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終幕 五百
砲撃が止んだ。
瓦礫の間には、土煙が薄く漂っていた。
源蔵は部下を連れ、崩れた建物の周囲を確認した。
敵の死体は見つからなかった。
その代わり、瓦礫の下から、汚れた中国軍の軍服が現れた。
脱ぎ捨てられたものだった。
その脇に、木製の部品と、細長い金属の照準器が落ちていた。
源蔵はしゃがみ込んだ。
ブローニング・ハイパワーのストック。
そして、タンジェントサイト。
拳銃本体はなかった。
源蔵は照準器を拾い上げた。
泥を指で拭う。
目盛りの端に、数字が刻まれていた。
五百。
源蔵は、その文字を親指で撫でた。
陳は、どこへ行ったのだろう。
あの男は、死んだのか。
それとも――。
源蔵は答えの出ない問いを胸にしまい、照準器を布に包んだ。
*
夕暮れの南京。
一人の若い男が、人々の流れに紛れて歩いていた。
軍服は着ていない。
誰も、男を振り返らなかった。
男の懐には、一丁の拳銃が隠されていた。
ブローニング・ハイパワー。
男は襟元を直し、歩き続けた。
その姿は、やがて人混みの中に消えた。




