【プロローグ:いつか ニ あった はじまり ノ はなし】
【プロローグ:いつか ニ あった はじまり ノ はなし】
少女たちはかつて、世界の外側を作ることを期待されたそうだ。
滅びた世界でも、無くなった世界でも。
きっと彼女たちなら復興できる。
そう信じられて、無数の願いを託されたという。
しかし、今。
世界は、消えたままだった。
それは、考えればすぐに分かることだったのかもしれない。
だって。
誰もいない世界には、読み手が誰も居なかった。
世界の空白を埋めるのは、いつだって想像力だった。
だけど読み手のいない世界の空白は、
無限に広がる想像力すら行き場を失う。
その事実に、少女たちは何を思ったのだろうか。
だがきっと、願いを託した人々は気にもしないだろう。
読み手であることをやめてしまった彼らの手は、
もう物語を捲れない。
いつか出ようと逃げ込んだ揺り籠を、
少女たちは壊れないように管理する。
あると言ってくれた、心をしっかり込めながら。
増えない世界。
埋まらない空白。
広がらない物語。
増えては消える、文字の羅列。
いつものように本棚に並んだ世界を整理し、
ふとした拍子に少女は気付く。
なんだか、今日は図書館を動く影が多い。
不思議なことに、そこにはいる筈のない六つ目の影がぽつんと立っていた。
――「もしかして、ようやく出て来てくれたの?」
返事は、少女の期待していたものではなかったが。
それでも影は、間違いなく少女たちにとっての希望であった。
少女たちは、影のことを「人間」と呼ぶことに決めたそうだ。




