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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第5章 みんな大好きキノコ作り!

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第228話 最大の危機


 しかしシルシルは大きく首を横に()り、()(あせ)(にじ)ませながら視線(しせん)背中(せなか)(おれ)に向けて言った。


(ちが)います」


 (おび)えなのか、シルシルの目にどこか力がない。

 すると(かれ)(おれ)から視線(しせん)()け、進行方向だけを一点に見つめながら、こぼすように(つぶや)いた。


「このままでは、……村が(ほろ)びてしまう」


 (すべ)ての熱を()()ってしまうかのように、雨に()れた(すな)砂漠(さばく)灼熱(しゃくねつ)を冷やしていく。それと同じく背中(せなか)から(いや)な寒気を感じた(おれ)は、一度大きく深呼吸(しんこきゅう)し、改めて聞き直した。


「何があったんだ?」


 シルシルは天を見上げ、(いま)()り続いている雨粒(あまつぶ)見据(みす)えながら付け足した。


砂漠(さばく)地帯(※公国南西地区)はこの程度で()んでいるようですが、(われ)らの住む東の森は(ひど)状況(じょうきょう)です。村長殿(どの)もご存知(ぞんじ)のように、数日前までは雨粒(あまつぶ)小降(こぶ)りとなり、一旦(いったん)は落ち着いていたのですが……」


 モリスの森へ走るさなかも、天候は次第(しだい)に悪化し、空の雲も分厚さを増し始めていた。()(そそ)雨粒(あまつぶ)は秒ごとに増し、(はだ)()らす水量も強まり続けている。


「雨が……? いや、でも、まさかそれくらいで」


 そのとき、(おれ)脳裏(のうり)によぎった言葉を口にするのを躊躇(ちゅうちょ)した。

 しかし(おれ)に代わって(となり)のマーロンさんが険しい表情を()かべながら質問する。


洪水(こうずい)……、なの?」


 それでも肯定(こうてい)しようとしないシルシルは、森の命の根源(こんげん)であるセデスの(いずみ)の名を挙げ、また(だま)ってしまった。それだけで本格的に察してしまった状況(じょうきょう)に頭を()いた(おれ)は、「急いでくれ」とシルシルの耳元で(つぶや)いた。


「お、おい、どういうことだよ。ちゃんと(おれ)たちにもわかるように説明してくれよ!」


 (おれ)背後(はいご)にしがみついていたペッツが(あお)()てるように言った。ギロリと(にら)みを()かせたシルシルは、観念したかのようにポツリポツリと語り始めた。


「村長殿(どの)を送り出した少しあとからだ。ずっと()り続いていた雨が、また強くなり始めた。雨ごときなんということはないと高をくくっていた(われ)らを嘲笑(あざわら)うかのように続いた雨は、次第(しだい)にその量を増やし、いよいよ笑っておれぬ状況(じょうきょう)となっていった」


「笑っておれぬって、森で雨が()るくらいどうってことねぇだろうが。それがなんだってんだよ」


 ペッツの(あお)りに対し、(きば)(あら)わにするシルシル。

 アシュリーが(おさ)えるように続けてくれと(さと)した。


(われ)ら村に沿()って流れている川の上流には、太古より『セデスの(いずみ)』と()ばれる巨大(きょだい)な湖が存在(そんざい)している。(いずみ)は公国内全土の水を支えていると言って相違(そうい)ないほど広大な水量を(ほこ)水瓶(みずがめ)ではあるのだが……」


「あるのだが、なんだってんだよ!?」


「…………(こわ)れかけているのだ」


(こわ)れる? 何がだよ」


(いずみ)がだ! あまりに長く()(つづ)けた雨によって、セデスの(いずみ)決壊(けっかい)しかけているのだ。このまま()(つづ)けば、間違(まちが)いなく(いずみ)決壊(けっかい)してしまう」


「ハァ?」と軽い反応を示したペッツら(きば)の面々に対し、(おれ)やマーロンさんの顔はさぞかし引きつっていたことだろう。その意味を理解できずにいる(かれ)らに事の重要性を説明しようとしたところ、後方のウルフの()の上から別の声が聞こえてきた。


