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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
序章 解放と再スタート

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第004話 なんの因果か



    ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 (おれ)はこの世界の形を知らない。

 この20年間、外の世界のことを知りたいと思わなかったからだ。


 知識を入れたところで自由はなく、望んで他国へ出ることもできない。

 何より仕事のほとんどは潜入(せんにゅう)と暗殺だし、目的と概要(がいよう)だけ理解していれば、ほかの情報は無駄(むだ)にしかならなかった。よって余計な情報は自ら遮断(しゃだん)し、ただただ事務的に仕事をこなし、外敵を排除(はいじょ)することだけに集中した。無意味に外の世界を知る行為(こうい)焦燥(しょうそう)となる原因にしかならず、(おれ)は暗殺に必要のない情報を入れることを自ら(こば)んだ。


「……が、その結果がこのザマだ。もはや(おれ)は、(おれ)自身がどこにいるのか、どこへ行けばいいんだか、サッパリわからん!」


『可能な限り遠くへ』というキャッチフレーズのもと、(おれ)とポンチョは約二ヶ月の時間をかけて、ただ一心に東の地を目指して移動した。しかし目的地があるわけじゃないし、目当てになる国があるわけでもなく、さらには他国の情報を一つも持っていないので、どこを目指せば良いのかすらわからない。


「そんな(おり)にポンチョさんや。アンタ、さっきから()()(おれ)の足にバシバシヒットしてるわけですが、そこんとこ気付いてらっしゃいます?」


 お気に入りの木の枝を()(まわ)しながら歩いていたポンチョが(うれ)しそうに()(かえ)った。当然(おれ)の言葉を気にするわけもなく、「ト~ア、()っこ!」と悪びれもなく両手を挙げた。


「へいへい。ったく、どうしたもんかね。モンスターの肉や皮を売って手に入れた金もそろそろ底を()きそうだし、なんなら村や町もねぇし、そもそも食うもんもねぇし……。はてさて、自由ってのは、こんなに『ひもじい』もんだっけか?」


 などとぐだぐだ文句を言いながらポンチョを(かか)えて森を歩いていると、唐突(とうとつ)に開けた場所に行き当たり、遠く街道(かいどう)へと続く道が見えてくる。二人(ふたり)して「おおっ!」と声を上げ、小躍(こおど)りしながら固められた砂地(すなじ)の道を走り出した。


「いよいよ町がありそうな予感だな。ようやくちゃんとした飯にありつけそうだぞ!」


「めし、めしー! ポンチョお(なか)へったー!」


「どの国の、なんて町だか知んねぇけど、飯はこの世の正義って(だれ)か言ってたぜ。ポンチョさんや、スピード上げっから舌()むなよ~!」


 そうして整備された道を走った(おれ)たちは、小一時間進んだ先でピッタリと足を止め、「おぉー」と声を(そろ)えて目を見張った。


 広い広い草原地帯のど真ん中、そこにそびえ立つ巨大(きょだい)外壁(がいへき)を前に(ひたい)に手を当てた(おれ)とポンチョは、正門らしき列に(なら)んだ人々を指折り数えながら、ぐぅぅと鳴った(はら)()さえた。


「ト~ア、ポンチョ、ご飯⤵️(ショボ~ン)」


(はら)減りすぎて語彙力(ごいりょく)すっ飛ばしすぎだろ……。ちょっと待ってろって、どのみち入らなきゃ始まらねぇんだからさ」


 列に(なら)び、ルールを破ることなく入国する。たったこれだけのことだが、今までの(おれ)にしてみれば、あまりにも新鮮(しんせん)な作業だ。ここに(いた)るまでも身分証明の必要がない村や町に立ち寄ることはあったが、これだけ大きな国に入るのは初めてだった。


 考えてみれば、正面からまともに町に入ったことなどなかった。組織の手引きや身分を(かく)しての潜入(せんにゅう)(かべ)()()えて入国することもあれば、姿(すがた)を変えて(しの)()むのが当たり前。身分を明かして他国へ入ることなどあるはずもない。


「見た目もすっかりさっぱり変えてきたし、糞国(エルズマート)を出たって情報も完全に消してきた。(だれ)(おれ)が『常闇(とこやみ)殺戮(さつりく)者』だなんて思うことはないだろうが、それでも警戒(けいかい)だけは(おこた)らず」


 かつて暗殺者だった(ころ)(おれ)は、鼻まで(かく)れてしまう黒の長髪(ちょうはつ)に、漆黒(しっこく)()められたような(ひとみ)。全身を(おお)()くす黒の装具(そうぐ)に、さらに目深(まぶか)(こうむ)ったフードで完全に(やみ)と同化していた。さらには魔力(まりょく)骨格(こっかく)ごと矯正(きょうせい)し、175センチ中肉中背(ちゅうぜい)の現在より2サイズ小さな肉体をたもっていた。しかしこれからは本来のサイズ感に加え、美しく()える青色の(かみ)と、薄紫色(うすむらさきいろ)(ひとみ)を前面に()()すなどして、威風堂々(いふうどうどう)としたものだ!


