↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第2章 ピルピル草栽培開始!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/441

第054話 一件落着


「でもなぜなんですか!? どうして私(わたし)の装置(そうち)を無視(むし)して行っちゃうのよ、なんで!?」


 羞恥心(しゅうちしん)から怒(いか)りに置(お)き換(か)わった感情に苛(さいな)まれ、リッケさんが地面を叩(たた)く。俺(おれ)もいまいち事態が飲(の)み込(こ)めず、うーむと頭を悩(なや)ませるしかない。


 見たところ、装置(そうち)に異常(いじょう)はなさそうだ。

 しっかり温度管理や魔力(まりょく)の管理もされているし、蟻(あり)たちが好むという環境(かんきょう)も納得(なっとく)できる形状をしている。彼女(かのじょ)の言う条件が正しいのならば、蟻(あり)たちが飛(と)び込(こ)んでも良さそうだけど……


「リッケさん、さっき言ってましたけど、これは蟻(あり)たちが好む環境(かんきょう)で、実験でも蟻(あり)たちがここに入ってきたんですよね?」


「間違(まちが)いなく入ってきましたよ! だからこそ、絶対の自信をもってこれを使ったのです!」


「だったらどうしてだろう。蟻(あり)たちが進んで入ってくる環境(かんきょう)なのに、彼(かれ)らはこれを避(さ)けるように走り去った。……避(さ)けるように。…………避(さ)けるように?」


 なんだろう、どこか違和感(いわかん)が。

 俺(おれ)はこれまでに聞いた蟻(あり)の習性を頭の中で一つひとつ思い出しながら、実際に口に出してみる。


「薄暗(うすぐら)く狭(せま)い空間が好きで、カラッと渇(かわ)いたカッサカサの空間も好き。不規則に入り組んだ枝状の小部屋(こべや)が好きで、いつもは土の下に巣を作って暮(く)らしている。水が苦手で、天気の良い晴れた夜にしか現れず、餌(えさ)をとるため集団で移動を繰(く)り返(かえ)す。魔力(まりょく)を使って仲間たちと結合し、餌(えさ)を捕食(ほしょく)するために移動を続け、不規則に……。…………て、あれ?」


 俺(おれ)の疑問符(ぎもんふ)に、二人(ふたり)の視線(しせん)が集まった。

 頭の上で「ふにゅ~」と寝返(ねがえ)りを打つポンチョを抱(かか)えた俺(おれ)は、「ひとつ確認(かくにん)を」と指を立てた。


「さっきリッケさんは、蟻(あり)が装置(そうち)に入るのを確認(かくにん)したって言いましたよね。それはどうやって確認(かくにん)したんです?」


「どうって、前に捕(つか)まえた蟻(あり)たちを、この装置(そうち)の前に放して、それで……」


「それで?」


「え? それだけですけど……」


「それって、蟻(あり)玉の状態で試(ため)しました?」


「アリダマ……? ……アアア、ア゛ア゛!!」


 何かに気付いたリッケさんが頭を抱(かか)えてへたり込(こ)んだ。そしてガシガシ髪(かみ)を掻(か)きむしりながら、「アタシとしたことがー!!」と叫(さけ)んだ。

 いや、それよりね。ちゃんと前、隠(かく)してくださいね……。

 ホント、丸見えですから……


 気が狂(くる)ったように悲嘆(ひたん)している彼女(かのじょ)の様子が理解できず、マーロンさんが俺(おれ)の肩(かた)を叩(たた)いた。


「ねぇハク、どういうことなの?」


「ええとね、恐(おそ)らくだけど、蟻(あり)の行動原理の違(ちが)いかな」


「行動原理?」


「うん。蟻(あり)たちって、多分彼(かれ)らの状(・)態(・)によって選択(せんたく)する行動が違(ちが)ってるんだ。蟻(あり)が単体で行動するときは、きっとリッケさんが言うように、蟻(あり)が好む方向を選んで進むんだと思う。でも蟻(あり)玉になったときはどうだろうって?」


「蟻(あり)玉……? あっ!」


「そう、蟻(あり)玉になったとき、彼(かれ)らは自分の好きな方向には動けないんだよ。最終的には目標となる場所に到達(とうたつ)するけど、その場その場で進む方向は運任せ。しかも水を避(さ)けたりイレギュラーな条件もあるから、木で方向を限定したとしても、彼(かれ)らはそれを考慮(こうりょ)しないんじゃないかなって」


「どうして見逃(みのが)したー!!」と地面に額を打ち付けるリッケさん。俺(おれ)は「ははは…」と頬(ほお)を掻(か)き、「どうやら今回は引き分けだね」と二人(ふたり)を仲裁(ちゅうさい)した。


 シュンと肩(かた)を窄(すぼ)ませ、凹(へこ)んでいる様子のお二人(ふたり)。

 だけどね、こんなのは失敗の繰(く)り返(かえ)しなんだよ。

 トライアンドエラーの繰(く)り返(かえ)しでしか、成功の二文字は掴(つか)めない。世の中なんてそんなものですよ!


