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神への祈りは0と1とで出来ている-追放悪役令嬢は修道院から世界を書き換える-  作者: さいべり屋
3: ′ 酵母 ′

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10/33

███


夕食後の休憩時間に、カレファクトリウム(暖房室)で寛いでいるわたしにアンヌが声をかけてきた。


「エルネスティーヌ様、こちらの写本の綴りを見ていただけますか」


昼間に書いた写本の出来を見て欲しいらしい。


「いいわよ。見せてごらんなさい」


わたしがアンヌの綴りを見てあげていると、エッタも食材の購入履歴をまとめた帳簿を差し出してきた。


「じゃあ、あたしもいいですか? 食費の帳簿、計算が合わないんです」


「まあ、エッタも? しょうがないわね、ちょっと待ってて。部屋から本とペンを取ってくるわ」


そうやってふたりの勉強を見てあげていると、ほかのシスターたちもおずおずと集まってきた。



この修道院には、婚姻前の貴族女性が行儀見習いに身を寄せていることも多い。聖書講読や写本を通じた読み書きだけでなく、家政を取り仕切るための計算、マナー、裁縫や教養なども幅広く学んでいる。


公爵令嬢として最高峰の教育を受けてきたエルネスティーヌに教えを乞えるのは、またとないチャンスだ。


「あっ、皆様、コンプレト(終課)の鐘ですわ。聖堂へ向かわないと……。また、お時間が合えばお教えしますので、私物の本などをここに置かせていただいてもよろしいかしら」


生徒たちに否やはなく、エルネスティーヌは手早く教本を部屋の隅にまとめて置いた。


聖堂に向かいながら、エッタが耳元に口を寄せてきた。


「やりましたね、エルネスティーヌ様。作戦通りです」


「本当ね。これでわたしはカレファクトリウムに私物を置くことが許された。目立たないように本の後ろにでもジャグも置いておきましょう」


寛ぎの時間にふたりが質問をしてきたのは、もちろん ′仕込み′ だ。こうなることを見越して、ひと芝居打ったのだ。


「でも、皆様とても喜ばれて……。実験が終わっても、お勉強会はやめられないのではありませんか?」


「それね」


悪戯が成功した子供のように軽い足取りで歩いていたアンヌが、わたしを案じて心配そうな顔をした。確かに、皆の反応は予想以上だった。しばらくやめられそうにないだろう。


少々疲れはしたが、わたしは意外なほど爽やかな気分だった。国母になるため受けてきた厳しい教育も、この修道院で使われることなく朽ちていくだけだと思っていた。


しかし、このささやかな勉強会を通して、彼女たちの行く末を照らしてくれるのなら、’ 私’ にとって何よりの手向けになるだろう。


わたしもアンヌと一緒に、弾むようなステップで道を急いだ。

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