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第30話 「グオオオオオオオオオオオオ(てめえ、オレを忘れたのか、殺すぞ)」


 *


 エラルド街門を潜り抜けると、すでに多くの冒険者が生ける死竜(ドラゴンゾンビ)と戦っていた。


 冒険者がキルされた証左でもある青い炎が辺りに咲き乱れ、苦戦していることがわかる。


 やべえ。超行きたくない。【識別】のスキルでレベルを確認したが、LV90という絶望の数値が刻まれていた。俺のレベルの6倍はある計算だ。勝てるわけなくね?


 うん。これは逃げる準備をしておいた方がよさそうだ。後ずさりをして、生ける死竜(ドラゴンゾンビ)と距離を取ろうとする。


 だが、奴の瞳が俺を捉えた。


「グヤアアアアアアアア」


 生ける死竜(ドラゴンゾンビ)の咆哮が鼓膜を震わす。俺の顔を見てから、なんか急にやる気に満ちたような?


 もしかして、このドラゴン女の子なのか!? ははーん、そうか、ドラゴンが女の子に変身するパターンもありそうだしな。とうとう、人外であるドラゴンまで魅了してしまうほどの美貌を手に入れてしまったか。自分という存在が末恐ろしいぜッ!!


 俺は歩みを進め、冒険者の誰よりも前に出る。


「あ、あれはウンキング!?」

「俺らのピンチに駆けつけてくれたんだ!!」


「さあ、おいで、ドラゴンさん!! 俺のハーレムランドの一翼を担ってくれたまえ!!」


 ん、まてよ? ドラゴンじゃなくて、ドラゴンゾンビということは、人間の姿になったとしても、ゾンビになるのでは!? さすがにゾンビっ娘は愛せないかもしれない。いや、諦めるな、まだ、希望はある!! きっと、とてつもなく美人のゾンビっ娘かもしれん!!


「ギャオオオオオオオオオン」


 まるで威嚇をするかのように、ドラゴンゾンビは再度咆哮した。あれ? このドラゴン、どこかであった気がする……。


 たしか、ブローラ山であったドラゴンがこんな見た目だったような……? ま、間違いない!! アイツだ!! 俺に復讐するために、エラルドまで降りてきたのかもしれない。ということは、俺が奴にとどめを刺せなかったから、この惨状になったというわけで……。


 青い炎となった死亡者の数をかぞえてみる。うん、間違いなく、軽く30人は死んでいるな。つまり、30人分の所持金を半額にする被害を出していることになるわけで……。あれ? マズくね?? これ、損害賠償もんじゃ……。


 いつのまにか、隣にいたユイユイとエトナが考え込んでいる。


「ん? あのドラゴン、どこかで見た気がするのです」


「え、本当だねっ、たしか、どこかで……」


「い、いやー。気のせいだろう。な、初めましてだよな!!」


 俺はドラゴンゾンビに話しかけてみる。


「グオオオオオオオオオオオオ(てめえ、オレを忘れたのか、殺すぞ)」


 ひぃ、怒りの眼で俺を睨みつけている。


「でも、なんか、他の冒険者には目もくれず、パパだけを見ている気が?」


「ははは、きっと、女の子なんだよ。俺に惚れたのさ」


「グオオオオオオオオオオオオ(オレは男だ、殺すぞ)」


 うん、間違いなくさっきよりも怒っているな。死人に口なし。証拠を隠滅しよう! そうしよう!!


 俺は唐突に弦を引き、矢を放った。


「いまだ、不意打ちッ!!」


「パパ、それは流石に卑怯なのです……」


「ユイユイ、何を言ってやがる!? 勝てば官軍なんだよォ!!」


 パスッ、と乾いた音が鳴り、ドラゴンゾンビの腐敗した肉体に矢が刺さる。


 【識別】のスキルで体力を確認するが、15万に及ぶ体力は1ダメージをも減っていなかった。0ダメージだ。


「はあ!?」


 ドラゴンゾンビは痛くも痒くもないと言わんばかりに、矢を抜くこともなく、鋭い爪を振るう。あぶねッ!! 俺も【身躱しマント】がなかったら危なかった……。


 俺たちの登場で、ウンキングとはやし立てていた冒険者の一人が絶望の顔色を浮かべる。


「奴には、物理ダメージが効かないんだッ!! さっきから、魔術攻撃でしかダメージを与えられていない」


「おい、マジかよ!!」


 そういう大事なことは早く言ってくれ。不意打ちとか言って、したり顔で攻撃してしまったじゃないか。


魔術師ウィザードで一番火力ある奴に攻撃面は任せるしかないか」


「いや、魔術師ウィザードは全滅した。奴は、自分の弱点である、魔術攻撃を仕掛ける魔術師ウィザード援護兵ヒーラーに狙いを定めて攻撃をしていってな、あとは、任せたぜ、称号付き(タイトルホルダー)!!」


 冒険者は親指を立てて、俺にグッドサインを示す。F○CK!! 俺にどうしろっていうんだ!! そもそも、所持している【運命のダイス】も残り1個、そもそも、0ダメージの攻撃を36倍しても、0ダメージなんだぞ!!


 ドラゴンゾンビもどこか得意げだ。一切攻撃をせずに、佇んでいる。まるで、そんな攻撃痛くも痒くもないと言わんばかりだ。こいつッ!! いままでの恨みつらみを全て俺で晴らそうとしてやがる。奴が本気になれば、殺すことなんて簡単だろうに、あえて他の冒険者を狙ってやがる。俺はメインディッシュってことか。


 だが、その油断が命取りだぜ! 俺が新たに覚えたアクティブスキルを食らえ。


「【三本矢トリプルアロー】!!」


 矢を三本纏めて、ドラゴンゾンビへと放つ。だが、やはり、かわらず、計上されるのは0ダメージ。


 だったら、次の手だッ!!


「ユイユイ、属性付与だ!!」


「分かったのです!! 属性エレメントセイント!!」


 矢に聖属性を付与する。元が漆黒の飛龍(ダークドラグーン)だし、きっと、聖属性が弱点だろう。【識別】のスキルレベルが高ければ、弱点属性も確認出来たのだが……。いまは、ないものねだりをしてもしょうがない。


「【三本矢トリプルアロー】!!」


 《クリティカルダメージ。10ダメージを与えた》

 《クリティカルダメージ。10ダメージを与えた》

 《クリティカルダメージ。10ダメージを与えた》


 おい、体力15万だぞ、たった10ダメージじゃ、どうしようもない。【運命のダイス】で賭け金(ダメージ)を吊り上げるか? いや、それでも残り1個じゃ、高々360ダメージだ……。


 ドラゴンゾンビはフンと鼻息を吹き出し、攻撃態勢と移った。奴の口から【毒のブレス】が吐き出される。広範囲に及ぶ状態異常攻撃だ。


「クモキくん、危ないっ!!」


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