表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/41

第8話「一切何も変わっていないんだがッ!!」


 仮想ウインドウに表示されたディスプレイに指を触れて、クエストを受注する。俺たちはさっそく、エラルド街郊外の草原へと繰り出した。


 だが、想像とは違い、魔物モンスターが全くいない。街の住人が襲われているんじゃないのか!? さっきから、どうなっているんだこのRPGは!! 悪態をつきたくなってしまうくらい何も起きない。


「さっきまでにスライムがうじゃうじゃ沸いていた気がするのに……、私たちが歩き回ったら、嘘みたいにモンスターがいないね……」


「く、なぜ出てこない!!」


「もしかしたら、あのステータスが関係あるのかもっ!?」


「そうかッ! 【運の良さ】か!! ……確かに、【運の良さ】が『魔物とのエンカウント率』に関わるって白うさぎの奴が言っていた気がするな。つまり、【運の良さ】ステが高いほど、雑魚と遭遇しないってことか……。え、無理ゲーじゃね? どうやってレベル上げるんだよッ!!」


 俺は救いを求めて、エトナの顔を覗き込んだ。


「今まで魔物(モンスター)に会わなかったのは、クモキ君のせいだったんだねっ。……一人で狩りに行こーっと」

「うぉぉぉいッッ!! 俺を見捨てるなッ!!」


「冗談、冗談だよ。逆に言えば、雑魚とは遭遇しないってことだし、経験値が多く入る強敵とは遭遇出来るかもしれないよ! そうしたら、すぐレベルアップできるはずっ!」


「それだッ! お、言ったそばから!」


 そんな俺らに近づく不穏な足音。低い重低の唸り声をあげながら。来た、魔物だ!!


「グルルルルル」


「っ!? あれは牙狼(ファング)!?」


 銀色の剛毛を全身に(まと)う狼が計五体。俺らに襲いかかるタイミングを計っていた。とうとう来たか。俺たちの前に現れるということは、レベルが高い魔物(モンスター)に違いない。くっ、これは苦戦するぞ。俺は生唾をごくりと飲み込み、震える手を無理に落ち着かせた。


 大骨の弓を構える。いつでも射抜けるように。


「エトナ、準備は万端(ばんたん)か……?」

「うんっ! クモキくんは私が守るよ!」


 ふっ、頼りになる仲間だ。コイツとなら、どこまでも行ける気がするぜ!


 エトナは前衛職の騎士ナイト。大きな盾を掲げながら、俺を庇うように一歩前進する。俺が弓を構えると、五体の狼が一斉に襲いかかった。すると、どうなる? 答えは簡単、もちろんぶつかる。


「ぎゃううううん」


 可愛い悲鳴が聞こえてくる。そこに、俺が放った矢がパスっという乾いた音を立てて、深い毛で覆われたその先、血肉へと辿り着く。


「きゃいいいいいいいん!!」


 消滅。なんか、倒したみたいだ。だが、経験値は一切入らない。え、体をぶつけたダメージの方が大きいってことか? あー、たしかに痛いもんね。うんうん、分からなくもないよ。うん……。


 ……ま、まだ俺たちの冒険は始まったばかりさ。これからゆっくりと魔物を倒して、レベルを上げていけばいい。


 《半魚人サハギンが現れた。濡れた足ですってんころりん。転んでダメージ。魔物(モンスター)を倒した》


 《人面樹じんめんじゅが現れた。偶然背後にいた冒険者が樹と間違えて蹴飛ばしダメージ。魔物(モンスター)を倒した》


 《巨大蛞蝓ジャイアントナメクジが現れた。エトナが俺に『悪霊が憑いているから敵を倒せないんじゃないか』と言い出して、塩を巻く。運悪く、巻き込まれて莫大なダメージ。魔物(モンスター)を倒した》


 ……。


 …………。


 ふっ、大量の魔物(モンスター)を討伐したな。俺のステータスを紹介しよう。


 LV7

 体力35

 力40(固有才能により現在43)

 身の守り2

 知力12

 素早さ13

 運の良さ−999(固有才能により現在999カンスト)

 才能スキル

 識別LV1、夜目LV1、アイテム付与LV1


 一切何も変わっていないんだがッ!! これだけ魔物モンスターを討伐したにも関わらず、経験値が入らずに、1レベルさえ変わっていないんだが!! 【運の良さ】はカンストのはずなのに、なんて不運な。


 俺の苦難の冒険譚はまだまだ始まったばかりだった……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説家になろう 勝手にランキング

X(旧Twitter)フォローで更新時をお知らせします!!



羽田共アカウント

気に入っていただけたようでしたら下記もおススメです!!



NEW!![長編][VR]やっぱり俺は運がなぁぁぁぁい↓

運値がうんちの俺がスキルを使うと、運値カンストになって勝手に敵が倒れていくのだが





[長編][ハイファン]死に戻りを駆使して17327回追放する勇者を救え!!↓

17327回追放されても、僕は諦めない





[長編][ハイファン]魔物が想像と全く違うんだが……。残酷な異世界で生き残れ!!↓

叛乱勇者 ~異世界の魔物が想像と全く違う件について〜






[短編][恋愛]死んでしまったヒロインにどうしても逢いたい「あなた」の物語↓

俺が大好きな絶対に逢えない人に『いま、逢いに行きます』





[短編][SF]勇者から追放された俺は就職面接で復讐する!!↓

VRゲームで勇者パーティから追放された俺は現実世界で復讐する



― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