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第十一幕 みんなが主役

 演劇部に入部した宝唯香は、期末テストも終わった夏休み直前のこの日、学園の多目的室で仲間たちとともに公演へ向けた練習に励んでいた。


 子役として活躍していた頃とは違い、台詞を繰り返す声にも、所作のひとつひとつにも、生き生きとした熱が宿っている。

 唯香の瞳には、かつての“義務としての芝居”にはなかった、喜びと輝きが満ちていた。


「唯香ちゃん、練習、頑張ってるね」


 本宮ひのりは、隣で演技を交わしながらも、その変化に自然と感心の声を漏らした。


 唯香は軽く笑みを浮かべる。


「ひのりちゃんも。……私、最初はずっと距離を置いてたのにね」


 その声に反応するように、練習を終えた他のみんなも集まってくる。


「距離? そんなの、今じゃ考えられないよー」


 そう言って笑ったのは、紗里。タオルを首にかけ、にこにこと唯香を見る。


「うん……最初の頃と、全然違う。今の唯香ちゃん……楽しそう」




 みこは静かに微笑んで、唯香にそっと視線を送る。


「前は、“台詞を間違えないように”って感じだったけど、今は……“想い”で話してるの、伝わるよ」


 七海が、台本を小さく閉じながら言った。いつもの冷静な口調でありながらもどこかあたたかさを感じさせる。


「……ありがとう」


 唯香は少し照れくさそうに目を伏せ、それから顔を上げた。


「私……たぶん、みんなのおかげで変われたんだと思うの。子役のときは、評価されることばかり気にしてた。でも今は違う。舞台に立つのが、楽しいのよ。誰かと一緒に、物語を作るって、こんなに嬉しいことだったんだって、ようやく気づいたの」


 その言葉に、ひのりがにこっと笑って手を伸ばす。


「じゃあ、これからも一緒に楽しもうね。――“私たちの舞台”を!」


 唯香はその手をしっかり握った。


「ええ。私らしく、演じてみせる」


 その声は、もう迷いを感じさせない――

舞台を心から愛する一人の役者としての、確かな自信に満ちていた。


練習を終えたあとの多目的室には、ほどよい疲労感と、ささやかな達成感が漂っていた。


「ふぅ……今日の練習、すごく濃かった気がする」


 ひのりが腕を伸ばして背中を反らしながら、大きく息を吐く。


「みんなの動きも台詞も、だいぶ馴染んできたよね」


 七海がホワイトボードに書かれたタイムスケジュールを見ながら、冷静にまとめる。


「うん。照明さんも、音響さんも、もう心配ないって言ってたし」


 みこは台本を丁寧に閉じて、カバンの中にしまいながら言う。


「いよいよって感じ、してきたね!」


 紗里はペットボトルの水を一気に飲み干し、ぱっと笑顔を見せる。


「……あと、少し」


 唯香は呟くように言って、舞台の中央に目を向ける。


「明後日が本番。ここで過ごすのも、あと何回かと思うと、ちょっとさみしい気もするわね」


「でも、これが終わりじゃないし。むしろ、“最初の一歩”だよ」


 ひのりの言葉に、全員が頷く。


 唯香もまた、小さく頷いた。


「……子役だった頃、毎日が本番だった。笑うことも、泣くことも、“求められた通りにする”のが演技だと思ってた。……でも、今は違う。自分の気持ちで笑って、泣いて……それを届けたいって思えるの。こんな感情、初めて」


