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第32話 「このままじゃ勝ってしまうから、少しハンデをやろうか?」


「グ、グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


 奴は危険の匂いを察知したのか、俺の肉を抉ろうと鋭利な爪を振り下ろす。振り下ろした風圧だけで、人間など吹き飛ぶほどの攻撃を、寸分の隙が無いように前足を振り回す。さながら、嵐のように、突風が吹き乱れる。


 だが、俺には無意味な攻撃だ。【身躱しマント】により全ての物理攻撃をシャットアウトする。俺にダメージを与えることが出来るのは、魔術攻撃やスキル攻撃のみだ。よって、奴が採る選択肢は一つしかない。


 奴もそれに気づいたのか、【毒のブレス】を口から吐き出そうとしている。


 そうなるように仕組まれたとも知らずに。


「ユイユイ、風属性の魔術の詠唱だッ!!」


「え、何でなのです?」


「いいから早くッ!!」


「わ、わかったのです!!」


 ユイユイは目を瞑り、詠唱を開始する。


「風よ。我が呼びかけに応じ、魔を断ち、敵を拒み、ねじれ、狂え。【竜巻トルネード】」


 砂埃が同じ規則性を伴って、渦を巻いたと思ったら、突如として竜巻が現れた。と同時に、ドラゴンゾンビは【毒のブレス】を吐き出す。


 広範囲に及ぶ有害の吐息が、瞬く間に冒険者たちを青い炎へと姿を変えた。大地一面に青い花のような炎が咲き誇る。


 《体力が0になりました。》

 《体力が0になりました。》

 《体力が0になりました。》


 たとえ、【毒のブレス】によるダメージで体力が0にならなかった冒険者たちも、俺らのように【解毒薬】を準備していなかった者は青い炎へと変わる。


 今回の攻撃だけで、ざっと、二十は超える規模で冒険者たちが犠牲になった。


 俺らも同じ運命を辿るはずだった。だが、ユイユイの風魔術が毒を纏った吐息へと吸い寄せられ、霧払いのように霧散した。作戦通りだッ!!


 物理攻撃でダメージを喰らわないと分かれば、間違いなくスキルを駆使した打ち手へと切り替える。それがブレスの攻撃であれば、風魔術で打ち消してやれば良い。


「ググ……」


 奴は、攻撃が通じないと理解して、僅かばかり動きが止まる。


 次はこちらの攻撃の番だ。


 俺は弓に【解毒薬】を付与した矢を番える。


「お前は躱せるか? 俺のように軽やかに」


 俺は矢を抑えていた手を離した。ドラゴンゾンビはこの攻撃を喰らったマズいと思ったのだろう、前足と後足を器用に使って、横へと跳んだ。肉体は腐乱が進んでおり、身体は幾分か軽くなっているのだろう。巨体とは思えない、身軽さで俺の矢を躱す。


 翼に沿うようについていた筋肉もすでに腐っており、空へと飛ぶことはできない。よって、避けるには、跳躍しかない。


 まあ、奴がどのような行動を選択したとしても結果は変わらない。必中となるように、運命は収束するのだ。


 矢は近くにあった岩へと当たり、跳ね返り、勢いを殺して、尻尾へと刺さった。


「グ、グォォォォォオオオオオオ」


 《クリティカルダメージ。1,000ダメージを与えた。ドラゴンゾンビは毒状態に陥った》


「ふっ、毒状態になるのはたったの2%だ。だが、それでも、俺にかかれば、確率は100%に収束する」


 俺はスキル【識別】で奴の体力を確認する。少しずつだが、着実に体力が減っている。一度毒状態になったのであれば、あとは奴の攻撃を避け続ければ、いずれ倒すことができるだろう。


 それだけじゃない。嬉しい誤算もあった。やはり、現実世界とは違い、この世界での俺は運が良い。まさか、【解毒薬】の効果を付与した矢でダメージを与えられるなんて。このダメージ量なら次の作戦もいけるな。


「おい、このままじゃ勝ってしまうから、少しハンデをやろうか?」


「グギ!?」


 驚いたようにドラゴンゾンビは目を見開く。



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