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ゲーム・ロジックには、前にもましてクソみたいなことばかり書いてあった。
「 ' 私の王子様、選び放題?! ' ってそういうことかよ?!」
またもや ' TERMINATED ' と付された人物名の羅列を読み飛ばすと、攻略対象として残っているのは、この国におわす三人の王子。
第一王子リーンハルト殿下。
第二王子リュシアン殿下。
第三王子アスラン殿下。
彼らに関してのゲーム・ロジック……要するに乙女ゲームを攻略するためのパラメータ・テーブルやイベント・シーケンスが書かれている。
イベント発生のためのステータス条件やシナリオ分岐条件。
選択肢ごとの好感度上昇指数。
普通にゲームをプレイしながら知ったのなら感動するであろう、攻略対象の秘密や心の傷までもが、ただのスクリプトとして暴かれている。
アスラン殿下のルート分岐は、母君である側妃殿下が他部族の出身であったことと、それによる孤独を知ることがフラグ。選択肢の難易度は比較的低い。
リーンハルト殿下はルートへ行くためのステータス条件が厳しく、選択肢もひっかけが多い。
「ちょっ……。リュシアン殿下、視力が? そんなご事情があったなんて知らなかった。──でも、眼鏡があったら、イベントの半分は吹っ飛ぶわね」
これで、拓人が「世界の機嫌を損ねた」原因がわかった。
発明が革新的だったからではない。イベントの邪魔をしたからだ。
わたしたちが、悩んで、苦しんで、傷ついて生きてきたことは、全部このスクリプトの掌の上だった。
鼻の奥がツンとした。気づいたら涙が出ていたのだ。それを拭うのももどかしくて、歯を食いしばって読み進めた。
けれど、終わりは突然に訪れた。
COMPILE ERROR:
・Target ' Aslan ' ...... Occupied by_non_heroine
・Target ' Lucien ' ...... Occupied by_non_heroine
・Target ' Reinhart ' ...... Available
> Add new targets? (Y/N)
> Reset the GAME? (Y/N) _
^
黒い羊皮紙の上で、指示を待つ白いカーソルが明滅している。
「噓でしょ、このゲーム──まだ、終わってない」
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リュシアン王子とアスラン王子がご成婚されたという噂は、修道院にも届いていた。
おふたりは Occupied by_non_heroine 。
空いているのは、リーンハルト殿下だけ。
攻略対象がひとりだけでは、乙女ゲームは楽しめない。
だから、
> Add new targets?
昨日までモブだった誰かが突然、攻略対象になる?
それとも、初めからいたような顔で、第四王子や他国の王子が現れる?
──そして、リーンハルト殿下とともに、恋愛遊戯に消費される?
>それとも、 Reset the GAME?
それってどこから?
学園に入学するところから?
王子たちが生まれるところから?
──それとも、もっともっと、ずぅっと前から?
王妃になるために学んだ日々も。
石鹸作りで荒れた手肌も。
3人でつまみ食いした救済パンも。
拓人との出会いも。
手放したあとに咲いた初恋も、ぜんぶ、ぜんぶリセットして。
──また、はじめから?
「冗談じゃない! Nよ、NNNN!」
わたしは羊皮紙に浮かぶ ' N ' の文字を連打した。
当たり前だが、なにも起こらない。
「やだもう、止めなきゃ……止めて……早く……って、どうやったらいいの?!」
錯乱したわたしは写本用のペンを取り出し、貴重な祈りの書の余白に直接大きく ' N ' と書き込んだ。
Error: Unknown command ' N ’ .
エラーメッセージと共に、書きなぐった ' N 'はすぅっと消えていった。
「ああもう!」
自棄をおこして羊皮紙のページを引っ張ると、べりべりと音を立ててそれは切り離された。
「あはは……。なんだ、はじめからこうすればよかったんだ……」
千切れたページをぐしゃぐしゃに丸めていたわたしは、そこで言葉を飲んだ。
破れた箇所から、新しいページがうねりながら生えてきた。
COMPILE ERROR:
・Target 'Aslan' ...Occupied by_non_heroine
・Target 'Lucien' ...Occupied by_non_heroine
・Target 'Reinhart' ... Available
> Add new targets? (Y/N)
> Reset the GAME? (Y/N)_
^
新しく生えたページに、同じメッセージが現れた。




