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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

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第075話 対話


「ちょっとトア、本当に大丈夫(だいじょうぶ)なの!? こんな吹雪(ふぶき)の中でウルフに襲(おそ)われたら、私(わたし)たちひとたまりもないよ!」


「確かに大変だけど、それは向こうも条件は同じですからねぇ。そんなことよりマーロンさん、胸元(むなもと)でぬくぬくしていらっしゃるわがままなモコモコさんの相手、ちゃ~んとそちらでお願いしますよ~」


 村から出たときと同じく抱(かか)えた彼女(かのじょ)の胸元(むなもと)からちょこんと顔を出したポンチョが、赤くなった鼻をスンスンさせ、ご機嫌(きげん)に周囲を窺(うかが)っております。しかし、ウチのモコモコさんは飽(あ)きるのが本当に早いですから! 急いで仕事を終わらせないと、また駄々(だだ)をこねて喚(わめ)き散らすに決まっています。早いところ面倒(めんどう)事を解決してしまわなければ!


 俺(おれ)は遠距離(えんきょり)にまで魔力(まりょく)感知を張(は)り巡(めぐ)らせ、目と鼻の先も見えないような視覚(しかく)を諦(あきら)めて、完全に目を閉(と)じた。しかしたったそれだけで、途端(とたん)に見えてくるものがある。こればかりは殺し屋家業で培(つちか)ってきた場数と経験が物を言うらしい。全(すべ)ての障害物(しょうがいぶつ)を避(さ)けて目的地を目指す程度は造作もなく、俺(おれ)は完全な闇(やみ)の中を一直線に平原へ向かって駆(か)け抜(ぬ)けた。


 小一時間走ったところで、張(は)り巡(めぐ)らせていた感知の輪に何かが引っかかった。ここから数キロ進んだ先の窪地(くぼち)になった谷に、複数の生き物が身を寄せている。俺(おれ)は抱(かか)えた二人(ふたり)に声を出さないように注意してから、まずは敵の様子を窺(うかが)いましょうと提案した。


「窺(うかが)ってみるって、どうやって?」


「風下から隠密(ヒドゥン)と無色化(スケルトン)を使った状態で接近します。なぁに、どれだけ奴(やつ)らの鼻が良くても、これだけ視界(しかい)が悪いとアイツらだって簡単(かんたん)には動けませんから。大丈夫(だいじょうぶ)です」


「またそんな簡単(かんたん)に言うんだから! もし見つかったら、私(わたし)たち八(や)つ裂(ざ)きにされちゃうんだからね!」


「そうなったら残るのはポンチョだけになっちゃいますね♪」と冗談(じょうだん)を言いつつ、俺(おれ)は隠密(ヒドゥン)と無色化(スケルトン)のスキルを使い、二人(ふたり)ともども完全に姿(すがた)を消し、そのまま足早に相手との距離(きょり)を詰(つ)めていく。ずっと気が気でないマーロンさんの口に手を当てた俺(おれ)は、「しー」と耳元で呟(つぶや)きながら、窪地(くぼち)になっている谷へと接近する。


 どうやら相手の数は10~20といったところか。穴底(あなぞこ)の空洞(くうどう)になっている場所で身を休めているらしい。やはり魔物(まもの)にとってもこの天候は相当に堪(こた)えているらしく、数分様子を窺(うかが)ってみるも、一向に動く気配はみられなかった。


「う~ん、どうしましょうね。もう正面から行っちゃいます?」


「は? 正面って、そんなことしたら相手の格好の餌食(えじき)だよ」


「まぁどうにかなりますって。それじゃあ行きましょー」


 と彼女(かのじょ)の同意を得ぬまま傾斜(けいしゃ)を滑(すべ)り降(お)りた俺(おれ)たちは、そのまま正面から乗(の)り込(こ)んでいく。しかし何者かの接近に気付いたのか、魔力(まりょく)の幾(いく)つかが俺(おれ)たちを迎(むか)え撃(う)つため、空洞(くうどう)の入口に陣取(じんど)って一列に整列した。


