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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

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第091話 凄い人


 自分の身体で炎(ほのお)を体現しているように、屈伸(くっしん)運動しながら叫(さけ)んでいるヒゲ男。「今すぐに!」とヒゲ男を小脇(こわき)に抱(かか)えた親方は、「お前らもこい!」と俺(おれ)とポンチョを呼(よ)びつけた。


 なんのことやら意味不明ではあるが、俺(おれ)はマーロンさんたちにギルドの仕事を任せ、言われるがまま親方を追って職人(しょくにん)街へと出戻(もど)った。そして先程(さきほど)訪(おとず)れたばかりの潰(つぶ)れそうな工房(こうぼう)に到着(とうちゃく)するなり、カビの生えたシャッターを強引(ごういん)にこじ開けて中に入った。


「おいお前、さっさと釜(かま)に火をつけろ。そっちの炉(ろ)にもだ、早くしろ!」


「そんなこと勝手にしていいのかよ。ここ親方の店じゃないだろ!?」


「ここは俺(おれ)の兄(・)弟(・)弟(・)子(・)の(・)工(・)房(・)だ! にしても、なんであの野郎(やろう)はいねぇんだ。あー、もういい、んなことどーでもいい、いいからさっさと火をつけろ!」


 工房(こうぼう)に入っても、「うんしょうんしょ」とひとりで掛(か)け声(ごえ)をかけているヒゲ男を袖(そで)に置き、親方が叫(さけ)んでいる。俺(おれ)は仕方なく埃(ほこり)を被(かぶ)っている炉(ろ)の横に置かれたままになっていた薪(たきぎ)をくべ、魔法(まほう)で火をつけた。そして床(ゆか)でひっくり返っていた鍋(なべ)に水を汲(く)み、パチンと指を鳴らして湯を沸(わ)かした。


「ちっ、まさかこんなことになるとは想像もしてなかった。56番弟子(でし)のラ(・)ン(・)ゲ(・)の(・)野(・)郎(・)じゃなくて、どうして師(・)匠(・)がこんなとこにいんだよ。おいお前、準備はまだか!?」


「準備ってなんの準備だよ。俺(おれ)はまだ心の準備すらできてないっての!」


「だー、もういい、あとはこっちでやるから、お前は師匠(ししょう)のご機嫌(きげん)でも窺(うかが)ってろ。絶対に機嫌(きげん)を損(そこ)ねるなよ、わーったな!?」


 ポンと放(ほう)り出(だ)された俺(おれ)は、独り言を呟(つぶや)きながらスクワットしているヒゲ男を見下ろした。俺(おれ)には痩(や)せこけた小さいヒゲのおっさんにしか見えないが、親方やギルド職員の慌(あわ)てた態度を見る限り、コイツがなんだか凄(すご)い奴(やつ)なんだろうってことはわかってきた。しかしだ……!


「おいキサマ! イモだ、イモを食わせろ!」


 火をつけろと言った次は、またイモかよ!

 俺(おれ)はポンチョのリュックからイモを二つ取り出し、ヒゲ男にくれてやった。恍惚(こうこつ)とした表情でイモを手に取った男は、肉体に燃料でも補給(ほきゅう)するかのようにイモをがっつき、鼻息荒(あら)く、ものの数分で食い切った。


「フォフォフォフォフォ、フォフォフォー! 沸(わ)いてきた、沸(わ)いてきた、ノウミソ、ノウミソ、フォフォー!」


 頭から煙(けむり)を吐(は)きそうなテンションで奇声(きせい)を上げたヒゲ男は、汽車が走りだすかのように腕(うで)を回しながらギンギンの眼(め)を見開いて親方を睨(にら)みつけた。そして彼(かれ)の腰(こし)から道具を強奪(ごうだつ)するなり、狂(くる)ったようにハンマーを振(ふ)るい始めた。もはや完全にヤバイ奴(やつ)だ!


「おいお前、とにかく現状揃(そろ)ってるアイテムをそこに並(なら)べろ。とにかく全部そこに置くだけでいい、早くしろ!」


 そう言うと、親方は自分が手配して集めてきたアイテムをヒゲ男の前に並(なら)べ、残りのアイテムをすぐ用意するように命令した。しかしそんなものが手元にあるはずもなく、「いや、これから集めるんですけど!?」と返事するほかない。


「だったら早くしろ、師匠(ししょう)のことはこっちで見ておく。師匠(ししょう)の手が止まる前に、さっさと集めてこい!」


「集めてこいって、んな無茶な……」


「コイツを持ってけ、急げ、走れ、歩くな!」


 親方が俺(おれ)に紙をトスした。それは先程(さきほど)ヒゲ男が書き上げた設計図のようなもので、何やら文字がぎっしりと細かく書(か)き殴(なぐ)られていた。


「……うん? ちょっと待て、これって」


 リッケさんが渡してくれたメモとは比べ物にならないほど精巧(せいこう)に書き出された設計図には、必要な材料がミリ単位まで記されており、とてもあの一瞬(いっしゅん)で書き上げたものとは信じられなかった。しかもあれだけ抽象的(ちゅうしょうてき)だった素材の一つひとつまでもが、必要な強度や彩度(さいど)に至(いた)るまでびっしり書(か)き込(こ)まれている。なんだ、この恐(おそ)ろしい精度は!?


「あら~……? おっさん、もしかして凄(すご)い人だったりする?」


「当たり前だ! 魔道(まどう)具作りや解体の世界において、この人の横に立つ人間なんざ早々いねぇんだよ。いいからさっさと材料集めてこい、すぐだ!」


 蹴倒(けたお)されて工房(こうぼう)を追い出された俺(おれ)は、ポンチョを離(はな)してくれないおっさんのことは一旦(いったん)諦(あきら)め、三人を工房(こうぼう)に残したままアイテム探(さが)しに飛び出した。「今あるこの量のアイテムじゃ、せいぜいもって三日だ!」と吐(は)き捨(す)てるように言った親方の顔色を一見しただけで、相当切羽詰(せっぱつ)まった状況(じょうきょう)であることは伝わってくる。だがしかし……


「急すぎるだろ!? そもそも誰(だれ)なんだよ、あのおっさんは!!?」


 テーブルはヒゲ男のことをエドワード・ガロウと呼(よ)んでいたが、よくよく思い出してみると確かに聞き覚えはある。しかもなんだか随分(ずいぶん)と身近なところで聞いた覚えがあるが、果たして。


「忘(わす)れた! しかし今はそんなことどーでもいい。それよりもまずは素材の準備だ。手始めにどこから……」


 それにしても、だ。

 書かれた素材の数々は、そのアイテムの構成物質までもが明確に示され、どれも確実に存在(そんざい)しているものばかりで埋(う)め尽(つ)くされている。過去に一度は見覚えある素材が並(なら)び、これが本当ならリッケさんが記してくれた赤文字のアイテムですら、もしかすると準備できるかもしれない!


「本当にここに並(なら)んだアイテムが、ここに書かれた比率で調合することで生み出せるものなのだとしたら、俺(おれ)ならどんなものでも作り出せる。……けど、おいおいおいマジかよ、冗談(じょうだん)キツすぎるぜ!?」


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