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7頁 異常無し

 『タコ』に仔牛を盗まれたと言う男が来店した。

この男は青森からこの島(種子島)に農業移住して来たと言う。


 神耶「どうしました?」 

 男 「空から真っ黒なタコが降りて来たダ」

 神耶「えッ? タコが?」

 男 「ウンだ。頭の下に目っコが二つ光ってた。三人居た。ゴンベ(酸素ボンベ)をショって(背負う)いた」

 神耶「夢(幻覚)でも見ていたんじゃないですか?」

 男 「夢でねえ。オラの牛小屋から仔牛をクスネテ(盗んで)飛んで行った。ありゃ、蛸天狗タコデングだ」

 神耶 「タコテング? 異星人か?・・・」

 男 「いや、ありゃ天狗だ! 羽があった」

 神耶「・・・? ちょとお客様の脳内を拝見させて頂きますか?」

 男 「ノウナイ? 頭ン中か? オラ、手術はイヤだ」

 神耶「ハハハ。ここは病院じゃないですよ」

 男 「頭ン中をどうやって見るだ?」

 神耶「あちらの部屋に検査室が有ります。ご案内します。どうぞ、こちらへ」


男は素直に神耶氏の後に続いた。

神耶氏は別室の例の小部屋に案内する。

椅子に座らせ頭にヘルメットを被せる。

垂れ下がった数本のコードをヘルメットにツナぎ、そそくさと小部屋を出て行った。

応接室の壁のモニターのスイッチを入れ、テーブルの上のカーソルを動かし、ポインター(矢印)を網膜から視神経、大脳の視覚野まで持って行く。

そして「扁桃体」と、理性をつかさどる『前頭前野』部分を拡大する。


 神耶「?・・・異常は無いな・・・」


神耶氏は思った。


 神耶「あの客は本当に異星人を見たのかな?」


神耶氏は応接室の書棚から『ピパラス神書』取って開く。

暫く神書を見て、男の居る小部屋に戻った。

ドアを開ける・・・。

男の被ったヘルメットを取り、片目のアイパッチを外して両目で男の眼を覗く。


 男 「頭ン中、見たか? オラ、嘘は言ってねえベ」

 神耶「・・・う〜ん。・・・満更マンザラ、幻覚でも無さそうですね」


男は怒って、


 男 「だから、ゴンベを背負った蛸天狗が仔牛を抱いて空に飛んで行ったって言ッてるべ!」

 神耶「・・・お客様の家の近くに高い山が有りますか?」

 男 「ああ、在る。ウチから見えるド」

 神耶「この島(種子島)には2万年前からカミヤ人が住んで居るんですよ」

 男 「カミヤ人? 天狗か? そう言えば、あの山には小さな『ホコラ』があるド。昔、『頭の長い人の骨』が沢山、出て来たらしいド」

 神耶「祠が?・・・頭の長い人? あ〜あ、やっぱり・・・」

 男 「やっぱり、何だ?」

 神耶「いや、カミヤ人は年に4回、タンパク質を補給しないとエネルギーが消耗して消滅してしまうんです」

 男 「だから、オラの仔牛が狙われたッつンか?」

 神耶「ホカの集落でも牛や豚、ニワトリの盗難が増えてるはずですよ」

 男 「まあ、最近よく聞くな。困ったなヤ。どうしたら良いンたべ」

 神耶「カミヤ人のキラいな物は生姜シヨウガ辣韮ラッキョ、それから『ゴムの匂い』です」

 男 「ゴムの匂い? じゃ、ゴム長靴やゴム手袋を四方八方に置いとくか?」

 神耶「あッ、ソレは良い!竹を切ってその先にゴム長靴やゴム手袋を逆さにして四方八方に乾かして置きなさい」

 男 「おお、そうか。オメーに相談して良かった。オラ、頭の病気かと思って夜も眠れなかったダ。人に言っても信じてはくれネーしよ。早速、戻って村のミンナに知らせるべえ」

                               つづく

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