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「あああああああああああああ!」
焦燥感が咆哮と共に口から飛び出した。
タッチしても駄目。
書き込んでも駄目。
破っても駄目。
何もできない。こうしている間にも、誰かが、’ 何か ’ が、Yを選択してしまうかもしれないのに。
──そのとき、はたと気が付いた。
「タッチしても駄目、書き込んでも駄目……?」
もう一度、羊皮紙にペンで ' N ' と書き直した。
Error: Unknown command ' N ’ .
「……やっぱりそうだわ。エラーが出たってことは……入力は通ってる」
Unknown command が返るということは、解析はされているってこと。
なら、システムに定義されたコマンドを投げれば、実行されるはず。
そして、この世界が受け取るコマンドと言えば…… ' 祈り ' だ。
全ての文字を見つけ出せているわけではないが、わたしは既にそいつの尻尾を掴んでいる。
わたしは自室に走り、 ' 輝きの祈り ' を解析した時に作った、自作の50音表を引っ張り出して駆け戻った。
手探りでUTF-8コードと対比させたものだ。それを見ながら、プロンプトの横の余白に書き込んだ。
11100011 10000010 10101000
11100011 10000001 10101100
11111111
インクで書いた2進数が、ぷるん、と震えた。
>Add new targets? (Y/N)
エぬ
debug: raw_input="エぬ"
debug: normalized="N" (alias: エぬ)
Operation cancelled.
一気にログが現れ、ちか ちか と明滅して……消えた。
「……通った」
急いで次のプロンプトにも同じ2進数を書き込む。
> Reset the GAME? (Y/N)
エぬ
debug: raw_input="エぬ"
debug: normalized="N" (alias: エぬ)
Operation cancelled.
選択肢が消え、代わりに新たな文字が浮かび上がった。
>"|Please enter a command."_
^
わたしの応答は有効な応答として処理され、セッションは通常のコマンド待機状態へ遷移したようだ。
インターフェイスは ' 祈りの間 ' ではなく、' 祈りの書 ' そのもので、音声入力だけでなく、直接入力も可能だったということか。
そんなこと、聖書に直書きする罰当たりでもいなければ気が付かれるはずもない。。
「あーあ……結局また、2進数なのね」
わたしは悪魔の選択をはねのけ、自由なコマンドを入力することができる。
わたしは神に届く言語を知っている。
コマンドは自由入力になり、すべてはこちらに委ねられている。
ならやればいい。書けばいい。途方もない作業になるだろうが、プログラマという生き物はもとより、トライ&エラーと一蓮托生なのだ。
底辺プログラマのど根性、見せてやろうじゃないか。
「──この世界、書き換えてやる」




