第33話 「ウンキングがご乱心だぁああ!!」
驚いたようにドラゴンゾンビは目を見開く。
俺は収納からある物を取り出す。それはお酒だ。これも、現実世界では年齢制限で嗜めないから、仮想世界で楽しもうと道具屋で買っておいたものだ。
「ク、クモキくん、さすがにふざけている場合じゃ……」
「いや、俺はふざけてなどいない、大真面目だ」
俺はコルクを開けて、入っていたアルコールを一気に胃に流し込む。
「【酒乱化】発動!!」
大酒呑み選手権で勝ち取ったスキル【酒乱化】。このスキルはアルコールを摂取することで、攻撃速度が上昇するスキルだ。単純な攻撃速度だけでなく、低レベルのスキルであれば、クールタイムを短縮して、ほぼ無制限にスキル攻撃を行うことが可能だ。ただし、一定時間後に効果が切れて、混乱状態になってしまう。ハイリスク&ハイリターンの運も絡むスキルだ。
だが、俺の運の良さはカンスト中、間違いなく使いこなせる自信があった。
「さあ、俺が降らす五月雨を全て躱せるか?」
俺は三本の矢を番えて、弓を引いた。
「【三本矢】!!」
三本の矢が放たれたことを確認して、ドラゴンゾンビも回避する。だが、それぞれの矢は、異なる軌道を描いて、奴の肉に突き刺さる。命中することが予め決まっているかのように。
《クリティカルダメージ。1,000ダメージを与えた》
《クリティカルダメージ。1,000ダメージを与えた》
《クリティカルダメージ。1,000ダメージを与えた》
もちろん、アイテム付与のスキルで【解毒薬】の効果は付与済みだ。これによって、合計3,000ダメージを叩き出す。だが、まだ終わらない。本来アクティブスキルにはクールダウンの時間が設けられているため、スキルを乱発できない。しかし、【酒乱化】のスキルを使うことにより、攻撃速度が上昇して、無制限にアクティブスキルが発動できる。
「【三本矢】!!」
《クリティカルダメージ。1,000ダメージを与えた》
《クリティカルダメージ。1,000ダメージを与えた》
《クリティカルダメージ。1,000ダメージを与えた》
さて、さらにスピードをあげるか。
ここからは根比べだ。俺が奴を倒し切るのが先か、【酒乱化】の効果が切れて、混乱するのが先か。
ドラゴンゾンビからしたら悪夢だろう。必中の矢が大量降りかかる。一つの巨大な生き物のように、空を追い尽くすほどの数多の矢が、一本も外れることなく、確実に奴の肉へ突き刺さった。
奴は悲鳴をあげる。慈悲を乞うように。
「グォォォォオオオオオオオオオ」
だが、情けはない。お前の敗因はただ一つ。俺を敵に回したことだ。ギャンブルの相手を間違えたな。
「間に合えぇぇぇええええ!!」
俺の【酒乱化】の効果が消えると同時にドラゴンゾンビは地に伏せる。
土埃が舞い、辺りを静寂が包んだ。そして、奴はこの世界に存在していなかったかのように消えていく。
《Congratulations!! 生ける死竜を討伐した!!》
「や、やりやがったぁあああああ」
「まさか、本当に倒しちまうなんて!!」
静寂を切り裂くように、冒険者たちが歓声を上げる。
「「ウンキング、ウンキング!!」」
鳴り止まない、運王のコール。
ふっ、当然だろう。俺にかかれば朝飯前だ。振り返って歓声に応えるか。
俺は振り返って初めて、違和感に気づいた。
「ま、まだ、ドラゴンゾンビが生きてやがる」
いたるところに小柄なドラゴンゾンビがいるのだ。あれー? こいつはさっきたろしただろー。(みなさんのPCやスマホは正常です)しかも、ロレツがまわらなくなってきちゃぞー。
まずは、ドラゴンゾンビをちゃおさないと。
「くらえッ!!」
俺は【解毒薬】が付与された矢を、小柄なドラゴンゾンビに向かって射る。
「いてぇぇぇぇぇ、オレさまのプリティなお尻があああああ!!」
「大変だ、ケツが割れてやがる」
「お尻が割れているのは元からだよっ!! クモキくん、落ち着いてっ」
「ウンキングがご乱心だぁああ!!」
「パパが敵に寝返った!?」
う、うるせえ。大声が頭にキンキンと響きやがる。こいつらを全員黙らせる必要があるな。俺は黙々と矢を射る。
「わ、わっちに向かって矢が飛んでくるのです。あ、痛っ!! 頭を岩にぶつけたのです」
「ユイちゃん、大丈夫? ユイちゃーん、死なないでっ!?」
ちなみに俺のおかげでみんなの毒状態が回復したらしい。いやー、よかった、よかった。




