彼と彼女の日 3
「おにーちゃん。お兄ちゃんって変態なの?」
美弥子と久々のデートにうきうきしていた俺は、途中休憩として喫茶店に入り冷たいお茶を飲んでいたのだが、いきなりの美弥子の発言で思わずそのお茶を噴出してしまった。
「な、何でいきなり・・・」
テーブルに巻き散らばったお茶をティッシュペーパーで拭きながら、俺はいつになくまじめな表情の美弥子を見た。
「だって、お兄ちゃん、いつもセクハラしてくるんだもの。そのわりに私にキスとかしてこないし」
「そ、それは・・・」
お前にキスなんかしたら、それこそたかが外れて野獣のごとく凶暴化した俺に襲われ、蹂躙され、体中なめられまくってもいいのか、とは言えない。
というか、いつも美弥子のあの魅力的な唇を奪おうと模索しているのに、なぜか失敗する。それは偏に美弥子のせいだと言えるだろう。
「やっぱりお兄ちゃんは私の身体だけが好きなんじゃないの?だからいつも胸とか触ったりするんでしょ!」
「違う!俺は美弥子が好きなんだ。も、もちろん美弥子の身体も好きだけど、性格だって顔だって好きだぞ」
「信じらんない」
美弥子は少し涙のにじんだ目で俺を見上げてくる。あぁ、かわいすぎる。
「お前しか見えないんだ」
「・・・本当に?」
「本当だ」
俺は伺うように俺のほうを見ている美弥子の顔を両手で包み込み、自分の目線に合うようにした。
そこで気づいた。
今ってキスするのにナイスシチュエーションじゃん!
よし、ここで日本男児の意地を見せてやる!!というか、ここで見せないと俺は男じゃない!!
美弥子の目を見ながら、俺はゆっくりと自分のを美弥子の赤いかわいらしい唇に近づけようとした。
そう、そこでいつものお約束。
「あっ!!お兄ちゃん、早く行かないと映画始まっちゃうよ」
俺は体中から力が抜けるのを感じた。
あぁ、俺がいまだ美弥子の純潔を奪えないのは、美弥子に空気を読む能力がまったくないことが原因だ。
はっ!それともそんな風にしてごまして、俺との初ちゅー体験を回避しようとしているのか!?
そこまで俺は美弥子に嫌われていたのかぁ!!!
「あぁ、お父さんお母さん、先立つ不孝をお許しください。あなた方の不肖の息子は美弥子に嫌われてた以上もうこの世で生きてはいけません。死んで美弥子の幸運を呪い、生まれ変わったら、次こそは美弥子を監禁しようと思います」
「お、お兄ちゃん!いきなりどうしたの!?」
しゃがみこんだ俺を美弥子は力いっぱいゆすり始めた。
ていうか、痛いよ。すごく。
「止めないでくれ。俺は美弥子に嫌われたから、これから自殺しに行くんだ」
「な、何言っているの!?私がお兄ちゃんのこといつ嫌いになったなんて言った?」
「いいんだ。俺に気を使わなくても。美弥子、達者でな」
美弥子に近づく男は呪い殺してやる。
「ま、待ってよ!!お兄ちゃん!私はお兄ちゃんのこと嫌いになんかならないよ。っていうか、お兄ちゃんのこと・・・大好きなんだからぁ」
そうか、大好きか・・・
「だだ、だ、だ大好き!?」
「そうだよ。だから、自殺するなんて言わないでよ。お兄ちゃん」
あぁ、美弥子、俺でいいのか。
こんな変態な俺でも好いていてくれるのか。
「ずっと美弥子のそばにいるよ!!」
俺は誓おう。
美弥子に変なことしすぎて嫌われたとしても、一生美弥子に付き纏っていよう。
で、美弥子に近づく男は、猫であろうと犬であろうとこの世から抹殺してやろう。
俺は美弥子だけの変態になる!!
そして俺は美弥子に抱きついたのだが、美弥子は俺のお茶目な右手が勝手に美弥子のお尻に触れていたことがいたくお気に召さなかった、というより、イラついたのだろう、顔を殴られた。
もう、死んでしまいたい。




