第5話「初のアクティブスキルだ!」
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「えぇぇぇぇぇぇ、【運の良さ】がカンスト!?」
「あぁ、間違いない」
呪いの装備の効果によって、【運の良さ】ステが−999と目も当てられない状態だった。だが、俺の固有才能の【短を捨てて長を取る】を使えば早変わり。なんということでしょう。匠の力によって、桁溢れを起こし、マイナスがたちまちプラスへ。カンスト状態になる訳だ。
999という数字が二進数で言うところのオール1ではない事を考えると開発者の遊び心だろうか。はたまた、バグかもしれない。
ふっ、どちらにしても、これでこの仮想世界では、不運とはおさらばだ。しかも。
《おめでとうございます! レベルが上がりました! LV3→7》
《振分ポイント20獲得。ステータスに分配して下さい》
レベルも上がって順風満帆。
あとは、20ポイントをどう振り分けるかだが、やはり力と素早さかな。ふっ、攻撃こそ最大の防御なのだよ! というわけで、キリよくするために力に16、残りを素早さに注ぎ込むことにした。
《新しい才能を獲得しました》
夜目LV1……パッシブスキル。夜や暗い場所での射程減少幅を小さくする。レベルが上がるほど効力は増す。
アイテム付与LV1……アクティブスキル。アイテム効果を矢に付与して放つことが可能。LVが上がるほど付与できるアイテムのレアリティ範囲が増える。LV1はDまでのアイテムを付与可能。
おぉ、初のアクティブスキルだ! アイテムが増えれば役に立つかもな。地味に夜目も良さそうなスキルだ。ステータスを再確認。
プレイヤーネーム:クモキ
種族:人族
職業:弓兵
固有才能:短を捨てて長を取る
称号:なし
LV3→7
体力35
力24→40(固有才能により現在43)
身の守り2
知力12
素早さ9→13
運の良さ−999(固有才能により現在999カンスト)
才能
識別LV1、夜目LV1、アイテム付与LV1
また、大量の骸骨と一部飛行型の魔物を倒したことで、仮想ウインドウの端に取得したアイテムがずらっと並んだ。
《クモキはアイテムを取得した》
・ボーンアロー×1 レアリティ? 骨で出来た弓矢。力+3。特殊効果なし。
・身躱しマント×1 レアリティ? 特殊効果:不明。【鑑定】スキルにより効果が判明。
・運命のダイス×7 レアリティ? 特殊効果:サイコロによるランダムダメージ増加。デメリットあり。
・骨粉×28 レアリティ? 調合用アイテム
ふむ。やはりレアリティや特殊効果を知るには【鑑定】スキルが必要なようだ。【身躱しマント】はステータスも上がらないみたいだし、特殊効果次第ではあるが、あまり使えない防具かもな。
俺が仮想ウインドウと睨めっこをしている最中、エトナも同様に多数のアイテムを取得したようでなにかを考え込んでいた。パーティー内の誰かが敵を倒すと、経験値やアイテムを共有できるシステムのようだ。
「よし、決めたよっ!! 私は騎士だし、大盾を装備するっ!!」
エトナはシステムコマンドである装備を伝える。大骨の盾を身につけて、質素な木の盾からドクロが装飾された盾に早変わり。
「おぉ、凄いねっ! 見た目も変わるんだねっ!!」
確かに見た目に変化が起こるだけでも、駆け出しから冒険者っぽくなる気がするものだ。
俺も早速試してみる。
「装備:ボーンアロー、身躱しマント」
肩に掲げた木の弓矢は白骨の弓矢へと切り替わり、濃い緑色の外套が現界した。うん、気分上がるな!! これでこそ、冒険者って感じだ。
さて、これからどうするか……。
「白うさぎが、“エラルド”って街が南下するとあるって言っていたけど、そこに行ってみないっ? もしかしたら、甘いものがあるかもしれないよ」
心なしか、エトナの表情が肉食獣のような獲物を狙うときのそれに変わっていた。ヨダレもダバダバ垂れ流している。はあ、エトナは甘いものに目がないからな。一応、正気か確認しよう。
「え、エトナさーん?」
「はっ!? 異次元にトリップしてたよっ」
だ、大丈夫だろうか。不安にかられながらも、俺達は南へと進路を変えて、並んで歩く。目指すはエラルド。クエストを受注するためにも、俺たちは同盟へと足を運ぶことにした。