1 ギフト『全知全能』
0話目としてプロローグを投稿しているので、そちらも読んでいただければ幸いです。
”ギフト”
それは神から与えられる才能。
”ギフト”が秘めている力は強大で、得た”ギフト”に関する能力は飛躍的に向上する。
そして、”ギフト”の何よりも素晴らしいところは、十歳を迎える年であれば貴族平民関係なく”ギフト”を得る権利があるというところだ。その状態で各国に存在する神のまつられた教会で祈りをささげたならば、”ギフト”を得られる。
スィンケ王国では”ギフト”付与の儀式として、今や国の一大行事に昇華されているイベントだ。もっとも、王国で”ギフト”付与の儀式を確実に受けられるのは、貴族子女のみである。例外として教会に多額の寄付を行った富豪子女たちは受けることが出来るが、一般市民にとっては到底手の届かないイベントごとだ。
そして、今日は新たな一年を迎える日にして、”ギフト”付与の儀式が行われる日であった。
やっと自分の番が来た僕は、教会の身郎を進んでいく。
ここまで嫌に長かった。儀式を受けるのは身分順ということもあって、しがない地方男爵家の自分に番が回ってきたのは昼過ぎ。朝から教会に集められたことを考えると、どれだけ待ったのか分からない。もっとも、自分よりも待たされる子供たちがいることを考えれば、文句も言えないのだが。
神が彫られた彫像まで辿り着いた僕は、片膝を突き、手を組んで神への祈りをささげる。
「世界を創りたまいし神よ どうか私、ユル・ネイサンにその力の一端を恵み給え」
僕の言葉に反応したのか、神像が一瞬光る。
そして、脳内に抑揚のない声が届いてくる。
《ギフト『全知全能』を授かりました》
『全知全能』とはどんな”ギフト”か分からないが三年前に『剣豪』を授かった兄さんに嫌というほど聞かされた話では、謎の声が流れれば”ギフト”付与の儀式は終わり。つまり、僕の”ギフト”付与の儀式は終わったということ。
手を解き立ち上がろうとしたとき、さっきと同じ平坦な声が再び聞こえてきた。
《ギフト【善】『神託』が発動しました》
「はっ!?」
思わず声を漏らしてしまったが仕方のないこと。だって、授かった”ギフト”名は『全知全能』であるはずなのに、今聞こえてきて発動したといわれた”ギフト”名は『神託』。
正直言ってしまえば、意味が分からない。
僕が混乱しているところに、先ほどまでの感情が一ミリも感じられない声とは違うしゃがれた声が頭の中に響いてきた。
〈ふむ、五十秒しか声を届けられないとはなんとも不便な事じゃな。お主が成長すればより秒数が増えるのじゃろうが……伝えたいことを伝えるにはその時を待つしかないな。一先ず、目先のアドバイスでもしておくとしようかの。『神託』が終わったら『思考加速』と『思考強化』を使っておくのじゃ。それと”ギフト”のことで知りたいことがあれば『全知』を使うのじゃ。お主には期待しておるからな。それではまた会おう、神の使い候補よ〉
しゃがれた声が途絶えたのと同時に、平坦な声が再び脳内に流れる。
《神の使い候補になりました》
……
ここまで一連の流れ。
僕に言えることがあるとすれば……控えめに言って意味が分からないだ。
授かった”ギフト”とは違う名前の”ギフト”が発動したと思ったら、聞いたこともない声が脳内に響いてきた。そこで色々と訳の分からない話をされたと思ったら、最後に《神の使い候補になりました》だ。
正直、兄さんよりも弱い”ギフト”でそれなりに役立ちそうな”ギフト”なら何でもいいと考えていた僕には話が飛躍しすぎている。
だが、起きてしまったことは変えられない。
一先ず、謎の忠告に従って、『思考加速』と『思考強化』を発動させよう。もっとも、どうやったら発動できるかも謎なので、頭の中で唱えてみる。
(『思考加速』と『思考強化』を発動)
《ギフト【善】『思考加速』,ギフト【善】『思考強化』が発動しました》
(うん、なんか発動出来た。でも、何か変わったのかな?”ギフト”の名前からして考え事がやりやすくなったて感じだと思うけど……そういえば、”ギフト”で知りたいことがあれば『全知』を使えとか言ってたっけ。『全知』さん、『思考加速』と『思考強化』について教えて)
《【善】『思考加速』思考速度が通常の十倍になります【善】『思考強化』知能指数が通常の十倍になります》
この受け答えで一つ分かったことがある。どうやら頭の中に響く平坦な声の正体は”ギフト”『全知』によるものだということ。
そして、気になることが一つ出てきた。
どうして僕は『思考加速』と『思考強化』が使えているのか。
思い当たる理由としては、授かった”ギフト”『全知全能』ぐらいしかない。
僕は僕の仮説が正しいか『全知』さんに聞いてみる。
(『全知全能』について教えて)
《『全知全能』全てのギフトを知っている,全てのギフトを使用できる 制限:『全知全能』の能力により発動するギフトは一日一回最大十分間の使用制限》
(はっ!?)
