ、魔導(まどう)コンテナを完成させなければならない!


「とすると、まずは簡単(かんたん)に手に入るものから順々にいくか。ええと、これとこれ、それにこれとこれは町で手に入るから……」



 そうして俺(おれ)はアイテムを一つひとつ入手しては納品(のうひん)するという工程を繰(く)り返(かえ)し、約九日をかけて約99パーセントのアイテムを納入(のうにゅう)した。それこそ昼夜を問わず、ダンジョンや野山を駆(か)けずり回(まわ)り、エリアボスクラスの魔物(まもの)すら討伐(とうばつ)した。しかしいよいよ最後の工程を目前に、ヒゲ男のリストをしてもなお要領を得ないアイテムの入手で行(い)き詰(づ)まってしまい、俺(おれ)はひとり頭を悩(なや)ませていた。


「……ダメだ、コイツだけは見たことも聞いたこともない。『太古の祝福』と書かれているが、これは一体なんなんだ?」


 スキルや魔法(まほう)という外的要因とは一線を画し、アイテム名の一つとして記述されたその逸品(いっぴん)は、なんの説明もなく、ただ漠然(ばくぜん)とその存在感(そんざいかん)を示し続けていた。一旦(いったん)工房(こうぼう)へと戻(もど)った俺(おれ)は、九日前から一睡(いっすい)もせず狂(くる)ったように作業を続けているヒゲ男の袖(そで)に座(すわ)り込(こ)み、男の顔を覗(のぞ)き込(こ)みながら質問した。


「なぁ、この『太古の祝福』ってのはなんなんだ。コイツだけが、どうにも入手できないんだが……」


「太古の祝福といったら、太古の祝福じゃ! いいから! 早く! もって! こい! イモ!!」


 ポンチョのリュックからイモを取り出しヒゲ男にトスしてやる。紅(あか)く染(そ)まりきった眼(め)でまばたきひとつしないままイモを頬張(ほおば)る様はバケモノそのもので、完璧(かんぺき)にキマっている。この人、本当に大丈夫(だいじょうぶ)か……?


 ヒゲ男の体力についていけず、工房(こうぼう)の端(はし)っこで倒(たお)れて白目を剥(む)いていた親方の肩(かた)を叩(たた)き、例のアイテムについて訊(たず)ねてみるも、やはり見たことも聞いたこともないと首を振(ふ)った。


「これだけがどうやっても手に入らない。誰(だれ)かアイテムに詳(くわ)しい人は?」


「ギルドのもんが知らんのなら、……あとは大書庫の司書くらいだろうな」


「大書庫の? そうか、リッケさんなら知ってるかも!?」


 俺(おれ)はヒゲ男の隣(となり)で爆睡(ばくすい)していたポンチョの頭をひと撫(な)でし、すぐに町を飛び出した。村までの往復を考えれば、もう時間はそれほど残っていない。しかし今は悩(なや)んでいる時間すら惜(お)しい!


 森に足を踏(ふ)み入(い)れると、すぐにシルシルが駆(か)け寄(よ)ってきた。「乗ってください」という彼(かれ)の背(せ)に跨(またが)った俺(おれ)は、「少しだけ横になる」と呟(つぶや)き、倒(たお)れるように顔を伏(ふ)せた。不眠(ふみん)不休で動き続けていたせいで、上手(うま)く身体が動かなくなってきた。そして俺(おれ)は激(はげ)しく揺(ゆ)れるウルフの背中(せなか)で、久方ぶりの休息を……


「取ってる場合じゃねぇだろ!?」


 五分、いや、十分か。

 油断すれば数日すら寝(ね)ていられるほどの睡魔(すいま)をかなぐり捨(す)て、シルシルに魔力(まりょく)を供給(きょうきゅう)する。シルシルとて、マーロンさんたちグループと協力し、延々(えんえん)と走り続けてきたはずだ。俺(おれ)だけがサボっていられる道理などない。


「まだいけそうか、シルシル!」


「無論(むろん)、あと一往復程度、この身張(は)り裂(さ)けようとも主のために走りきってみせよう!」


「いや、そこまでしなくてもいいから……。適度に頑張(がんば)ろうね」


 十日目にして最高速度で駆(か)け抜(ぬ)けた俺(おれ)たちは、未(いま)だ雪降(ふ)りしきるモリスの森を突(つ)っ切(き)り、ものの五時間で村に到着(とうちゃく)した。雪上を滑(すべ)るように倒(たお)れてしまったシルシルに礼を言い残した俺(おれ)は、すぐにリッケさんの姿(すがた)を探(さが)し、食料庫へと飛(と)び込(こ)んだ。しかし満身創痍(そうい)で働く猫(ねこ)族とアリクイ族の姿(すがた)があるだけで、彼女(かのじょ)の姿(すがた)はどこにもない。


「みんな、リッケさんどこ行った!?」


「そ、村長殿(どの)、リッケ殿(どの)なら先程(さきほど)お花を摘(つ)みにと……。しかしそれにしても、随分(ずいぶん)と長いような」


「お花? ……わかった、ありがと!」


 慌(あわ)てて彼女(かのじょ)の自宅(じたく)として使っているゲストハウスに飛(と)び込(こ)むも、何やら恐(おそ)ろしいほどの異臭(いしゅう)に襲(おそ)われ鼻を摘(つま)む。一瞬(いっしゅん)でここにいてはダメだと思わせるほどの酷(ひど)さに、俺(おれ)はすぐに扉(とびら)と窓(まど)を開け放ち、風魔法(まほう)で換気(かんき)を促(うなが)した。


「うぉえっ! な、なんなんですか、この酷(ひど)い臭(にお)いは!?」


 見れば、床(ゆか)にはそのままになっている食べカスや着替(きが)え、実験に使用したアイテムやゴミが散乱(さんらん)し、作りかけの実験道具などもそのままになっていた。俺(おれ)は指先に小さな火を灯(とも)し、真っ暗な部屋(へや)の中を覗(のぞ)き見(み)た。とても女性の一人暮(ひとりぐ)らしとは思えぬ汚(お)部屋(べや)っぷりに、そこに住んでいる人物の性質を否応(いやおう)なく想像させられた。


「今はそんなことより彼女(かのじょ)の話を聞かないと。り、リッケさん!? いるんですか、いたら返事してください!」


 しかし返答はなく、仕方なくさらに奥(おく)の部屋(へや)を覗(のぞ)き込(こ)んだ。そこは腰(こし)の高さまで達するほどのゴミと備品が積み重なっており、とても人の住める環境(かんきょう)ではなくなっていて、俺(おれ)は思わず胃の中のものを全部吐(は)き出(だ)しそうになる。しかしそんな俺(おれ)の嗚咽(おえつ)に混じり、どこからかブクブクという音が聞こえてきた。


 なんだ、この音は!?


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