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第008話 初仕事


「それがいいかと思います。ですが一点ご注意をいただきたくて、近頃Gランククエストの受注場所である東の森の入り口付近で、高ランクモンスターが散見されているんです。もし受注なさる場合は、十分準備していただき、もしもの場合に備えて実施してくださいね♪」


 手を振るローリエさんに見送られ、俺たちはさっそくクエスト掲示板で受けられそうなクエストを確認した。しかし駆け出し冒険者を対象としたクエストのため、薬草の採集や、超低ランクモンスターの討伐といった初歩の初歩、かつ御給金の少ないものしか選択肢はない。微妙だ……。


「ト~ア、お仕事する?」


「そりゃするさ。ところでポンチョさんはどんなお仕事が好きですか?」


「ポンチョご飯が好きー!」


「残念、ご飯食べてお金がもらえる仕事なんて存在しません。仕事は体を動かしてなんぼですよ!」と腕まくりして力こぶをドンッ!


「え~、ポンチョ、ご飯食べて寝るのが好き~(ショボーン)⤵⤵⤵」


 ガックリと肩を落とすモコモコさん。

 そんな露骨に凹むなよ。

 そもそも働くの俺なんですけど……。


 俺は掲示板の中から一番簡単そうな薬草採取のクエストを選択し、さっそく受注してみる。「頑張って!」と応援してくれたローリエさん。きっと良い人だ!


「さ~て、めでたく初クエストの受注ができたわけですが……。ポンチョさんや、まだお昼前だというのに、もうオネムですか?」


 退屈して眠くなったのか、目を擦っているポンチョを頭に乗せた俺は、仕方なく一人寂しく初クエストへと出発する。


 薬草の採取場所は、マイルネの町から東に出たところにある、通称『モリスの森』と呼ばれる大森林の入口となっていた。俺は持参したクエスト用紙を確認しながら、薬草分布図に記述のある地点を目指して歩いた。


「なんだよ、地図で見ると近いのに、結構遠いじゃないか。たかだか二束三文の薬草取るためにこれだけ歩かされるとは……。やはり庶民の生活とは辛く厳しいものよのぅ」


 ここにきて表社会を歩んでこなかったツケが出てるなぁと呆れながら、反面こんな当たり前の生活ができていることに自然と笑みが浮かんでしまう。天気も良いし、やっぱり自由って最高だな!


「だけど喜んでいるばかりじゃ始まらん。分布域を見ると、およそこの辺りのはずなんだが……なんてわざとらしく言ってみるが、本当はこんな地図など不要なんですよね。なにせ俺の固有スキル『調合師(コンパウンダー)』は、アイテムのスペシャリストだからね。鑑定スキルは既にカンスト済みなのだよ!」


 早い話が、スキルを使用して身の回りの物を一瞥するだけで、伝説級の代物でもないかぎり簡単に判別できてしまうってこと。なんならその辺に生えてる木々だって、薬草か雑草か、即座に判定が可能だ。


「ギルド側も初心者クエストを通じて冒険者のやる気や才能を見てるだろうからな。下手に町の近くの薬草など持ち帰った日には、余計な疑惑をかけられかねん。こんなときこそ手を抜かず、指定されたとおり、しっかりと仕事をすべし!」


 人さし指を立て、自分に言い聞かせるように呟いた俺は、それではお仕事を開始します!と自分でホイッスルを吹いた。そしてぐーぐー寝息を立てているポンチョを起こさぬように、さっさと指定された薬草の採取を終えたのだった。



「しかしせっかくここまできたのだから、もう少し金目のものも手に入れておきたい……。何かないかな?」


 ですが場所が場所なだけに、そうそう都合よく良いものは落ちていない。すると結論はどうなるか。答えは当然、「もっと森の奥へと進んでみましょう」となる。


 俺はついでに拝借した森の案内図に目を通しながら、この先に分布している植物の種類を確認した。しかしそこに書かれたモノを下手に納品などした日には、ローリエさんに妙な疑いをかけられかねない。となると、お金の作り方に関しては少々考えなければならないな。


「そんなとき必要になるものはなんでしょうか? もちろん我が固有スキル、『調合師(コンパウンダー)』の出番でございますね♪」


 勝手に森の奥へ奥へと踏み入った俺は、さっさと必要な植物の群生地を発見し、必要な種類のアイテムを必要なだけ採取し、準備を整える。そして最後に "あるアイテム" を求め、それが群生している洞窟に入った。


「俺の勘が正しければ、このあたりに()()()がいるはずだが……、おっ、いたいた」


 外界と遮断された洞窟の奥。そこでギラギラ目を光らせる影がゆらりと動く。いわゆるスイングバット、コウモリ型モンスターの低級種だ。


「合成にコイツらの牙から取れる溶解液が必要なんだよね。悪いけど少しだけ狩らせてもらうよっと!」


 襲いかかってくるモンスターの攻撃を音もなく避けた俺は、バットの首元だけをピンポイントに斬り裂き、器用に頭だけキャッチする。見た目は文字通りグロテスクだが、子供時代の忌まわしき特訓の風景を思い出すより幾らかマシだ。


 数分で10体のバットを狩り終えた俺は、またすぐ洞窟の入口に戻り、ダンジョン付近で屋根がありそうな場所を探した。洞窟を壁伝いに数分歩いた場所に、以前誰かが使用したキャンプの跡地を見つけ、これはラッキーと使わせていただくことにした。


「さてさて、早いとこ済ませないと夜になっちまうよ。まずはウチの坊っちゃんを丁重に寝かせつつ、火を用意して、それからアイテムを煮出すために鍋の準備だ!」


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