5.自由の都リバティ
投稿し忘れてました。すいません。
自由の都リバティ。バルガラ大陸に存在する中規模の都市であり国家。
表向きは小さな一都市として扱われているが、裏では周囲の一帯を制圧している小規模独裁国家だ。
異質な点は人間と見紛うアンデッドたちだ。都市の労働力として常に稼働しており、アンデッドの傀儡が都市を治めている形を取っている。
アンデッド達には人格を付与してある。それは俺が手ずから権能で定着させているのだからクオリティは最高峰だ。
リバティにある小さな城、ガラン。その最上階では瞑想を続けるアタナシア=グラニエの姿があった。
この城には生者はアタナシアしかいない。自分が魔人としてテリトリーを保有すると決めたとき、外敵対策として小さな都市を選定基準とした。
理由はいたってシンプルで自分以外の生者が感知された場合、それは須らく侵入者であると判断できるからだ。
アンデッドは物理的な気配はある。魔力感知では検知出来ないが純粋な魔人などの感知能力には引っかかってしまう。音の反響で索敵することも可能な存在だ。
だからこそ、人間であっても潜入することは出来たりする。魔人であれば猶更だ。魔人の熟達した魔法は同じ魔人でなければ感知出来ない場合が多い。
しかし、長らくアンデッドと向き合い、死神から権能を貰った俺は死者特有の気配を権能を使用して感知できる。
俺が作成したアンデッド達には権能と紐づいており、都市全体にアンデッドがいることによってアンデッド感知ネットワークが出来上がっている。
アンデッドは近くのアンデッドと権能で密かに繋がっており、権能が付与されていない存在が範囲内に存在すると外敵として把握できる。都市全体が感知網になっている。
それにアンデッドは常に働き続けられ、給料を払う必要も健康を管理する必要もないのだ。なぜなら死なないからだ。
パーツがダメになれば他の死体からくっつければいい。アンデッドたちに痛覚はないのだから雑でも問題ない。
この都市を制圧するのは簡単だった。手始めに都市の共同墓地に行き、アンデッドを大量生産。聖職者もそう多くないことに加え、魔人がサクッと作ったアンデッドでも地味に強い。タフというのだろうか。
後は都市を外から包囲して俺が魔法で1人も逃さなかった。面倒だったことは生きて捕まえなければならないということだ。
他の魔人にどう知られているかわからないが、俺の権能は既に死んだ死体から作成する時と生きた人間からアンデッドを作成する時で結果が違う。
既に死んだ死体からは自立起動できるアンデッドは生まれない。既に魂が天に召されているのでな。脳みそや心臓を無理矢理動かして心肺蘇生や植物状態を生きている判定にしてみたこともあったが無理だった。
人体実験を繰り返した結果、目に見えない魂という概念があるという結論に辿り着いた。
神から貰ったとはいえ万能ではないことがわかるだろう?意外と制約自体はあるのだ。俺自身は戦闘能力に自信があってもレシピ通りの素材を手に入れないと作れない。料理と同じだ。
錬金術もある意味同種である。魔人であってもこの世の理には左右されるのはこの世界に生きる生物の限界なのかもしれない。
鏡のようにツルツルとした大理石の床が広がる城内は歩くにはあまりに不便で壁は石の隙間が多く、風が吹きすさんでいる。手抜きと言えばそうだが、通常の生物が侵入してきても攻略に時間がかかる。ここの城を占拠出来たとしても拠点としては地味に悪い。アンデッドが闊歩する都市で各個撃破して制圧したとしても使えない城と廃墟となった都市だけが残るのだから侵略者に何もメリットが無いというわけだ。
俺はこの都市に未練などないからここがダメならまた別の都市を制圧してアンデッドの楽園を築くだけだ。俺が存在する限りアンデッドの町は終わらない。まさに不滅。
