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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第5章 みんな大好きキノコ作り!

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第202話 軽い男


 突飛(とっぴ)なハンチングのような緑のキャップを(かぶ)った男は、自身をキュリオス王国の商業ギルドに属する商人と語り、(いた)(こし)強引(ごういん)()ばしながら深々と会釈(えしゃく)をした。


 中肉中背(ちゅうぜい)の見た目で、(とし)(ころ)は20くらいだろうか。身なりはそれなりに整っているものの、あちこち走り回ったからなのか、服のいたるところがほつれて破れている。

 さらには燃やされてしまったのか、左半分だけのヒゲがなく、珍妙(ちんみょう)()()ちだ。何が起こったらこんなことになるんだと無言の疑問(ぎもん)()かべていると、ネイサンが勝手に語り始めた。


(わたくし)、護衛の冒険者(ぼうけんしゃ)とともに公国に商品の運搬(うんぱん)をしておりましたところ、突然(とつぜん)魔物(まもの)(おそ)われてご(らん)の始末で。(あぶ)ないところをお助けいただき本当にありがとうございました。ああ、これ(ヒゲ)ですか。これは魔物(まもの)()いた火で見事に半分だけ燃えてしまいまして。お()ずかしい!」


「は、はぁ……。何にしろ無事で良かったですね……」


「それもこれも貴方(あなた)様のおかげでございます! ところでお二人(ふたり)様は冒険者(ぼうけんしゃ)様でいらっしゃいますか? お名前はなんと? え? はい!?」


 (しゃべ)るたび一歩()()んでくるネイサンを()(かえ)しながら自己(じこ)紹介(しょうかい)した(おれ)は、「普通(ふつう)冒険者(ぼうけんしゃ)です」と適当に返事をする。この人、いちいち圧が(すご)いな……。


「しかしこのネイサン、本当にツイていると言わずにおれません。もはやこれまでかと、馬ひとり身ひとりで山脈と平原を()(まわ)っておりましたら、まさかハク様のような方に助けていただけるとはッ!? これも神の(おぼ)()しです!!」


 (おれ)両肩(りょうかた)(つか)もうとするネイサンを遠ざけつつ、「それはそれは」と誤魔化(ごまか)し、「ところで」と前置きして気になった点を質問してみる。


「その運搬(うんぱん)してたという商品はどこに?」


 するとネイサンはピタリと言葉を止め、自分の身体をペタペタ確認(かくにん)し、さらには周囲をひとしきり見回してから、「あーーー!!!」と(さけ)んだ。(おれ)たちがビクッと身をすくめるのも無視(むし)して(ひざ)をついた(かれ)は、今度はシクシク泣きながら神に懺悔(ざんげ)している。なんなんだ、この男は……。


「ま、まぁ命が助かっただけで(もう)けものとしてはいかがでしょうか……?」


 適当な言葉をかけた(おれ)の手を(にぎ)ったネイサンは、「どうじまじょー(どうしましょう)!」と子供(こども)のように号泣(ごうきゅう)している。小さなことを気にしないポンチョでもドン引きしているのだから、その姿(すがた)の無様さは説明不要だろう。


「も、もしかすると、護衛の冒険者(ぼうけんしゃ)でしたっけ。その人たちが荷物を持っているかもしれませんよ」


 すると(かれ)はドヨンと死んだような顔になり、今度は土下座(どげざ)するような格好でワンワン泣き始めた。いい大人がいい加減にしてくれよ……。


「アイツらー! 敵の数が多いとわかった途端(とたん)、主人である(ぼく)のことを置いて()げやがったんだー! くそぅ、駆逐(くちく)してやる、次会ったら駆逐(くちく)してやるぅぅ(ギリギリ)」


 かと思えば、今度はハンカチを()むように(ひど)い顔で(うら)み節を(なげ)(はじ)めた。なんだか知らないが、コイツとはあまり(かか)わらない方が良さそうだ。


 それ以上深く聞かないことを決め、休憩(きゅうけい)の準備を終えたマーロンさんに声をかけた。しかし彼女(かのじょ)はネイサンと(かか)わりたくないのか、素っ気ない態度でポンチョを小脇(こわき)(かか)えていた。


「……マーロンさん?」


「うん、なんでもないよ。ほら、火を()いたから早いところご飯にしよ。ポンチョもお(なか)すいてるみたいだし」


 グゥゥゥゥとモコモコさんの(はら)が鳴る。

 これ以上待たせると、またグズり始めるなと(うなず)いた(おれ)は、ポンチョのリュックから作り置きしてあった(なべ)を取り出して火にかけた。


「色々あるだろうがアンタもそこに(すわ)れよ。飯、食うだろ?」


 一転して「ハイッ!」と返事したネイサンは、すぐにポンチョたちの(となり)腰掛(こしか)け、「なにかな、なにかな~」と(なべ)の中身に期待しているご様子。変わり身の速さも異常(いじょう)だな……。


「ム~、ポンチョが一番だから!」


「うん、なんだいキミは? ハクさんのペットかな~? もこもこしてて可愛(かわい)らしいね~」


「ポンチョはポンチョ!」


「ポンチョか~、そうかそうか~。で、ご飯はなんなのかな~?♪」


 スンと話題を変えられ、あのポンチョさんが困惑(こんわく)しているぞ……。この男の適当に輪をかけたような軽さは、(おれ)たちの想像を軽く()えているのかもしれない。


 (おれ)()かせてあったダンジョン肉のごちゃ混ぜシチューを皿によそって差し出した。ポンチョとネイサンは、まるで(さか)った犬のように食事にがっついていたが、やはりどこかマーロンさんの様子がおかしい。


 (おれ)はネイサンの視線(しせん)(さえぎ)るように間に腰掛(こしか)け、「どうかした?」と聞いてみる。すると彼女(かのじょ)はほんの一瞬(いっしゅん)ネイサンを一瞥(いちべつ)したのち、「ううん、なんでもないったら」と微笑(ほほえ)み、シチューをすすった。


 なんでもないという彼女(かのじょ)にそれ以上聞くのも気が引け、(おれ)は仕方なく追求を(あきら)め、自分も久方ぶりの食事にありついた。作り置きしてあった『なんちゃってデミグラスソース』をベースにした一品だ。自分で言うのもなんだが、やはり美味(うま)い!


「ウマー! この肉ウマー! ちょっとハクさん!? この黒いドロドロしたの、メチャクチャ美味(うま)いんですけどー!!? なんですかこれー、ウマー!」


 ポンチョと一緒(いっしょ)になって美味(うま)美味(うま)(さわ)ぎ散らかしているネイサン。うちのモコモコも「ウマ~♪」と(かれ)真似(まね)をしながら上機嫌(じょうきげん)だ。どうやら悪い(やつ)ではなさそうだが、さっきまで死にそうな顔してた(くせ)に、ある意味(すご)いな。


「まだ沢山(たくさん)あるんで沢山(たくさん)食ってくれな」


「おかわり! さっきの倍!」


「ムー、ポンチョもバイー!」




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