 言葉に力はなかったけれど、その声は澄んでいて、迷いはなかった。


「だから……この舞台、成功させたい。みんなと作ったこの物語を、ちゃんと届けたいのよ」


 唯香の想いに、ひのりがすっと手を差し出す。


「じゃあ、明日も練習頑張って、最高の“初舞台”にしよっ!」


 唯香はその手を取る。


「ええ。楽しみにしてて。私、最高の“セラ”を見せるから」


 5人の視線が、自然と交差する。


 まるで、次の扉がもう開かれているようだった。


 開演直前の舞台袖。


 緞帳の向こうでは、観客たちのざわめきが少しずつ収まり、静寂が近づいていた。


 ひのりは、仲間たちを見渡して、ほんの少しだけ深呼吸した。


「みんな、ここまでありがとう。……大丈夫。緊張してても、失敗が怖くても、私たちが今ここにいるってことが、もう“物語”なんだから」


 唯香がそっと微笑む。紗里がグッと拳を握る。七海とみこも静かに頷いた。


「さあ――“舞風学園演劇部”、初めての舞台、最高に楽しもうっ!」


 ひのりの声に、みんなが手を重ねた。


 カウントダウンが始まる。


 そして、物語が――幕を開ける。

___

劇中劇「記憶の庭園」


ナレーション(唯香・録音)

──魔法が、まだ人々にとって祈りであり、日常であり、奇跡であった時代。

灰色の空と静寂の時を越えて、ひとつの“運命”が動き出す。



(舞台:石造りの塔の一室)

 壁一面の大きな窓からは、どこまでも曇った空が広がっている。

 部屋の中央には、一人の少女が佇む。


アオイ(七海)

(窓の外を見つめながら、独白)

「……気がついたら、ずっと“白”の中にいた。

空も、街も、人の声も……まるで何もかも、思い出すことを拒んでいるみたい」


(本に手を伸ばし、ゆっくりと開く)

「だけど、夢を見た。色のある夢。

そこには……知らない“誰か”がいた。名前も、声もわからないけど……優しい風だった」


(風の音がかすかに吹き、カーテンが揺れる。ノックの音)


ユキノ(ひのり)

(そっと扉を開け、やわらかく微笑んで)

「……おじゃましてもいい?」


アオイ

(警戒しつつも戸惑いの声で)

「……誰?」


ユキノ

「ユキノ。北の魔法塔から来たの。今日からここで学ぶの、一緒に」


アオイ

「……魔法なんて、使える気がしない。

この場所も、自分のことも、なにもかも……白くて、空っぽで」


ユキノ

(少し前へ出て、優しく)

「じゃあ、わたしと一緒に探そ。

“できるか”より、“どうしたいか”――それが、魔法のはじまりなんだって、先生が言ってた」


(ふっと空気がやわらぐ)


ナレーション(録音)

──出会いは静かに始まった。

白い部屋に差し込んだ、小さな“色”が、

少女の記憶に風を運ぶ。

魔法は、力ではなく、想いの交わり――


(照明がゆっくりと暗転。ユキノとアオイが向かい合い、手を取り合う)


(幕)


──“記憶の森”と風の巫女カゼナ


(※照明が暗転。背景スクリーンに霧がかった森の映像。風の音が静かに流れ始める)

(舞台には、細い木々と落ち葉を模した装飾。地面には淡い緑の照明)


ナレーション(録音)

──ふたりの少女が出会った日から、

止まっていた時の歯車が、ゆっくりと動き出した。

記憶に覆われた森は語りかける。

風が、忘れられた“名”を呼ぶ――



(ユキノとアオイが舞台奥から登場。周囲を見渡しながら進む)


ユキノ(ひのり)

「はぁ、はぁ……気づいたら、こんな森の中に……」


アオイ(七海)

「ここ……どこかで見たことがある気がする。夢で、だったかな……」


(風が強まり、葉が舞う。舞台袖からマントをなびかせながらカゼナ登場)


カゼナ(紗里)

(軽く笑いながら)

「迷子、二人。森の風が、そう囁いてたよ」


ユキノ

「……あなたは?」


カゼナ

「わたし? カゼナ。風と話せる、風の巫女さ。

あなたたち、記憶の森に呼ばれたんだね。魔法の始まりを知るために」


アオイ

「“呼ばれた”? 誰に……?」


カゼナ

「風は、過去の想いを運ぶもの。きっと、この森が“あなたたち自身”を呼んだんだよ。

行きなさい、奥へ。そこに答えがある」


(ユキノが一歩踏み出し、カゼナを見つめる)