アステールのやつとは協力関係を結んでいるが、脅威となる魔人などカナンくらいだろう。
イグニストゥスやイフィンティブ、ヘクターはあのタルバという男を買っているようだが、俺には魔人の王になる器に見えなかった。
確かに、テストの時は魔人たちにも解明できない方法で殲滅したが、敵が弱かっただけだ。アステールが用意したあんな雑兵どもでは魔人1人の相手すら出来ないというのはわかりきっていた。
テスト相手のレベルが低すぎて誰でもクリア出来たんじゃないかとすら思う。ギシギシと軋む木製のイスに背を預け、他所の街からかっぱらってきたワインをラッパ飲みしていく。
ほんの数秒で飲み干して口元を拭うと、窓の外に広がる都市の景色を見下ろした。
今日も変わらずアンデッドたちは仕事に勤しんでいる。浄化でもされない限り消えることのない労働力と感知網は各個人の感情とは別離して正常に機能していた。
さてと地下のあれを確認でもするか。
「まったく手のかかるアンデッドだ。権能が効かないなどどこの魔人が作ったというのか」
一人ごちるアタナシアは屋内であるにもかかわらず、翼をはためかせて城の地下へと下降していった。退屈な日常に紛れ込んだ興味深いアンデッドはいつかくるその機を待って地下で鳴動していた。
――――――――――――――
徐々に見えてきたバルガラ大陸。その大陸中心部に位置する小さな都市リバティ。俺にとって待ちに待った楽園。
冒険者時代に聞いた噂では小国だったが、今では統治者が変わったのか中規模の都市として独立していた。
いつ聞いたか誰に聞いたかも覚えてないが、世界はいついかなる時も一瞬で変化する。それは『収縮生誕』のような超常現象かもしれないし、魔人という異常な存在の逆鱗に触れる事かもしれない。
俺は何かをしようとかさっぱり思っていないが、世の中野心家というのはどこにでもいるもんだ。アステールってあいつは絶対そのタイプだ。
まぁいい。俺はこの都市で風俗全制覇するくらいの気持ちで訪れている。魔人だからな、その辺のタフさもきっと上がっているはずだ。それにしても魔人って何ラウンドまで出来るのだろうか。果たして相手が壊れないように加減しながら致すことが出来るのか。非常に興味深い事ではある。
そう、俺は処理するためでもあるが、これは魔人という存在の研究と調査である。戦闘能力だけでは推し量れないものもあるのだ。
そういえば魔人になってから完全体になった息子の長さとか状態を把握していないのだけど、魔人の肉体っていくらでも変化可能だからどんな変態プレイも出来ると思うと人間を辞めて良かったのかもしれない。
だってそうだろ?人間という肉体の軛がある以上人間の肉体を逸脱した行為を出来ない。例えば触手とかスライムとかさ。でも魔人なら肉体を変えて触手側にもスライム側にもなれるのだ。なんと魅力的なことだろう。もちろん、嫌がる相手に無理に迫ることは男として風上にも置けないが、仕事で従事されている方にお金を払ってお願いする分にはまだいいだろう。
後は何ができるのだろうか。スケベな妄想が股間を充血させる。到着前にあんまり言いたくないけど、ムクムクしてきました。いつでもスタンバイOKです。
「おっと、あれかな?中規模の都市で奇妙な旗を掲げている、壁に囲まれた城塞都市のような様相で中心部に廃墟のようなおどろおどろしさを感じる城が聳え立つ。奇妙な都市とは聞いていたがこれは中々奇抜な都市だな」
俺が人生で見たことがあるベゼル王国の城や伝え聞く他国の城、うちの廃城などと比較しても不気味なテイストの城だ。趣味が悪い。崩れたような尖塔にところどころ欠けている壁、手入れのされていない草木が乱立して誰も住んでいないとすら思う。だがこれがこの城のあり方らしい。
今統治している市長は城に金をかけるよりも都市内の経済に焦点を当てているのだろうか。でも都市の一番目立つ建物がオンボロでもいいのか?
