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神への祈りは0と1とで出来ている-追放悪役令嬢は修道院から世界を書き換える-  作者: さいべり屋
3: ′ 酵母 ′

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11/33

████


結論から言うと、直交表実験は大混乱だった!


長期戦を覚悟して効率的に実験しようとしたのに、あっちでしゅわしゅわ、こっちでほわほわ、そっちですぽーん。


同時多発的に酵母と問題が発生して、わたしたちは対応に追われた。


先陣を切ったのはカレファクトリウム組。


初日の夜には3つの瓶すべてで泡が立ち始めていた。


2日目の夜になると、レーズンと水の比率が一番濃い1:1の瓶を開けると「しゅわっ」と音がして、覗くと激しく泡立って心配になるほどだ。


レーズンと水の比率が1:2の瓶は泡が覆ってはいるもののそこまで激しくはなく、さわやかな甘い香りが鼻を抜けた。


比率が1:3の瓶は濃度が薄いせいか、控えめな白い泡がぽつぽつ浮いている程度だった。


そして3日めの夜。


わたしがカレファクトリウムで講義をしていると、「ぽんっ」という音とともに何かが転がってきたのだ。


「あら、何かしら……コルク?」


転がるコルク栓の近くにいたシスターが拾い上げて首をかしげる。


「……なんだか甘い臭いがしませんか?」


別のシスターが鼻をすんと鳴らした。


広がるラムレーズンのような匂いにシスターたちはざわめき、スパイ3人娘は冷や汗をかいたが、コンプレトの鐘に助けられてなんとかその場を切り抜けた。


「比率1:1の瓶の発酵が激しすぎて、ガスで押し出されたコルク栓が飛んだのね。この酵母、もう使えるんじゃないかしら」


「なんだか美味しそうな匂いがしました……」


「さっそく明日焼くパンに使ってみましょうか」



そう約束して翌朝、酵母を回収しに行くと、1:1の瓶は既に酸っぱい臭いを放っていた。


「一晩で酢になってる。暖かい部屋は進行が速い分、扱いが難しいわね……」


女神の前髪を掴み損ねてわたしが肩を落としていると、エッタが酢になったレーズン水を手の甲に垂らしてぺろりと舐めた。


「このお酢、イケますよ。酢漬けにするには足りないけど、ドレッシングに使ったら面白いかも」


初めて見る酸っぱい液体をいきなり口に入れるとは、エッタはなかなか豪胆だ。わたしは残り2つの瓶も手早く開けていく。


「1:2の瓶も、かなりしゅわしゅわしてるわね。もう1日待ったら、また同じことが起きそう。ちょっと早いかもしれないけど、今日使ってもらってもいい? 1:3の瓶は……」


レーズンに白い斑点が現れ、ほわほわした白い綿毛状のものが水面に浮いていた。


「……駄目ね。カビてるわ」


最後の瓶は泣く泣く捨て、次は楽しい試食タイムだ。

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