「それに、二人(ふたり)ともそこまで凹(へこ)む必要はないと思うよ。あとは俺(おれ)に任せてみない?」


 グッと力こぶをひとつ。

 でも「ブー」と口を尖(とが)らせて不機嫌(ふきげん)な二人(ふたり)。つれないなぁ。


 俺(おれ)は目を覚まして寝(ね)ぼけ眼(まなこ)を擦(こす)っていたポンチョの手を取り、「蟻(あり)さんを捕(つか)まえるぞー!」と掛(か)け声をかけた。寝(ね)ぼけながらも「お~」と答えたポンチョ。それでこそモコモコさんやで!


「じゃあ行こうか。蟻(あり)玉の位置は……、あっちか」


 ポンチョを頭、そして布に覆(おお)われた二人(ふたり)を担(かつ)いだ俺(おれ)は、自分が付けたマーカーの位置を確認(かくにん)しながら、蟻(あり)たちの行き先を予測して回(まわ)り込(こ)んでいく。確かに超(ちょう)スピードではあるものの、進む方向が無作為(むさくい)、かつ法則性がないため、単純(たんじゅん)に逃(に)げるという意味では効率が悪く、追いつくのにそれほど時間はかからなかった。これはこれで問題だなと一人(ひとり)呟(つぶや)いた俺(おれ)は、いよいよ蟻(あり)玉の姿(すがた)を視界(しかい)に捉(とら)えた。


「蟻(あり)たちの性質を考えると、多分こうするのが一番手っ取り早いんじゃないかな。ホ~レッ!」


 蟻(あり)玉の進行方向に水を点在させ、進む方向を限定させてやる。そして蟻(あり)玉が狙(ねら)いのポイントに入ったタイミングで……


「よっこいしょッ!」


 蟻(あり)玉が地面を跳(は)ねた瞬間(しゅんかん)を狙(ねら)いすまして、玉の周囲20メートルほどに薄(うす)い水の膜(まく)で作り出した四角い領域(りょういき)を用意し、蟻(あり)玉ごと覆(おお)い被(かぶ)してやる。中に閉(と)じ込(こ)められ、水を避(さ)けるように動いた蟻(あり)たちは、水から逃(に)げ惑(まど)うように宙(ちゅう)を漂(ただよ)い、最終的には四角い空間のちょうど真ん中に浮(う)いたまま静止した。


「え、あ、う、そ……?」


「彼(かれ)らは本能的に水から逃(に)げるように動くからね。だったら水で作った箱の中に閉(と)じ込(こ)めてやればいい。しかも少し大きめの箱に入れてやれば、わざわざ浮(う)いた状態をキープしてくれるオマケ付きだよ」


 蟻(あり)たちは地面の水にも触(ふ)れないように動くため、自然と浮(う)いた状態で動きをキープしている。二人(ふたり)を降(お)ろした俺(おれ)は、マーロンさんに網(あみ)を、そしてリッケさんには装置(そうち)を出してくれるようにお願いした。


「そ、それをどうするつもりなの?」


「簡単(かんたん)さ、ちょっと見ててよ」


 俺(おれ)はマーロンさんの網(あみ)を浮(う)いている蟻(あり)玉の上に被(かぶ)せ、その真下にリッケさんの装置(そうち)を置いた。そして地上からグッと網(あみ)を引き寄せながら、装置(そうち)の入り口にすぼめた網(あみ)の出口を置いてやる。すると少数に分離(ぶんり)した蟻(あり)たちが自(おの)ずと装置(そうち)の中に進み始め、数分もすると勝手に全(すべ)ての蟻(あり)が装置(そうち)の中へと収(おさ)まった。


「はい、これで一丁上がり。マーロンさんの網(あみ)と、リッケさんの装置(そうち)のおかげで、こうして見事、蟻(あり)さんたちを捕(つか)まえることができました。ハイ拍手(はくしゅ)!」


 ポンチョが嬉(うれ)しそうに手を叩(たた)いた。

 不服そうだった二人(ふたり)も、互(たが)いに互(たが)いを認(みと)め合(あ)いながら、同じように拍手(はくしゅ)し互(たが)いの健闘(けんとう)を称(たた)え合(あ)った。


 はぁ、なんだか余計に気を使ってドッと疲(つか)れた。

 だけどこれで受粉作業に必要なラストピースが揃(そろ)った、と考えて良いのかな……?


 どこか険悪だったムードが晴れ、無事村へと戻(もど)った俺(おれ)たちは、リッケさんが設(しつら)えた専用(せんよう)のゲージの中に蟻(あり)を入れ、ホクホク顔でベッドへ飛(と)び込(こ)むことになるのだが……


 俺(おれ)たちが疲(つか)れを癒(い)やすため眠(ねむ)りについたその近くでは、

 モゾモゾと蠢(うごめ)く何者かの影(かげ)が――




 そして翌朝(よくあさ)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。