偉いやつの見えている世界というのは奇妙奇天烈なものだ。
俺はヌルっとリバティ近くの大地に降り立つ。ついに初上陸した。地上の楽園とも言える都市リバティ。何泊しようかウキウキだ。魔人の体力をフル活用すればいくらでも不眠不休で活動できる。俺は透明化を自分にかけて外壁前で行われている入場待機者の列に紛れた。
周りを見渡しても男ばかり。しかも身なりの良い男ばかりだ。明らかに成金といった装いの者もいるが貧乏人に見える者はいない。どうやらこのリバティという都市は都市全体が富裕層のみを相手にした商売をしているみたいだ。
あまり会話もない沈黙が佇む待機列。だが話している者もいる。集団できた者たちのようだ。ちょっくら会話を盗み聞きさせてもらうとするか。
他の待機者と比べて少しだけ小汚さが垣間見える男たちを選んで近づき、2人の会話を聞いてみた。
「やっと来れたな。リバティ。全ての性が集う都市。凄い都市が出来上がってたもんだよ」
「あぁ。俺も噂では聞いていたが噂が真実だったとは。金が溜まるまで時間を食っちまったがそれも帳消しだな」
「馬鹿な奴がいてくれて助かったよ。嵌めるのは楽だからな。あとは立場を奪って同じことをするだけで大儲けだったなんて笑えるよな」
「お人好しでは生きていけないことがよーくわかったよ。そういやここじゃ買った後預けることも出来るらしいからいいやつがいりゃ買い切ってもいいよな」
顔を少しだけ赤くして興奮気味の痩せ型の男は会話の内容も相まって何を想像しているか理解しやすい。この男たちがろくでなしであることは確実だな。だからといってどうこうというわけじゃないが。
それに対して太り気味の男は馬鹿にするように鼻を鳴らした。
「ここで売ってるやつらから買うなんてまだまだだな。ここに連れてくればあとは自分好みにしてくれるって話だ。他所から攫ってきちまうほうがいいかもしれん」
ほう。他所から攫ってきたやつを働かせるってことか。非合法な方法だがそれが容認されている店もあるみたいだな。性産業は闇が深いようだ。
それにしても攫ってきた人が素直に働いてくれるのか疑問だな。抵抗しそうなもんだが、脅迫でもされるのか?実態が見えてこないなぁ。
「そんなわけないだろ?だって攫ってきたところで他所から俺らが指名手配されちまうじゃないか。捕まって処刑されちゃ意味ねぇ」
痩せ型は太っちょと違って現実的な論理で問い返す。情報の取捨選択をまともに出来ない相方に落胆しているようにすら見える。
「お前は知らねぇだろうが、攫っても大丈夫なのさ。なんせ攫われた本人がここで働きたくているときちんと証明してくれるんだよ。攫った側は雇って移動を手伝ってもらったと説明してくれるんだとさ。だからリバティに攫ってきた奴らは捕まらずに好みの相手を手に入れるわけだ」
「そんなバカみたいな話があるか?無理矢理攫われて実はここで働きたくて来たという被害者がどこにいるんだ。変な物でも食ったか?」
「そう思ってればいいさ。中に入って聞けばわかる。ここは金さえあれば楽園であると同時に非合法な手段で手に入れてもシャバに居続けられるセーフティもばっちりの場所だってな」
自信満々にそう嘯く太っちょは胸を張り堂々とした面構えで痩せ男を見つめていた。一方痩せ男は胡散臭い話ではあるが、この話の出所が目の前にある以上、真実かどうかはすぐに確認できると思ったのかそれ以上は反論しなかった。ただ彼らは一様に楽しみで胸を躍らせ下卑た笑みでリバティの外壁門を見つめていた。
……なんか思ってた場所と違うんだけどもしかして治安が悪くなったとか?非合法な組織が入り込んで商売を始めてしまったとか?
風俗を主要産業とした奇妙な都市であることは知っていたけど、非合法組織の温床なら嫌に思えてきた。といってもまともな店もあるだろう。俺は透明化で確認していけばまともな店にも巡り合えるはずだし、潜入といきますか。
今日は朝から妙にピリピリと首元がひりつく感じがするんだが、魔人が興奮すると肉体が変なアラートでも出すのかなぁ。それとも楽しみにし過ぎて血の巡りが以上に良いとか?逆にうっ血とかしてんのかな。
自分の用を済ませたらさっさと帰りますか。何泊もしてたら余計なことに巻き込まれそうだ。
もう余計な荒事に巻き込まれるのはごめんでね。疲れるし俺そんな強くないからさ。今回は大陸越えてるから大丈夫だよね。
とりあえず祈っとけば助けてくれそうな創造神様へ信仰心の欠片のない祈りを捧げながら透明化で人を追い越して外壁門前まで進むタルバであった。
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