↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
序章 解放と再スタート

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/441

第003話 新たな一歩



   ◇◆◇◆◇◆



 先人曰(いわ)く、そこは呪(のろ)われた都(まち)なのだという。

 ほかならぬ俺(おれ)もそうだと感じている。



 人を人と思わず、殺し、奪(うば)い、凌辱(りょうじょく)する。

 この世の所行(しょぎょう)とは思えぬような場面を、俺(おれ)自身数え切れぬほどこの目で見てきた。たとえそれを実行したのが俺(おれ)だったとしても、あえて言う。あそこは『地獄(じごく)の一丁目一番地』だったと。



 足りないものは奪(うば)えばいい。欲(ほ)しいものは奪(うば)え。何もかも奪(うば)え。

 エルズマート王の方針(ほうしん)はいつも単純(たんじゅん)明白だ。


 限界まで鍛(きた)え上げた兵と、厳選(げんせん)された最新式の魔道(まどう)具。加えて太古の技術として今なお残る大魔法(まほう)を駆使(くし)した軍事力。文字どおり軍備の幅(はば)は凄(すさ)まじく、他国にとっては脅威(きょうい)でしかない。ましてやそれが無法者国家となればなおさらだ。


 種族、環境(かんきょう)すらお構いなし。

 全(すべ)てを蹂躙(じゅうりん)して他国へ進軍する様は、まさに鬼畜(きちく)という言葉がよく似合う。殺戮(さつりく)と略奪(りゃくだつ)を生業(なりわい)とし、国土を広げてはまた奪(うば)う。踏(ふ)み荒(あ)らした後に残るものはなく、全(すべ)て吸(す)い付(つ)くされ、抜(ぬ)け殻(がら)になった塵(ごみ)だけが残された。


 さらに不幸は連鎖(れんさ)する。

 何よりも問題なのは、奪(うば)った側であるエルズマート国の民(たみ)が幸福でないことだ。

 他国から奪(うば)った富の多くは、王族と貴族(きぞく)、そして一部の商人だけが牛耳(ぎゅうじ)り、無関係の民(たみ)は飢(う)えて死んでいくばかりだった。「卓越(レジェンド)級」と称(しょう)される優(すぐ)れた能力を持つ者のみが優遇(ゆうぐう)され、新たな戦力として衛兵隊に入ることを許されたが、そうでない者たちは冷遇(れいぐう)され、まともに生活することすらできない。身元のない者は、俺(おれ)のように売られていくか、保証なく飢(う)えて死ぬか、命からがら他国へ流れていくしかない有り様だ。とまぁ、一旦(いったん)それはそれとして……




「ねぇねぇト~ア、ポンチョお腹(なか)へったー! ご飯まだ~?」


「おいおい、さっき食ったばっかだろ。どんな珍(ちん)プレーだ、このぷにぷに!」


「お腹(なか)へった、お腹(なか)へった、お腹(なか)へったー!」


「うるせぇ。わーったわーった、ひとまずコレでも食っとけ!」


 ひとかけら残っていた干(ほ)し肉(じし)を口へ放(ほう)り込(こ)み、よ~く噛(か)めよと指を立てる。

 嬉(うれ)しそうに噛(か)みしめている姿(すがた)は幸福な子供(こども)そのもので、俺(おれ)は「ふぅ」と息をつきながら地図と周囲の景色(けしき)とを見比べていた。


「ねぇねぇト~ア、ここどこ~?」


「それを確認(かくにん)してんだろ。ったく、ここはどこなんだ。この地図、本当にあってるんだろうな!?」


「あ、とりー! ねぇト~ア、とりー!」


「とりー、じゃねぇよ。ちゃんと獲物(えもの)がいたら知らせろっつったろ。俺(おれ)たちはこう見えて、食料なし、金なしの浮浪者(ポンコツ)なんだぞ。もう少し緊張感(きんちょうかん)持てよな!」


 なぜか嬉(うれ)しそうなポンチョを背負(せお)った俺(おれ)は、遠く羽ばたいていく鳥の背中(せなか)を追って飛び出した。獲物(えもの)の視覚(しかく)に入らぬように木々の隙間(すきま)を縫(ぬ)って真下まで接近し、そのまま姿(すがた)を消して跳(と)び上(あ)がり、真後ろから鳥の首を斬(き)り落とした。