ユキノ

「……ありがとう。私たち、思い出したい。自分のことも、この世界のことも」


(舞台に優しい風音。スクリーンには霧が晴れていく演出)


ナレーション(録音)

──風の声が、ふたりの背を押す。

迷いも戸惑いも、そっと包み込んで――

森の奥で、ふたりは“記憶”と出会う。


(照明がゆっくりとフェード。ユキノ・アオイ・カゼナの三人が森の奥へ歩み出す)


(幕)


(舞台転換。背景スクリーンには切り立った崖と強風に揺れる橋のCG映像。風音が強まる。

照明は青と白を基調とした冷たい色合い)


(アオイ・ユキノ・カゼナの3人が登場)



ユキノ(ひのり)

「ここが……“塔”へ続く最後の場所?」


アオイ(七海)

「でも……この風、強すぎる……! 渡れない……!」


(カゼナが一歩前に出て、空を見上げる)


カゼナ(紗里)

「風よ……あなたたちを導くと決めたのなら、今こそ道を――」


(カゼナが杖を掲げ、詠唱)


カゼナ

「静かなる風よ、道を照らして――“風鎮の術”!」


(風音が静まり、舞台上で揺れていた幕や衣装が止まる)


ユキノ

「……すごい。本当に、風が止んだ……」


アオイ

「ありがとう、カゼナ。これで……!」


(ユキノとアオイが橋に足を踏み出そうとした、その時)


(舞台奥、白い光が差し込む演出。風が逆巻き、空間が揺れるような音)


セラ(唯香・舞台袖から声のみ)

「……呼んでいる。あなたたちの声が、届いたのね」


(スクリーンと照明が切り替わり、舞台中央の祠セットが淡く輝く。泉が中心に浮かび上がる)


(その中から、ひとりの少女が現れる)



(メル登場。純白のワンピースに薄紅のリボン。静かに立ち尽くし、周囲を見渡す)


少女(メル/みこ)

「……ここは……どこ? わたし……なにを……」


ユキノ

(驚いたように駆け寄る)

「あなた、どうしてこんなところに……?」


アオイ

「名前は……? 思い出せる?」


メル

(小さく首を振る)

「なにも……わからないの。名前だけ、“メル”って、それだけ……」


カゼナ

(ゆっくり近づきながら)

「……この風が、あなたを“鍵”としてここへ導いたのかもしれない。

あなたは、きっとこの物語の……記憶の結晶」



(セラが再登場。穏やかな足取りで歩いてくる。光に包まれた存在として)


セラ(唯香)

「そう……彼女こそ、“メル”。

忘れられた想いが集まり、形をなした少女。

でもその中には、優しさも、悲しみも、全部残ってる――“真実”が」


メル

(戸惑いながらも、小さく呟く)

「……なんだか、懐かしい声。あなたたちのこと、知らないはずなのに……涙が出そう」


アオイ

「きっとそれは、“心”が覚えてるからだよ。大丈夫。ひとりじゃない。これから一緒に……思い出していこう」


(5人が舞台中央に集まる)


ナレーション(録音)

──願いが繋がるとき、忘れていた記憶は、再び命を宿す。

静寂の雪が舞い、想いは春を呼ぶ。

“魔法”とは、決して特別な力なんかじゃない。

誰かを想う、その心こそが――


(照明が落ち、次のクライマックスシーンへ)


(幕)


(舞台は再び、花々が咲き乱れる“想いの庭”へ。

背景は満開の光の花、柔らかな音楽が流れる。舞台中央には泉と祠。

メルは舞台中央に立ち、手を胸に当てて目を閉じている)



アオイ(七海)

「この光……セラさんが託してくれた記憶……メルの中に、ちゃんとあるはず……!」


(アオイがそっとメルの手に“光のかけら”を重ねる)


ユキノ(ひのり)