正直に言ってぶっ壊れ性能だ。
全ての”ギフト”を知っているというだけでも、相手の”ギフト”名さえ知ることが出来たならば相手の能力を推し量れる。戦いの軍師として圧倒的な有利を展開できるだろう。
そして、更にぶっ壊れといえる性能が全ての”ギフト”を使用できるだ。制限はあるものの、”ギフト”の種類など数えきれないほどあるだろうし、十分で相手を倒してしまえば関係ない。正直に言って、一人で国を攻め滅ぼせそうな能力だ。
もしこの”ギフト”が国にバレでもすれば、好待遇と称した首輪を付けられ国に飼い殺しにされるだろう。
もっとも『全知全能』の能力を知っている人物がいるとも思えないが、隠しておくに越したことはない。”ギフト”の名前だけならば、『鑑定』系統の”ギフト”を持っている者にはバレてしまう。
(『全知』さん、”ギフト”を隠す方法とかない?)
《隠蔽系統の能力が存在します》
(それじゃあ最上位の隠蔽”ギフト”を教えて)
《ギフト【悪】『神隠し』名前,種族,ギフトを自由に書き換えることが可能,一度書き換えたものは次に書き換えるまで有効》
なんと便利で悪用できそうな”ギフト”か。
僕は『神隠し』を使うことを決める。
だが、ここで重要になってくるのが、何の”ギフト”に書き換えるかだ。
まず必要なのが貴族としてそれなりに体面が保てそうなものだ。使えない”ギフト”を得たことで家から勘当されるという話を風のうわさで聞いたことがある。もっとも母さんがそんなことをすると思えないが、無難な”ギフト”にしておいた方が良いだろう。
次に大事なのが、兄さんよりも弱い”ギフト”にするということだ。もし”ギフト”でも兄さんよりも優秀なものを持ってしまえば、本当に次期当主にされてしまうかもしれない。それは僕の望むことでもないし、兄さんに何をされるか分かったものではない。ここは兄さんと同じ系統で下の位の”ギフト”にしておくのが最適か。明確に兄さんの下であると主張できる。
そうとなれば、僕が選ぶ”ギフト”は、
(『剣士』かな)
『剣士』は言わずと知れた”ギフト”で剣術系統の”ギフト”の中でも最下位に位置するとされている。だが、凡庸性は高く、衛兵、自警団、貴族子女の剣術指南役、冒険者と幅広い就業先が存在している。
(『神隠し』を発動)
《ギフト【悪】『神隠し』を発動します》
(”ギフト”を『剣士』に書き換えて)
《ギフト【悪】『神隠し』の効果により,ギフトを【善】『剣士』に書き換えました》
これでもし鑑定系の”ギフト”で僕の”ギフト”が見られても問題なくなった。
(これでよし)
ここまでの思考、わずか数十秒。
僕は普通に”ギフト”を授かった子供たちとそこまで変わらない時間で、教会を後にしたのだった。
最後まで読んでいただき有難うございます。
ブックマークやらなんやらしていってもらうと作者が凄い喜びますので、登録お願いします。本当にお願いします。
続きは明日の20時までには投稿しますので、そちらも読んでいただければ幸いです。




