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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

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第078話 交渉



   ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 深々と降(ふ)り続く雪は未(いま)だ止(や)むことなく、ただの一色に染(そ)まり切った地面を延々(えんえん)と濡(ぬ)らし続(つづ)けている。これまで微(かす)かに届(とど)いていた陽(ひ)の光すら奪(うば)い去っていった分厚い雲たちは、空中に広がっていたはずの星たちすらも覗(のぞ)かせてはくれない。


 夜になり、家々に微(かす)かな光が灯(とも)った頃(ころ)、俺(おれ)たちは音もなくマイルネの町へと戻(もど)り、人影(ひとかげ)のなくなったギルドの戸を叩(たた)いた。仕事を終えて帰宅(きたく)する直前だったローリエさんを呼(よ)び止(と)めた俺(おれ)たちは、ギルドマスターであるテーブルと、その仲介人(ちゅうかいにん)としてローリエさんに〝ある依頼(いらい)〟を出した。


「お二人(ふたり)以外のどなたにも知られぬ場所で、お二人(ふたり)に会っていただきたい方がいます。可能ならば、今すぐにでも」


 マーロンさんの提案に頷(うなず)いたテーブルは、すぐにギルドの部屋(へや)を用意すると提案してくれた。しかし俺(おれ)たちは、できれば町の外がいいと彼(かれ)の提案を断り、南門から出た先に広がっている人影(ひとかげ)のない森の一角に彼(かれ)らを呼(よ)び出(だ)した。


「おいおい、一体なんの真似(まね)だ。わざわざこんな場所に呼(よ)び出(だ)すなんてよ」


 不測の事態の連続で残業続きだと欠伸(あくび)したローリエさんは、早く帰って子供(こども)の顔が見たいわと緊張感(きんちょうかん)なくノビをしている。しかし次第(しだい)に高まっていく妙(みょう)な雰囲気(ふんいき)を感じ取ったのか、テーブルが周囲と隔離(かくり)された森とギリギリの境目で足を止め、「まさか、罠(わな)じゃあるまいな?」と質問した。


「罠(わな)などありません。しかし今回ばかりは、誰(だれ)にも見られるわけにいきませんので」


 マーロンさんの言葉を疑(うたが)い、テーブルは周囲に結界などが張られていないかを慎重(しんちょう)に確認(かくにん)し、念には念をと連絡(れんらく)用の時限アイテム(※数時間内に解除(かいじょ)しなければギルドに連絡(れんらく)が届(とど)く魔道(まどう)具)を森の外に設置した。


「では、準備はよろしいですか?」


「……ああ。それで重要な案件ってのはなんなんだ?」


 マーロンさんが俺(おれ)と視線(しせん)を合わせた。

 頷(うなず)いた俺(おれ)は、ふぅと息を吐(は)いてから、指先をパチンと鳴らした。すると僅(わず)かに離(はな)れた場所で結界が弾(はじ)け、突如(とつじょ)大きな魔力(まりょく)が姿(すがた)を現し、テーブルが俺(おれ)たちと距離(きょり)を取った。


「まさか離(はな)れた場所に結界を張っていやがったとは。それにしても、なんだこの巨大(きょだい)な魔力(まりょく)は……。ついに尻尾(しっぽ)を出しやがったか!?」


「落ち着いてください。先程(さきほど)も言いましたが、私(わたし)たちは皆(みな)さんと敵対する意思など毛頭ありません。……会っていただきたい方。それが、彼(かれ)です」


 森の奥(おく)からヒタヒタと足音を鳴らし、俺(おれ)たちの元へと歩みを進めたその巨大(きょだい)生物は、グルルと腹(はら)の底まで響(ひび)く呼吸(こきゅう)を森中に撒(ま)き散(ち)らしながら、微(かす)かに差す月明かりに瞳(ひとみ)を輝(かがや)かせた。


 そのあまりに場違(ばちが)いな生物の登場に、絶句して俺(おれ)の腕(うで)を掴(つか)んだローリエさんは、「あ、あわわわ!」と言葉が出てこず、口から泡(あわ)を吹(ふ)いてひっくり返ってしまった。


「ちっ、まさかシルバーグロウウルフとは想像もしてなかったぜ。俺(おれ)ひとりでどうにかなるか!?」


 両手武器を構えて身を屈(かが)めたテーブルに「お待ちください」と前置きしたマーロンさんは、シルシルに近寄ると、彼(かれ)の鼻面(はなづら)をそっと撫(な)でてみせた。そして「敵対するつもりはないと言ったはずです」と改めて忠告(ちゅうこく)した。


「敵対心がないと言っても、そいつは超(ちょう)が付く凶悪(きょうあく)な魔物(まもの)だ。突然(とつぜん)襲(おそ)いかかってきてもなんら不思議はねぇ。悪いがこのままでいさせてもらうぜ」


「……いいでしょう。ですがこちらに攻撃(こうげき)の意思はございません。私(わたし)たちは、マイルネのギルドと、彼(かれ)らとの対話をお願いするために、この場を用意していただいたのですから」


 俺(おれ)はひっくり返って気絶しているローリエさんの頬(ほお)をポンポンと叩(たた)いて起こし、頭の上で眠(ねむ)そうにしていたポンチョを彼女(かのじょ)に抱(だ)かせた。


「対話だと? 俺(おれ)たちギルドが、そいつら魔物(まもの)と何を話せってんだ」


「本来ならば明日(あす)の夜、彼(かれ)らのもとへ赴(おもむ)く予定となっていましたが、僭越(せんえつ)ながら少しばかり先行し、彼(かれ)らと話を付けて参りました。彼(かれ)らに詳(くわ)しく話を聞いたところ、この長雪で彼(かれ)らの住む南の森も大きな打撃(だげき)を受け、必要な食料を確保できないでおり、仕方なく森を出て南の平原へやってきたのだと。しかし食料はなく、やむを得ず通りかかる冒険者(ぼうけんしゃ)たちを襲(おそ)い、場当たり的に過ごすしか方法がなかったようです」


「なんだと? ……しかし、だったら俺(おれ)らにも手を出す権利(けんり)があるってことだ。そうだな?」


 シルシルとテーブルの視線(しせん)がぶつかり、途端(とたん)に緊張感(きんちょうかん)を帯び始める。しかし俺(おれ)は素知らぬふりを決(き)め込(こ)んで両者の間に割(わ)って入り、わざとらしく口笛吹(ふ)き吹(ふ)き誤魔化(ごまか)し、マーロンさんに続きを促(うなが)した。


「確かにそうかもしれない。だからここで、一つ提案をさせてもらいたい。この町から南へと抜(ぬ)ける平原のルート、彼(かれ)らには今後ここを通る冒険者(ぼうけんしゃ)を襲(おそ)わないという条件付きで、これまでのことを不問としていただくことはできないだろうか。彼(かれ)らは今後、ギルドに関(かか)わる冒険者(ぼうけんしゃ)たちを襲(おそ)わない。それで手打ちにしていただくことはできないだろうか?」


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