「……大丈夫。忘れていたって、なくなったわけじゃない。想いは、ちゃんとここにあるから」


(風がふわりと吹き、花びらが舞う)


(メルが目を開け、ふと涙をこぼす)


メル(みこ)

「……あの日のこと……思い出した。

みんなで、約束したの……“また、笑って会おう”って」


(手を伸ばし、4人のほうへ一歩、また一歩と歩き出す)


カゼナ(紗里)

「ようやく……会えたんだね、メル」


アオイ

「記憶なんて関係ない。あなたはずっと、私たちの大切な……仲間だったんだから」


(メルが微笑む。そして4人の元へ歩み寄り、中央でそっと輪になるように手を取り合う)



(そのとき、舞台奥から静かに歩み寄るセラ)


セラ(唯香)

「よかった……ようやく、あなたたちが“ひとつ”になれた」


(その姿は、もう“記憶の残り香”ではなく、確かに“この世界に生きる存在”として立っている)


メル

(涙をぬぐいながら)

「セラ……あなたがずっと、見守っていてくれたんだね……ありがとう」


セラ(微笑み)

「私にできたのは、願いをつなぐことだけ。でも……あなたたちが集まったことで、その願いは“現実”になったの」


(セラが静かに一歩下がり、光に包まれる)


セラ

「だから、これで私は行くわ。

でも忘れないで。“想い”は消えない。

この世界に生きる限り、あなたたちの心が……魔法になる」


(光の中でゆっくりとセラが消えていく。最後の瞬間、セラは優しく微笑んだまま――)



ユキノ(ひのり)

「さよなら、セラ……ありがとう」


メル(みこ)

(空を見上げ、そっと微笑む)

「私……もう、ひとりじゃないよね」


アオイ(七海)

「うん。これからは、ずっと一緒だよ」


(5人の手が重なる。舞台上に柔らかな音楽が満ち、スクリーンに満開の光の花)



5人(声を重ねて)

「――願いは、繋がる」


(照明が落ち、最後のナレーション)



ナレーション(唯香・録音)

「静寂の雪はすべてを包み、そして――春を呼ぶ。

忘れられた記憶は、愛によって咲き誇り、新たな季節へ導く。

これは、五人の少女たちが紡いだ、小さな奇跡の物語――」


(幕)


