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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

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第083話 帰還


 朝がきても、まだ深々と雪は降(ふ)り続いていた。厚い雲に覆(おお)われた空から光が差すことはなく、また日がな一日陰鬱(いんうつ)とした人々の顔が流れていくに違いない。


 しかしそのおかげか、わざわざ東の森を闊歩(かっぽ)しようと思うものの姿(すがた)はなく、相変わらず東の門は閉(と)ざされたままだった。俺(おれ)は東の守衛に礼を言って専用(せんよう)の小扉(とびら)を開けてもらい、マーロンさんと二人(ふたり)、一旦(いったん)町へ戻(もど)りますとマイルネの町を出発した。


 空を舞(ま)う雪も幾(いく)らか小降(こぶ)りとなり、真っ白なキャンバスの上に俺(おれ)たち二人(ふたり)の足跡(あしあと)だけが影(かげ)をつけている。なのに意味もなく無言の俺(おれ)たちは、一言も言葉を交(か)わすことなくしばらく歩き続けていた。


「あの……」

「ええと……」


 お互(たが)いが同じタイミングで話しかけ、同時に「ぷっ」と吹(ふ)き出(だ)してしまう。俺(おれ)はどうしてこんな簡単(かんたん)なことを躊躇(ちゅうちょ)していたんだと思い直し、「ごめんなさい」と謝(あやま)った。


「なんの謝罪でしょうか~?」


「なんだかずっと変な感じだったから。どう声をかけていいのかわからなくて」


「それはお互(たが)いさま。私(わたし)もトアになんて声をかけていいか困ってたし」


「ごめん」


「だからどうして謝(あやま)るのよ。トアは何も悪いことしてないし、私(わたし)もポンチョだって悪いことしてないよ。だからこうなったのはお互(たが)いさま。誰(だれ)も謝(あやま)る必要なんかないんだから」


 とは言ったものの、少々面倒(めんどう)なことになってしまったことは否(いな)めない。十中八九、南の国による支援(しえん)は期待できないだろう。下手(へた)をすれば相手方が公国よりも酷(ひど)い状態であることが予測され、むしろ状況(じょうきょう)が悪化する可能性すら孕(はら)んでいる。


 そうなれば、必然的にマイルネの町は動かざるを得なくなる。強行軍で強引(ごういん)に雪道を進むか、もしくは海を割(わ)って他国へ救助を申し出るか。それとも軍備に頼(たよ)って南へ進軍するか、もしくは全(すべ)てを諦(あきら)め春を待つのか。どちらにしても、多くの犠牲(ぎせい)が生じることは否定(ひてい)できそうもない。まず間違(まちが)いなく、多数の死者が出るだろう。


「ホントのところを言うと、私(わたし)は町のみんなを助けてあげたい。でもそれは私(わたし)個人の意見であって、村のみんなやトアの考えていることとは違(ちが)うんだよね。何よりこの雪がいつまで続くかわからないし、私(わたし)たち自身のことも考えなきゃいけない。……だけど」


「わかってる、それでもマーロンさんは彼(かれ)らを助けたいんだよね」


 町を出る直前、彼女(かのじょ)の提案により、俺(おれ)たちは町外れにある貧民街(ひんみんがい)に立ち寄っていた。そこでは冬の寒さを避(さ)け、かろうじて生(い)き延(の)びている人々の姿(すがた)があった。しかし全(すべ)ての人は窶(やつ)れて痩(や)せ細(ほそ)り、とてもこの冬を越(こ)えられそうになく、すぐにでも手を打たなければならない状況(じょうきょう)下にあった。


 頷(うなず)く彼女(かのじょ)の顔を見つめながら、俺(おれ)は気分を変えるため頭上のポンチョを彼女(かのじょ)の頭に乗せ、さらに二人(ふたり)を抱(かか)え上げた。そして周囲の視線(しせん)を確認(かくにん)してから「急ごうか」と高く飛び上がった。


「心配事はなくならないけど、まずは一つずつやるべきことをやっていこう。本日最初のお仕事は、ア(・)イ(・)ツ(・)ら(・)と合流し、急いで村に戻(もど)ること、でしょ?」


 分厚い雲に分け入った俺(おれ)たちは、そこでしばらく身を隠(かく)し、それから約束の場所である森の入口付近に着地した。彼(かれ)らとて、俺(おれ)たちと合流するまで誰(だれ)かに狩(か)られるわけにはいかず、狡猾(こうかつ)に身を隠(かく)しているはずだ。何より不用意に町に近付けば、周囲を警護(けいご)しているトゲトゲさんにやられてしまいかねない。


 なんて心配していた俺(おれ)の予想を裏切(うらぎ)るかたちで、着地するなり凄(すご)い勢いで接近してくる者たちの影(かげ)が。まるで警戒(けいかい)心なく集合したウルフたちは、俺(おれ)が何を言うでもないのに美しく二列に整列し、さっさとこちらの指示を待っているじゃないか。いや、どれだけ従順(じゅうじゅん)なんだよ!


「お待ちしておりましたハク殿(どの)。我々(われわれ)、ハク殿(どの)の言いつけどおり、南の平原で待機し、今朝方(けさがた)急ぎこちらへ駆(か)けつけ申した。して、ハク殿(どの)の村は何処(どこ)に? 楽しみですなぁ、ワクワクが止まりませぬぞ!」


「ストップ、ひとまず挨拶(あいさつ)はそこまでにしよう。悪いけど、少し急ぎでやらなきゃならないことができたんだ。悪いけど、あまりゆっくりしていられないんだ」


「ほう。それはもしかすると、この天候が関係しているのでは?」


「だね。……って、そういえばシルシル、どうしてキミは人の言葉を喋(しゃべ)ってるの?」


「昨晩(さくばん)のうちにマスターしておきました。我(われ)ら一部の上位種は、人族で言うところのスキルが扱(あつか)えるため、昨夜のうちに人族の言語を習得しておいたのです」


「そ、それはどうも……」


「ではお急ぎとのことですし、如何(いかが)でしょう。御三方(おさんかた)を我(われ)らの背(せ)に乗せ、村までお運びしようと思うのですが」


「え、いや、でもね……。まだ皆(みな)さんはお客さんであってね」


「そのようなこと、気にするまでもありません。我(われ)ら、既(すで)に貴方(あなた)様に忠誠(ちゅうせい)を誓(ちか)っておりますゆえ、たとえ村に置けぬと言われたとて、勝手にこの森で生(い)き抜(ぬ)いていく所存(しょぞん)でおるところ。どうかお気になさらず」


 サラッと凄(すご)いこと言った気がするが、そこまで言うのなら仕方ない!


 恐縮(きょうしゅく)しながら背中(せなか)に腰掛(こしか)けるとすぐに、シルシルは遠吠(とうぼ)えで仲間たちに工程を示してみせる。森にウルフの声色(こわいろ)が響(ひび)き、それぞれがそれぞれの視線(しせん)を確認(かくにん)し終えると、一斉(いっせい)に雪道を駆(か)け始(はじ)めた。


「うわっ、速い、速いよ!?」


 自力で木々の上を走るときとは別の臨場感(りんじょうかん)があり、俺(おれ)とマーロンさんから思わず声が漏(も)れてしまう。頬(ほお)を刺(さ)す冷たい風の感覚と、石礫(いしつぶて)のように頭に当たる雪の感覚がたまらず、ポンチョが喜びの遠吠(とうぼ)えを上げた。するとそれに釣(つ)られ、後ろを走るウルフたちも、また同じように声を上げるのだった。


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