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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

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第082話 二週間の猶予


 どうやらつまみ食いするために隠(かく)していたのだろう。いつか俺(おれ)が焼いてやった『焼きイモ』を取り出したポンチョは、丁寧(ていねい)に小さくちぎって口に放(ほう)り込(こ)んだ。「おいちぃ♪」と天使のような笑顔(えがお)をこぼしながら喜ぶ様は、これはもう、ある意味暴力である。


「お、おい坊主(ぼうず)。それってあんときに食わせてくれた例のコリツノイモだよな? まだ残ってたのか!?」


 まったくウチのモコモコさんめ。

 余計なものを見せてんじゃないよ!!

 しかし残念ながら子供(こども)の発言に封(ふう)をするのは難(むずか)しいようで……


「おイモ、まだいっぱいある! ポンチョ、いつもいっぱいいっぱい食べてる!!」


 いやいや、胸(むね)張って何を仰(おっしゃ)っているんですか。

 しかもなんかリュックの中からいっぱい出てくるし!


 以前からそうだったが、ポンチョはなんでもリュックの中に隠(かく)しておく癖(くせ)があり、これもそのひとつだろう。食べ残したイモの塊(かたまり)を何個も出しては、嬉(うれ)しそうに食卓(しょくたく)に並(なら)べている。俺(おれ)とマーロンさんは、「はふぅ……」と肩(かた)を落としているが、反対にテーブルとローリエさんは目の色を変えている。もう嫌(いや)な予感しかしないんですけど!?


「その……、まさかとは思うんだが、念のため聞いていいか。お前らの村には、まだそれなりに食料が残っていたりするのか? ……いや、言いたくなければ言わなくてもいい。俺(おれ)の口からそれ以上は聞けねぇ。……けどな」


 二人(ふたり)のノドがゴクリと音を立てる。


 あの味を覚えているからだろうか。

 その目線はポンチョが嬉(うれ)しそうに並(なら)べているおイモさんに釘付(くぎづ)けだ!


 美味(うま)そうな匂(にお)いを漂(ただよ)わせ(※ポンチョのリュックは温度もそのまま保存(ほぞん)してくれるよ!)、嬉(うれ)しそうにモチモチ口を動かしている可愛(かわい)い珍獣(ちんじゅう)さんに、人々が目を奪(うば)われないわけがない。吸(す)い寄(よ)せられるように店内の視(し)線を引っ張ってしまうポンチョの魅力(みりょく)にやられ、全員がこちらに注目してしまっている。


 しかしここで下手(へた)なことを言うことはできない。俺(おれ)が余計なことを口走れば、途端(とたん)に村が窮地(きゅうち)に陥(おちい)ることだってあり得る。何より100人足らずの小さな村ではあるが、彼(かれ)らは俺(おれ)のことを村長と慕(した)ってくれる気の良い人たちだ。彼(かれ)らのことを第一に考えず、俺(おれ)の一存(いちぞん)で勝手なことを約束するわけにはいかない。


「悪いけど、簡単(かんたん)にその返事をすることはできないです。少なくともまだ可能性がある以上、ウチがそれをするべきじゃない」


 何よりも、俺(おれ)自身がこの国の内政に関(かか)わることはできるだけ避(さ)けたい思っている。食料の供給(きょうきゅう)となれば、それはもう国との大きな繋(つな)がりを持つことを意味してしまう。もし俺(おれ)がこの国の先代公爵(こうしゃく)を葬(ほうむ)った闇(やみ)の存在(そんざい)だと知れたとき、それこそ俺(おれ)だけでなく、村人たちにも危害(きがい)が及(およ)ぶことになる。


 しかしそんな俺(おれ)の思惑(おもわく)など、頭上のモコモコさんが考えてくれるわけもなく。短い足二本で堂々と立ち上がったポンチョは、その場の全員に宣言(せんげん)するよう、腰(こし)に手を当てて言った。


「ポンチョ、まだいっぱいおイモ持ってる! みんな、おなかいっぱい!」


 子供(こども)の戯言(ざれごと)にも関(かか)わらず、店にいた全員がドッと沸(わ)いた。それに気を良くしたポンチョの鼻も、これまたズンズン伸(の)びている。これはマズい。ウチのモコモコさんが完全に調子に乗ってるぞ!


「ポンチョさんや、あんまり勝手なことを言っちゃいけませんよ。ほらほら、人の頭の上で胸(むね)張ってる場合じゃございませんって。ちゃんと皆(みな)さんに謝(あやま)りましょうね、そんなものありませんよ~って」


 抱(だ)きかかえて言い聞かすも、本人には悪気がないので強くも言えない。しかし無駄(むだ)にぶち上がってしまった人々のテンションと注目をさばくには、これしか方法がないわけで……。


 しかしその時、これまでずっと黙(だま)っていたマーロンさんが俺(おれ)の手元からポンチョを奪(うば)って抱(だ)きかかえた。「ホント、ポンチョのいうとおりだね」と笑いかけた彼女(かのじょ)は、俺(おれ)の目を真(ま)っ直(す)ぐ見つめながら、「やっぱりダメかな?」と聞いてきた。


「ダメもなにも、それをこんな所で決めるべきじゃないよ。何よりそんな無責任なことを言うべきじゃないし、村のことを第一に考えなきゃ。……そもそも問題はこの雪だよ。マーロンさんだって、この状況(じょうきょう)がどれだけ難(むずか)しいかわかってるんでしょ?」


 シュンとしてしまうマーロンさん。

 彼女(かのじょ)の考えていることはもちろんわかるけど、それでも僕(ぼく)らの一存(いちぞん)で勝手に決められる問題じゃない。それでも……


「二週間、……二週間その質問の返事を待ってもらえませんか。俺(おれ)たちも、町の人たちを見殺しにしたいわけじゃない。でもそれより優先(ゆうせん)しなきゃならない人たちがいる。そこはわかってください」


 テーブルとローリエさんが同時に頷(うなず)く。

 冷静さを取(と)り戻(もど)した他(ほか)の客たちも、ようやくそれぞれの話題へと戻(もど)り、場が落ち着いた。口のまわりをべっとり汚(よご)してご満悦(まんえつ)なポンチョは、充分(じゅうぶん)満足したのか、またオネムでくぅくぅ寝息(ねいき)を立て始めた。……くぅ、勝手なモコモコさんですこと!


「返事を待つも何も、そんなの俺(おれ)らがとやかく言えることじゃねぇさ。何より今は南への間者を急ぐ方が先決だ。アンタらが回答を決めるのは、それからだって遅(おそ)くはない」


 残っていた酒をぐいと飲(の)み干(ほ)し、テーブルが呟(つぶや)いた。ローリエさんはポンチョの出したイモをリュックの中に片(かた)しながら、「でもまた食べたかったなぁ」と残念そうに言った。


 そうして尻(しり)すぼみでお開きになってしまった宴会(えんかい)が済(す)み、俺(おれ)たちは人気のない宿へと戻(もど)り眠(ねむ)りについた。願わくば、二週間後に全(すべ)てが好転していることを祈(いの)りながら、夜は更(ふ)けていくのだった――


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