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神への祈りは0と1とで出来ている-追放悪役令嬢は修道院から世界を書き換える-  作者: さいべり屋
5: ′ 世界′

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██


「……乙女ゲーム?」


拓人は呆れたような声を上げた。


「そうなのよ。知ってる? ' 私の王子様、選び放題?! 恋する☆彡 ロイヤルアカデミー ' っていうんだけど」


「知らないな。まあ、そもそも乙女ゲームなんてあまり知らないけど。随分安っぽいタイトルだな」


「そうなのよ! こんなの笑うしかない。……いや、やっぱり笑えない。何ならいいってもんでもないけど、こんな三流乙女ゲームに、わたしの人生握られてたなんて」


' 祈り ' の秘密を知ってから、なんども繰り返し思い知らされてきたのに。


わたしはまた、性懲りもなく傷ついていた。


「それで、どんな内容だった」


「わかんない。まだ全然読み切れてないのよ。バイナリで書かれたコードが混じって読みにくいし、とにかく設定が多くて……。古い歴史とかが延々と書いてある。乙女ゲーなんて設定が雑なのがお約束みたいなもんなのに、キャラ設定も、人物名だけ何百人だけ書いてあるのとか。まるで……まるで、創世の時代から稼働してたみたい」


わかんない。


──嘘ではないけど、やっぱり嘘だ。


本当は少しだけ分かったことがある。


でも、自分の中でうまく咀嚼できなくて、言葉にできないのだ。


長々と続く歴史設定。馬鹿みたいに延々と羅列された人名。


ずらりと並んだ人物名のステータスは殆どが ' TERMINATED(終了済み) ' で、作りこまれた綿密な設定というよりは、投げ出された墓標のようだった。


その中に知った名を見つけたのだ。


マクシミリアン・テオドール三世。数代前にこの国を統治していた王で、歴史上の人物だ。


つまり、 ' TERMINATED ' が意味するものとは……。


──死亡(終了)


乙女ゲームに、無関係と思われる故人の設定をいちいち記載してあるのは何故か。全く想像もつかない。


ぞっとしたものを感じながらも、それを差し出して共有するには、まだ心の整理がつけられない。


わたしは拓人への報告を終え、またDETAIL(仕様書)の世界へのめりこんだ。


' TERMINATED ' が故人であると目星をつけたわたしは、、それがついているものは読み飛ばすと決めて先へ進む。


1行だけの人名の羅列にやっと終わりが見えてきたころ、わたしは馴染みのある名前が並んでいるのに目を止めた。


Obstacle(障害物) ' Ernestine(エルネスティーヌ) ' ...... REMOVED(排除済み)


Remover(排除するもの) 'GRANATO(グラナート)' ...... ACTIVE(稼働中)



ぐ、と喉の奥が鳴り、目の前が真っ赤になった。


この、古ぼけて擦り切れた冊子の中に、今まさに生きている人物の名前が記されている。


これは、わたしだ。


パッケージに立ち絵がある悪役令嬢ですらない、ただの ' 障害物 ' 。


たった1行で雑に退場させられたお邪魔虫。


それがわたしなのだ。


そして、それをしたのは 'GRANATO(グラナート)'。


「これってあの、いなくなった子のことよね? クレアっていう子の髪を切って、わたしが追放される原因になった、あの」


今となっては名前も思い出せないが、たしかグラナート伯爵の縁者だと言っていた。もしそうだとしたら、あれは不幸な偶然なんかではなく── ' 邪魔者 ' を ’ 排除 ' するために仕組まれた?


そういえばあの事件の後、国母の資質について声高に騒いだのもグラナート伯だった。すべてはわたしをREMOVE(排除)するための、一族ぐるみのマッチポンプ?


名前を思い出せないのも、初めから名前のないNPCだったから?


そして、Obstacle(わたし)を追放して、ゲームが終わった後も稼働していて、まだ誰かを排除しようとしている?


──嫌な妄想ばかりが脳から迸る。


答えを求めて、逸る心のままにページをめくったけれど、人物ページはそこで終わりだった。



次頁からは、 ゲーム・ロジックの項目だ。


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