 いつかの潜入(せんにゅう)時に個人的に偽造(ぎぞう)した身分証を引っさげて正々堂々と列に(なら)んだ(おれ)とポンチョは、順番がくるなり自信満々で守衛にそれを差し出した。しかし(いぶか)しみながら(おれ)たちを見つめる(かれ)の様子がどこか(みょう)で、思わず(おれ)は「何か問題でも?」と聞いた。


「いやね、随分(ずいぶん)(めずら)しい組み合わせだなと。そっちの獣人(じゅうじん)の身分証は?」


「ああ、こいつはずっと田舎(いなか)にこもってたもんで、身分証を持ってないんだ。新規で作ることは可能かい?」


「それは問題ないが。銅貨8(まい)な」


「8(まい)!? ちぃと高いな、もう少し安くなんないの」


「ならば入国はあきらめろ」


「ちぇ、はいはい(はら)いますよ、(はら)えばいいんでしょ」


 (おれ)(ふところ)から出したなけなしの金と、ポンチョの身分を適当に記入した魔力(まりょく)便箋(びんせん)手渡(てわた)した。「ヤブイヌ?」と首を(かたむ)けた守衛の反応が気になりはしたが、無事身分証を手に入れた(おれ)たちは、入国を許可されるに(いた)った。


「あ、そういえば聞いてなかった。なぁ守衛のおっちゃん、ここはなんて国の、なんて町なんだい?」


「ハァ? なんて国って、アンタらそんなことも知らずにきたのかい」


「はは、森を散々迷い歩いた挙げ句、偶然(ぐうぜん)見かけたもんで、ついでに物資調達を、ってなもんで……。それでなんて名前なの?」


「おっほん、ではよく聞きたまえよ。ここは東の大国として名高いコーレルブリッツ公国が首都、マイルネの都さ。(かべ)のあるここからは見えないが、町の北側に広がっているマイルネ(わん)は海運の拠点(きょてん)でもあるから、他国との交易も(さか)んでね。さらに町の東には広大な『モリスの森』が広がっていて、資源(しげん)も多く様々な産業が発展(はってん)している自慢(じまん)故郷(こきょう)さ。何より()(くに)の君主は、そんじょそこらの御人(おひと)とは(ちが)う。なんたって、ここはあの『ランヴィル公爵(こうしゃく)』率いる国なのだからね!」


 それはそれは自慢気(じまんげ)に語った守衛の男は、(むね)を張りながら堂々と鼻息を()く。しかし男の言う人物の名は(おれ)ですら聞き覚えがあり、(おれ)ですら思わず「なるほど」と(うなず)いていた。


「〝 知略深き不敗の(けん)君 〟として名高いランヴィル公爵(こうしゃく)殿(どの)御国(おくに)でしたか。それはそれは、(ぞん)()げなかったとはいえご無礼を」


 わかればよろしいと守衛がさらに(むね)を張る。しかしその反面、ハハハと苦笑いを()かべた(おれ)は、ポンチョの身分証を受け取り、さっさと話を切り上げた。


 じゃあねと手を()るポンチョに、にこやかに手を()り返してくれた守衛をやり過ごし、(おれ)たちはいよいよマイルネの町に入った。


 高い(へい)で囲われた敷地(しきち)の中は、全面レンガ張りなのか、角々しい建物が()(なら)ぶ美しい町並(まちな)みが広がっており、様々な人種が入り交じり、多くの人々が街道を行き(きた)していた。(うれ)しそうなポンチョが「早く早く」と(おれ)の手を引くが、(おれ)は少しばかり過去の記憶(きおく)(さいな)まれ、歩みのペースが落ちていた。


「まさかここがコーレルブリッツ公国の首都だとは……。なんの因果か、(おれ)が先代をぶっ殺しちまった国じゃねぇのよ」


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