「ったく、無駄(むだ)走りさせてくれやがって。こちとらまともに飯食ってねぇガス欠なんだぞ」


「ト~アすごーい! ポンチョもトリ見たーい!」


 背中(せなか)で暴れたポンチョが手を伸(の)ばし、俺(おれ)の顔にしがみついた。空中で目隠(めかく)し状態になった俺(おれ)たちは、そのまま森に落下して地面を転がった。


「いってぇな馬鹿野郎(ばかやろう)。空中で目隠(めかく)しする奴(やつ)がいるか!?」


「アハハハハ! トーア落っこちたー!」


「笑ってる場合か! ったくよぉ」


 そうだった、忘(わす)れてた。

 そういえば、まだ笑いながら転げ回っている『コイツ』のことを説明していなかった。


 コイツの名はポンチョ。

 それが本名なのか、それともアダ名なのかは誰(だれ)も知らない。


 肉親はおらず、俺(おれ)と同じ天涯孤独(てんがいこどく)の身だ。種族としては恐(おそ)らくヤブイヌ族の獣人(じゅうじん)で、黒と灰色(はいいろ)の長い毛に全身を覆(おお)われている。といっても見た目は5、60センチしかない子グマのぬいぐるみそのもので、ピョンとした短い耳、むにむにの短い手足、そしてつぶらな瞳(ひとみ)がチャームポイントだ。俺(おれ)が言うのもなんだが、さわり心地(ごこち)はモフモフだし、あまりにも可愛(かわい)らしい珍獣(ちんじゅう)である。


 本来ヤブイヌ族は、大人(おとな)になるにつれて灰色(はいいろ)の毛が濃(こ)い茶色のものへと抜(ぬ)け替(か)わり、柔(やわ)らかかった毛質も硬(かた)く刺(さ)す針(はり)のようになり、その表情も従来(じゅうらい)の獰猛(どうもう)な戦士へと移り変わっていく。が、ポンチョの場合はそれがない。


 というのも、コイツには一つ『大きな問題』があって……

 と、それはもう少しあとにしよう。それより今は、先にすることがあった。


 馬鹿笑(ばかわら)いしている珍獣(ちんじゅう)の尻尾(しっぽ)を掴(つか)んだ俺(おれ)は、それと同じ持ち方で捕(つか)まえた鳥をぶら下げながら、周囲の景色(けしき)を回し見た。


 そろそろ日が落ちる。

 今夜はここらで夜営にするとしよう。


「ポンチョ、これから寝床(ねどこ)を探(さが)して飯を作るぞ。お前も手伝(てつだ)え」


「え~、ポンチョ、食べて寝(ね)るだけがいい~!」


「働かざる者食うべからずだ。寝(ね)る場所の確保と薪(まき)集め、なにより雨がふせげそうな屋根があればベストだな」


 これまで見えていた星はかげり、雲が空を覆(おお)い尽(つ)くしていた。そろそろ降(ふ)ってくるぞとわざとらしく頭を隠(かく)した俺(おれ)は、ポンチョを置いてゆっくり走り出す。置き去りにされたと慌(あわ)てて追いかけてくるアイツの泣き顔を笑いながら、嘘(うそ)に決まってるだろと高く放り投げてやる。良いね、これでこそ対等だ!


「最高だなポンチョ、この世界は、最高だ!」


「ポンチョお腹(なか)へったー!」


「お前そればっかじゃねぇか。ほかに言うことないのかよ?」


「ハハハー! ポンチョ楽しー!」


 これでいい。これこそ普通(ふつう)の人生だ。

 当たり前に笑い、当たり前に泣き、当たり前に飯を食い、当たり前に寝(ね)る。


 そんな当たり前すら叶(かな)わなかった20年もの時間を取り戻(もど)すように、俺(おれ)たちは網膜(この目)に映(うつ)ることすら拒(こば)んだエルズマート王国を抜(ぬ)け出(だ)し、東の果ての果てへ。地図にある最も東の地を目指して旅に出た。


 誰一人(だれひとり)、自分たちのことを知らない場所へ。

 ただそれだけを目的に、俺(おれ)たちの旅は始まった。


「やべぇ、降(ふ)ってきた。このままじゃズブぬれだ、急げポンチョ!」


「キャー! 雨こわーい!」


 もう二度と、この幸せな時間を手放しやしない。

 心の底に刻(きざ)みつけ、俺(おれ)たちは新たな人生の一歩を踏(ふ)み出(だ)したのだった――


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

もし少しでも面白いと思っていただけましたら、評価やブックマーク等を頂けますと励みになります。

多分ポンチョも喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。