 舞台袖。公演が終わり、カーテンコールの余韻が残る中、拍手がまだ耳に残っていた。


「……終わった」


 誰からともなく、そんな言葉が漏れる。


 ひのりたちは互いの顔を見合わせ、自然と笑い合った。達成感と安心、そして少しだけ名残惜しさを含んだ、静かな笑み。



 ロビーに出ると、観客たちが温かな拍手と声援で迎えてくれた。


「よく頑張ったねぇ、みんな。ちゃんと見てたよ」


 懐かしい声がして、振り返ると、そこにはあの駄菓子屋のおばあちゃんの姿。


「おばあちゃん!」

 紗里が駆け寄る。


「この前の焼きそば、本当にありがとうございました」

 七海が頭を下げると、おばあちゃんは嬉しそうに笑った。


「ふふ。今日も電車乗って来たんだよ。泣かせるんじゃないよ、まったく」


 目元をぬぐいながらそう言ったおばあちゃんに、ひのりが笑って応える。


「じゃあ、今日は私たちが元気を届けたってことだね!」


 少し離れたところから、私服姿の神主が静かに歩み寄ってくる。


「見事な舞台じゃった。……感情が、ちゃんと伝わってきた」


「ありがとうございます」

七海が深く頭を下げる。


「うちの神社で夏祭りがある。もしよければ、あんたたちの舞台、そこで披露してみんか?」


「えっ、本当に……?」


 唯香が思わず声を上げる。


「祭りは“縁”をつなぐものじゃ。きっと、喜ばれる」


 七海が小さく頷いた。「……それ、いいですね」


 ひのりは目を輝かせて振り返る。


「新しい舞台ってことだよね! やろうよ、みんな!」



 人の流れが少し落ち着いた頃、ひのりがふと立ち止まる。


 ――両親が、こちらを見ていた。


「お父さん、お母さん!」


 母親が微笑み、ひのりをそっと抱きしめた。


「……立派になったね。ほんとに感動したよ」


「人前で芝居するなんて、ちょっと信じられないな」


 父親も腕を組んで、どこか照れくさそうだった。


 それを見ていた唯香たちも近づき、挨拶をする。


「今日はお越しいただき、ありがとうございました」


 唯香の礼儀正しい声に、母親は少し驚いたように笑う。


「唯香ちゃん……あんなに生き生きしてて、驚いたわ。すごく、素敵だった」


 唯香は一瞬だけ目を伏せ、すぐに顔を上げた。


「ありがとうございます。……今は、本当に芝居が楽しいです」


 紗里やみこも頭を下げ、ひのりの母は優しく笑う。


「みんな、ありがとう。ひのりがこんなふうに夢中になれる場所をもらえて、私……嬉しいの」


 七海も控えめに言葉を添えた。


「今回は、ひのりに引っ張られてばかりでした。でも……そういう仲間がいて、助かってます」


 ひのりが照れ笑いを浮かべる。


「えへへ……じゃあ、私も役に立ってるってことかな!」



 そのとき。


「唯香」


 唯香が振り返ると、そこには母・真知子と、父・秋哉の姿があった。


「……来てたのね」


 母は静かに頷いた。


「ええ、最初から最後まで」


 短い言葉だった。でも、その声には確かな熱があった。


「あなたの演技、ずっと見てた……。あれが、あなた自身の芝居なのね。……とても、感動したわ」


 唯香の目に、ふっと涙が浮かぶ。


「……ごめんなさい。今まで、あなたの自由を縛ってきた。間違えないように、恥をかかないように……そんなことばかり言って」


 母はそっと、娘の肩に手を添えた。


「でも、今日は違った。……あなたの声が、まっすぐ届いたの。私、あんなあなたを、初めて見た」


 父・秋哉も一歩前へ出る。


「演出も照明も、良かった。だが何より、生の芝居だった。……みんなで創った“本物”だったよ」


 そしてそれぞれに、短く、でも確かな言葉で賛辞を送った。


「七海さんの脚本、沈黙に意味があった。紗里さんの芝居は、熱があった。みこさんの表情には“余白”があった。ひのりさん……あなたの存在が、舞台を柔らかくした」


 ひのりはぽかんとしながら、「なんか……すっごい褒められた気がする」と笑った。


 そして秋哉は娘へ。


「唯香。今日の君は……誰の“指導”でもない、自分の意志で演じていた。そう見えたよ」


母も頷き、娘の手を握った。


「唯香。あなたの“好き”を大切にして。私は、今日のあなたを誇りに思う」


 その言葉に、唯香はもう堪えきれず、母の胸に飛び込んだ。


「……ありがとう、お父さん、お母さん」


___


 会館の外。夜風が涼しく吹く。


5人は、並んで空を見上げていた。


「……終わったね」


七海が呟く。


「でも、なんか始まった気もする」

ひのりが笑って言った。


「私たちの、物語が」


「ふふ。今日のステージで、わたしたちちょっと伝説になったかも?」


 紗里の言葉にみこが笑う。「まだ“始まり”だよ」


 唯香はそっと髪を押さえて、優しく言った。


「……ありがとう、みんな。私、ようやく“ここ”が好きって言える」


「それ、主人公っぽすぎじゃない!」

 ひのりが驚いたように言って、みんなで笑った。


「でもね」

 ひのりは夜空を見上げて、力強く言った。


「今日で第一章、終わり!

これからが、“伝説の第二章”の始まりだよ!」


「……うん!」


「もちろん!」


「任せて!」


「次も、みんなで最高の物語を!」


 笑顔とともに、5人は歩き出した。


 夜空の下、彼女たちの未来は、確かに輝いていた。


続く。





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