「お、おいお前ら! 今の話は本当なのか!?」


 村の面々や、(きば)のメンバーとは別の声だ。

 ()()いた(おれ)たちの目に()()んできたのは、そこに()()()()()()()()()姿(すがた)だった。


「て、テーブルに、ローリエさん!? どうして二人(ふたり)がそこに!?」


「し、知るかよ! コイツらが勝手に(おれ)たちを乗っけて走り始めたからだ。だが今はそんなことどうでもいい、ちゃんと話を聞かせやがれ!」


 どうやらシルシルの部下が(きば)のメンバーと勘違(かんちが)いして二人(ふたり)を連れてきてしまったらしい。(あわ)ててシルシルに横付けした二人(ふたり)は、(きば)の面々に付け加えるように、位置関係を(ふく)めた村と(いずみ)概要(がいよう)や情報を伝えた。


「ハァ!? セデスの(いずみ)って、そんな巨大(きょだい)な湖なのかよ! しかもそれが村のすぐ上にあるって、そんなもんが決壊(けっかい)したら、お前らの村なんて……」


「だから時は一刻(いっこく)を争うと言っているのだ! あのまま(いずみ)決壊(けっかい)すれば、(われ)らの村は大量の水に()()まれる」


「や、やべぇじゃん」とペッツが絶句する。

 しかしそれだけでは()まないとテーブルが(くちびる)()みながら付け加えた。


「もしそんなことになってみろ。大量の水が、(いずみ)に直結してる川を下って流れてくるんだぞ。その先にあるマイルネの町もただじゃ()まねぇよ」


 ギリッと奥歯(おくば)()みながら雨粒(あまつぶ)(ぬぐ)う。しかしその間にも雨量は()(つづ)けており、空を(おお)った雲も漆黒(しっこく)を思わせるほどに積み重なっていた。森全体を()らす雨粒(あまつぶ)は、その脅威(きょうい)をまざまざと見せつけるよう、満身創痍(そうい)(おれ)たちを嘲笑(あざわら)っているかのようだった。


「で、でもよぉ、そんな大袈裟(おおげさ)な話なのか。町がただじゃ()まねぇってさ」


 そこまで言いかけたペッツがテーブルの後ろで(ふる)えているローリエさんに気付き、「アンタ大丈夫(だいじょうぶ)か?」と(たず)ねた。


 ()()えれば、この場にいる全員の中で、もっとも庶民(しょみん)に近い存在(そんざい)彼女(かのじょ)だ。

 彼女(かのじょ)冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドの職員ではあるものの、スキルを(あやつ)る強者でもなければ、絶対的な魔法(まほう)の使い手でもない、ごく普通(ふつう)の女性だ。その彼女(かのじょ)()(みだ)しように気付かないほど、この場にいる冒険者(ぼうけんしゃ)たちは(おろ)かじゃない。


「……マスター。もし(いずみ)氾濫(はんらん)を起こしたら、マイルネの町はどうなるんですか」


 不意にローリエさんが(つぶや)いた。

 しかしテーブルは、言及(げんきゅう)()け、言葉をはぐらかせた。


「町には(わたし)の家族や子供(こども)たちだっているんですよ! もしそんなことになったら……」


 いつも調子のいい彼女(かのじょ)の顔から生気が()けていく。

 しかし状況(じょうきょう)は相当によろしくない。

 それはシルシルたちウルフの顔色を見ているだけでなんとなく伝わってくる。


「現在は(ねこ)族の族長らが集まり、村長殿(どの)(もど)るまでの間、村民の避難(ひなん)や水害対策(たいさく)にあたっているところ。しかし(われ)らの力だけでは、できることも限られているゆえ」


 そんな中、一秒でも早く(おれ)(たよ)ろうと、(かれ)らは約束を反故(ほご)にしてまで砂漠(さばく)までやってきたのだ。


「村長殿(どの)、今は貴方(あなた)様だけが(たよ)りの(つな)。どうか(われ)らをお救いください!」


 シルシルが(すが)るような()(おれ)を見つめている。

 もちろん(おれ)の力でどうにかなることなら全力を()くす。

 しかしこればかりは即答(そくとう)もできない。

 とにかく今は急ぐしかない!


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