「ちょ、ちょっとトア!? 無茶よ、止まって~!!?」


「大丈夫(だいじょうぶ)大丈夫(だいじょうぶ)。じゃあこのまま突(つ)っ切(き)りますよー!」


 雪崩(なだれ)のように全身に雪をまとって滑(すべ)り降(お)りる俺(おれ)たちは、薄暗(うすぐら)い谷底の入口で敵を向かい撃(う)つべく並(なら)んでいたグロウウルフの姿(すがた)を捉(とら)えた。ウルフたちは迫(せま)りくる何者かを警戒(けいかい)しているものの、敵の正体がわからず困惑(こんわく)しているのか、吹(ふ)き上(あ)がる雪に全(すべ)ての情報を遮断(しゃだん)され、どうにもならず慌(あわ)てふためいているご様子。とくれば――


「よーし、中央突破(とっぱ)だー(棒(ぼう))」


 並(なら)んだ四体の袖(そで)を一気に、かつ一瞬(いっしゅん)で通過する。

 ウルフたちは俺(おれ)たちが通り過ぎたことにすら気付けず、雪崩(なだれ)のように突(つ)っ込(こ)んでくる雪の塊(かたまり)に気を取られ、ワンワンと犬のように地団駄(じだんだ)を踏(ふ)むばかりだ!


「す、凄(すご)い。本当に気付かれてない……」


「だから大丈夫(だいじょうぶ)って言ったでしょ。ほら次がくるよ、気合い入れて!」


 第二班(はん)として穴(あな)の中から出てきたウルフたちが、敵の襲来(しゅうらい)を察知して遠吠(とうぼ)えを上げた。しかし風のように流れてくる俺(おれ)たちの姿(すがた)を捉(とら)えることができないのか、空気のように素通(すどお)りを許してしまっている。俺(おれ)たちは穴蔵(あなぐら)全体を使ってスノーボードを楽しむように、きりもみ回転で上下左右に円を描(えが)きながら、一気に穴(あな)の最奥(さいおう)を目指して進んだ。


「ちょっと、でもこのままだと群れの主(あるじ)のところまで一直線だよ!? そんなことして、私(わたし)たちどうなっちゃうの!?」


「もう忘(わす)れちゃったのかな? 前にも同じようなことがあったと思うんだけど」


 足元を氷の魔力(まりょく)でコーティングした俺(おれ)は、地面だけでなく穴(あな)の側面全(すべ)てを超(ちょう)スピードで滑(すべ)りながら突(つ)き進(すす)む。そして穴(あな)の最奥(さいおう)、感知した中で最も大きな魔力(まりょく)を持つ一体の袖(そで)で、ゆったりと着地した。


 そこには他(ほか)のウルフとは比べ物にならないほど雄大(ゆうだい)で、銀色に輝(かがや)く美しいウルフが横たわっていた。その大きさは他(ほか)のウルフたちより一回りも二回りも大きく、顔だけでもマーロンさんの身体を上回るほどで、初見でこの迫力(はくりょく)に気圧(けお)されない者など存在(そんざい)しないほど、圧倒的(あっとうてき)な圧を放っている。


「う、嘘(うそ)でしょ、シルバーグロウウルフですって!? グロウウルフ種の上位亜種(あしゅ)で、Bランクパーティーですら全滅(ぜんめつ)することがあると言われるレベルの……、どうしてこんな魔物(まもの)が、こんなところに」


 マーロンさんの顔から血の気が引いていく。どうやら俺(おれ)たちの微(かす)かな気配を察知したのか、シルバーグロウウルフの視線(しせん)が俺(おれ)たちの姿(すがた)を目端(めはし)で追っている。が……、遅(おそ)い!


 俺(おれ)はさらにスピードを上げ、一気にウルフとの距離(きょり)を詰(つ)めた。そのあまりの速さに目を見開いたウルフは、俺(おれ)の指先がウルフの鼻面(はなづら)に触(ふ)れられる距離(きょり)に入るまで身動きひとつできぬまま、呼吸(こきゅう)すら忘(わす)れてこちらの動きに見入っていた。



「できれば抵抗(ていこう)はしないでほしい。俺(おれ)はアンタたちを傷付(きずつ)ける気もなければ、ここから追(お)い払(はら)うつもりもない。ただ対話をしたいんだ。どうか俺(おれ)たちの話を聞いてほしい」


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